(二)-9

 先輩はまだ静止していないテルテル坊主めがけて、さらに金属バットを振った。まるで甲子園の四番バッターのように足を広げて上半身も大きく回転していた。

 もちろんテルテル坊主はさっきと同じかそれ以上に高い位置まで飛ぶと、ヒモの限界に引っ張られて落ちてきた。硬式球だったらホームランになっていたかもしれないバッティングだと真佐貴は思った。

「どうだ! これだけいじめてやれば、テルテル坊主も頭にきて雨を降らしてくれるだろうな」

 そう言いながら、さらにもう一度先輩はバットでテルテル坊主を打った。

 こうして効果があるのかないのかわからないまじないを夜八時くらいまで交互で続けると、腹が減り方に我慢ができなくなり、二人は家路についた。


(続く)

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