さかさま坊主

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

「今日も日本列島上空には高気圧が張りだしていて、全国的に晴れ。今日も暑くなるでしょう……」

 リビングのテレビの声を聞いて、雨晴あまはらし真佐貴まさきは少し慌てた。ニュースが終わり天気予報が始まると、そろそろ出勤しなくてはいけない時間だからだ。これ以上遅くなると、遅刻してしまう。

 真佐貴は席を立つと、ダイニングテーブルの反対側で寝間着姿のままトーストを口に運んでいる妻の雨晴花梨(かりん)に近づいた。

「行ってくるよ」

 そう言って彼女の頬にキスをすると、彼女は「行ってらっしゃい」と返事をくれた。

 真佐貴はさらに彼女の膨らんだおなかにも「行ってきます」と言って、彼女の寝間着の上をさすった。そしてダイニングを出た。


 玄関から出てきた真佐貴はポーチにめてある車に乗り込むと、エンジンを始動させた。車に火が入ると同時にカーラジオの電源も入り、足元のスピーカーが声を上げ始めた。

 真佐貴は車を進発させた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る