さかさま坊主

【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名

(一)

「今日も日本列島上空には高気圧が張りだしていて、全国的に晴れ。今日も暑くなるでしょう……」

 リビングのテレビの声を聞いて、雨晴あまはらし真佐貴まさきは少し慌てた。ニュースが終わり天気予報が始まると、そろそろ出勤しなくてはいけない時間だからだ。これ以上遅くなると、遅刻してしまう。

 真佐貴は席を立つと、ダイニングテーブルの反対側で寝間着姿のままトーストを口に運んでいる妻の雨晴花梨(かりん)に近づいた。

「行ってくるよ」

 そう言って彼女の頬にキスをすると、彼女は「行ってらっしゃい」と返事をくれた。

 真佐貴はさらに彼女の膨らんだおなかにも「行ってきます」と言って、彼女の寝間着の上をさすった。そしてダイニングを出た。


 玄関から出てきた真佐貴はポーチにめてある車に乗り込むと、エンジンを始動させた。車に火が入ると同時にカーラジオの電源も入り、足元のスピーカーが声を上げ始めた。

 真佐貴は車を進発させた。


(続く)

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