第13話 東の大陸

大聖堂から東の大陸に転移してきたレイとマリーは港町を歩いていた。レイ達がいる西の大陸はダンジョンが多くある大陸だ。


ファイブファンタジーでは、北の大陸から物語が始まる。北の大陸では、聖獣フェニクと聖女ローズマリーと出会う。両者を仲間に加えた後は、東の大陸で勇者ボルテックスと聖獣キュビが、南の大陸で賢者マジカルシュートと聖獣リルが、西の大陸で剣聖ガウラスと聖獣シルドが仲間になる。


今、レイ達がいる東の大陸はダンジョンコンティネントと呼ばれている。要はダンジョンが多くある大陸なのだ。


「キュービまで一直線で行くのよね?」


「ああ。他のダンジョンもあるけど、キュービにあるダンジョンはこの大陸で一番でかい。他を行くよりも効率が良いだろ?時間は有限だしな。」


「それもそうね。」


それにキュビと出会ったのは、キュービダンジョンの地下30階だ。あの時はそれ以上深くまで攻略しなかったけど、実際あのダンジョンは地下50階まである。実際のゲームなら魔王を倒した後のフリーシナリオで向かう場所だからあそこのお宝はまだ誰も手に入れていないはずだ。


今の俺は、はっきり言って弱い。キュービの里の事もあるけどいけるなら、地下50階まで行ってお宝もゲットしたい。レベルも上げれるだろうし丁度いいだろう。ボルテックス達が中央大陸まで行って調査し、帰ってくるまで3か月ぐらいか。それぐらいでどれだけ強くなれるか。がんばらないと。


「それにしても誰も俺達が勇者パーティにいたレイドールとローズマリーだって気づいてなかったな。」


「そうね。最初はちょっとビクビクしてたし、声をかけられた時はあせったけど、まったく気づかれなかったわね。最近は街を歩くだけで人が集まってきてたからちょっと不便だったよ。そう考えると今の方がありがたいわね。」


やっぱり髪の色に髪形、装備を変えたのは正解だったな。もはやどこからどうみてもどこにでもいる冒険者パーティAに見えるもんな。後は、マリーとの連携とか役割だな。


レイとマリーは港町を出て、東の大陸最大のダンジョンタウン『キュービ』に向かっていた。道中魔物が襲ってきてはレイの魔法や、マリーの武器を使って倒しながら進んでいる。


「今までは基本的に後衛にいて、回復専門みたいな所があったからどうなるかと思ったけど、この辺りにいる魔物だったら私でも倒せるみたいね。」


「ああ。今の俺達は俺が前衛に加えて魔法が使えるけど、俺とマリーで二人しかいないからマリーが前衛に出て魔物を倒してくれると攻撃の幅が広がるから助かるよ。」


「おいおい俺様の事を忘れてないか。」


「もちろん忘れてないさ。フェニクの火力は万が一の保険だからな。頼りにしてるぞ。」


「わかってればいいんだ。」


フェニクはフェニックス、不死鳥という種族だ。普段は小さな鳥の見た目をしているが、能力を開放すれば大きな火の鳥になる。ワイバーン数匹なら一瞬で倒す力をもっている。普段は俺と契約し、俺に力を与えてくれているので何度も能力開放はできないが、今の俺よりも強いので、もしもの時は頼らせてもらおう。


それに、マリーが直接魔物を攻撃してくれるのも助かる。俺たちは2人パーティだし。マリーが攻撃してくれなかったら戦闘中ずっと後ろでいるだけになるもんな。まあマリー自身もそのことを気にしてたから丁度よかった。


「ねえレイ思ったんだけど、私も攻撃魔法を覚えれないかな?」


「どうしたんだ急に?」


「今の私って回復魔法とか防御魔法しか使えないじゃない。でもそれってアイテムがあれば代用できると思うの。レイが魔法を使って魔物を倒してるのを見てうらやましく思ったわ。ミストに教えてもらえないかしら?」


たしかにマリーの言うことは一理ある。が、そんなことって可能なのか。普通魔法はレベルが上がった時に覚えるだけでそれ以外の魔法は使えないのが普通だ。いや、俺の場合レベルに関係なくMPがあれば全ての魔法が使えるみたいだから実際は使えるのか?たしかに異世界転生とかラノベの世界ならレベルとか関係なく努力で魔法を使えるようにはなるけど・・・


「ミスト、どうなんだ?魔法って覚えれるのか?」


「もちろん可能じゃ。まあ適正はいるがな。それでもマリーは回復魔法は使えるんじゃろ。光とか水とかの適正はあると思うぞ。イメージを固めれば使えると思うぞ。」


「イメージか・・・。俺の場合はイメージなんかしてないけど魔法が使えたぞ。」


「妾がお主の代わりにイメージしておるからのぉ。発動者のレイがMPをイメージを妾がしてる感じじゃ。」


なるほど。それなら俺が全ての魔法を使うことができるのも納得だな。それにイメージか・・・。やっぱり適正があれば魔法を使えるんだな。でも多分そういう事がこの世界には広がってないんだろうな。覚えた魔法以外は使えない。みたいな事が常識としてあるんだろう。俺と行動する事でマリーがその常識の壁を破ったって感じかな。


「マリーでも魔法が使えるみたいだ。マリーはミストと直接話ができないから俺がミストから聞いて教える感じになると思うけどな。」


「それでかまわないわ。私はあなたを守るとともに横に立ちたいの。守られるだけはいやだわ。」


「そうだな。一緒にがんばろうな。」


「ええ。」


(折角レイと二人っきりのパーティなんだもの。私ができる事はなんでもやるわ。これ以上パーティメンバーを増やさない為にも・・・)


そうして、マリーが攻撃魔法を覚えながら、又、レイも使える魔法を確認して試し打ちしながら進んで、無事にダンジョンタウン『キュービ』にたどりついたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る