(二)-11

 国分は財布の中から五千円札をつまむと、それを賽銭箱の中に入れた。

 願掛けに五千円……。初詣でもそんな金額を投げ込むことのなかった真佐貴は、少し驚いた。

 逆に国分の向こう隣にいる、同僚の中川は「えっ、それだけ?」と小さく声を上げていた。

「うるさい、こういうのは、気持ちなんだ」

 国分はそういうと、上からぶら下がっている綱を握って左右に振り、金をガランゴロンと鳴らした。そして両手で二回拍手をして一礼した。


(続く)

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