第12話 カセリアと


俺はなんでこんな世界なのに、あんな事を望んでしまったんだ。


今のままで充分、いや元の状態でも充分にモテる。


こんな世界で…


「理人?! どうした? 考え事か?」


話を聞いてしまったから、もうどうして良いか解らない。


今、俺の前には、それこそ物語のヒロインの様な美女が居る。


その美女が、俺が望めば『相手してくれる』


しかも、気軽に『友達』になったら…


それが女性側だけに権利を強いる結婚みたいな物だった。


『当たり前じゃないか?友達登録しただろう? あれは私が理人の物になった…そういう意味だよ! 勿論、私から解除は出来ない…まぁ男側、理人からは簡単に解除できるけど…しないよね』


凄いな…これ、どう考えても女から離婚できない婚姻関係に近い気がする。


しかも、男が少ないから一夫多妻…とんでもない世界だ。


「お~い理人! どうしたんだ?」


「ゴメン、考え事していた…凄く聞きづらいんだけど、そのカセリアさんは…え~と、そういう事したいの?」


「あっ、SEXの事? そりゃしたいに決まっているだろう? 女にとっては最高の栄誉だし、色々な特典もあるから」



「栄誉? 特典?」


「結構凄いんだぞ…」


話を聞くと本当に凄かった。


男性と肉体関係になって、精子を出して貰えば、優良女性の認定書と金貨3枚の一時金が貰える。


男性に好かれて一緒に暮らすなら、男性用施設で一緒に暮らせる。


妊娠すれば、優良母体として登録されて一時金が貰え、生まれたのが男なら子供が15歳になるまで生活費が貰え、税金が免除。


「それ、本当ですか?」


「態々嘘なんて言わないよ?お金よりも何よりも『男性に愛された』そのステータスは一生の自慢になる! だからこそ女は必死になるんだよ…まぁ私みたいな傷者女には縁が無い話だけどね? こうして理人の物になれて『友達』になれた、それだけで満足だよ! 充分幸せだ」


こんな世界で良く俺を王女は追い出したな。


出会って間もない。


本当なら、もう少しデートしたり、遊んだりしてから、関係を深めるのが普通だが…


この世界は、全く普通じゃない。


なら、俺も普通に考えなくて良いのかも知れない。


俺が今までの人生であった最高の女性が目の前にいる。


前の世界じゃ高嶺の花どころじゃない。


絶対にこんな女性は存在しない位の美人だ。


「カセリアさん、良かったら一緒に暮らさない?」


言ってしまった。


断られるわけはない。


解っているけど…心臓が張り裂けそうだ…


「理人、それ本気で言っているのか? 私は今でも『友達』だ理人が好きにして良い存在なんだぞ? 冗談だよな…顔にこんな傷がある女なんだぞ…」


長い茶髪の髪は良く見るとキラキラ光っている。


やや切れ長の目をした整った顔。


そして、綺麗なスレンダーの体。


現実世界には居ない…そう思える程の美しさだ。


自分が好きなアニメのキャラを現実社会で探しても、まず見つからない。


そっくりなコスプレイヤーだってお化粧や服で似せているだけだ。


そもそも、俺が好きな二次元の相手は元から顔に傷があるから気にならない。


『美しい宇宙海賊、女宇宙海賊メーダル』その物が目の前に居る。


しかも、戦闘職なせいか内面もかなり近いかも知れない。


「好きになったのは俺の方ですよ『余りに綺麗なのでつい見惚れてしまいました』そう言った筈です」


「確かにそう言われた気がするけど? あれ本気だったのか?顔に傷がある傷者女だよ?私」


「『その傷が良いんじゃですか! その傷がどうして出来たのかは解らない。だけど、その傷は逃げずに戦ったからこその傷だと思うんです』そう言いましたよね…」


「え~とうん、言っていた…言っていたよ…うん」


「それでカセリアさんはどうなんですか? 俺と一緒に暮らしたくないんですか?」


「暮らしたい、暮らしたいに決まっている! だけど…私は私は…こんな顔に傷が…えっ」


仕方がない…この世界の女性はSEXの為に凄い奉仕をする位だから大丈夫だよな?


「カセリア、綺麗だよ!」


そう言ってカセリアの腰に手を当てて抱きしめた。


「なっなっ…なっ理人、一体何を? うぐっうん?!」


キス位大丈夫だよな…一応俺にとってはファーストキスだ。


「ぷはぁ…それ、俺のファーストキスだから」


「りひ…と、嘘っあっあっ…キス、ファーストキス…男から…嘘だぁ…ガクッ」


「えっ、カセリア…おーい、気絶している」


カセリアさんは鼻血を出して気絶してしまった。


え~と…この世界3時間位、色々しないと駄目なんだよな…


キスで気絶するなんて可笑しい気がする。


まぁ良いや…起きてから聞くしか無いな。







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