(三)-2

 真佐貴は左右を見回した。

 しかし、どちらをみてもどうしたらいいかわからなかった。

「病院に連れてって」

 花梨がそう言うと、真佐貴は思い出したように「あ、ああ、そうだった!」と言った。二ヶ月前ほどに真佐貴は花梨と一緒に出産時にどうしたらいいかというのを、事前に会議して申し合わせていた。家に真佐貴がいれば車で病院に連れて行く。いなければタクシーを呼んで、花梨は自分で病院に行くというものだった。その二ヶ月間、何も問題がなかったので、真佐貴はそのことをすっかり忘れてしまっていたのだった。

「よし、立てるか」

 真佐貴はそう言って大きなおなかを抱えた小さな体の花梨の肩を下から支えるようにしてゆっくり車へと連れていった。


(続く)

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