謁見の準備
「事前の予想とは違って
ヨルムベルトの配下による案内を断って廊下に出たサーマイヤーフは、ラングルムとコンライレンにしか声が聞こえないのを確認すると、我慢に我慢を重ねていた
「しかし俺を今更レイシン河方面から引き離すことに何の意味がある?
「案外、本気で閣下をシンドゥム戦線へと引き戻したいのかもしれません」
コンライレンが比較的にヨルムベルトに好意的な、そして常識的な意見を述べる。サーマイヤーフの理性はその結論を
「いや、上手く隠してはいたが、あの
「ヴィセングルの総大将、ラインズマンはその手の
「ああ。この件については今後あの
結論付けた3人は、シムレー号の乗組員たちが晴れ舞台の時を今か今かと待っている控室へと歩を進めた。
控室に残ったレオンハルトたちはその頃、外務次官ロレンツォ・ギルバーグ直々に
「ギルバーグ殿、お話の途中申し訳ないのですが…」
「はい、なんでしょう?判りにくい箇所でもございましたかな?」
「いえ、根本的な所で…」
「ちょっと、レオンハルト…」
どうやらルーチェも同じ疑問を感じつつも、素直に聴いていたらしい。レオンハルトが言いかけた内容を察してやめさせようとするが、既に尋ねかけてしまった為に、ロレンツォの方が話を進めてしまう。
「いえ、何かございましたら包み隠さず
「では。あまりにも無礼な発言となることをご
「なるほど。わかりますとも。実のところ王宮としては当初、あまりにも遠方に有り往来も容易ではないアイク島とは、それなりの付き合いをしておけばそれで良い、という考えでございました。またお疑いの理由として、言葉にはされませんでしたがサーマイヤーフ殿下のお立場の事がございますな?」
「ご明察痛み入ります」
「カシウス様のご
「単純な降格などの処置ではないという事ですか?」
他国の人事になど本来口を
「元より殿下のお立場では降格人事という
「聞き及んでおります」
レイシン河方面地域への異動については、王族同士の
「かっ…殿下をシンドゥム方面へ異動させる…それではやはり王国はアイク島との国交に消極的と」
「ちょっと、レオンハルト…様…失礼です、よ」
「カシウス様がそうお考えになるのも無理はございません。これまで友好的だった責任者を突然異動させるとなれば、外交方針が変わったと判断されるのが当然。しかし誓って申し上げますが、アイユーブ王国はアイク島との間に緊張状態が生まれるのを望んではおりません。ただでさえ、東にはシンドゥム王国、西にはロッテントロット都市連合と、広大な国土を挟んでいるために連携を取られる事こそ有りませんが、
レオンハルトがサーマイヤーフがレイシン河方面から移転するという案から、想定せずにはいられない今後の二国間の関係に関する
「そもそもカシウス様は先入観からやや勘違いをしておられるようですが、この国を動かしているのは間違いなく現在玉座に座っておられるショームード3世陛下であらせられる。王子間の派閥争いが有ることは事実ですし、我らもその辺りを考慮しながら政に
その言葉は確かにレオンハルトにとって大きな
「全くもって仰る通りです。なればこそ、これからの謁見を栄光ある物としなければいけませんね」
「ご理解いただけて嬉しく思います。では我々の考えをご理解していただけたところで、再び謁見の段取りについての話に戻るべきなのですが…」
「何か気になることでも?」
「カシウス様の髪の毛なのですが、やはり王国人の感覚で見ると短いことに加えて、色が金色の方が高貴だと
「ああ、なるほど。しかし今後しばらくは王宮に滞在させていただいて、外交上の実務を詰めていくのです。その間ずっと
「左様ですか。余計なことを申し上げました。では先程の話を続けさせていただきます。陛下が入室された後玉座へとお運びいただいてから、皆様に顔を上げるように促すのですが…」
「何かその時の手順などが複雑なのですか?」
「実際に顔を上げていただく前に、ゆっくり3つ程数えてから
アイク島には無い習慣で、ルーチェは何を
「アイク島の宮廷儀礼には有りませんが、一部の
「ご理解いただき
理由を知ったルーチェは更に不思議に思ったようだったが、レオンハルトにはそれほど意外な事でもなかった。再度ロレンツォに気にはしていないことを伝え、その先の段取りについての説明に入ってもらった。
レテンド大陸興亡記 嶺月 @reigetsu_nobel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。レテンド大陸興亡記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます