第3話 城を去った


全く持って文句が言えないよな。


城を出るにあたって、今後の生活費として金貨10枚(約100万円)と当座の間使える身分証明書を貰った。


多分、手切れ金みたいな物だけど、よくあるライトノベルやアニメに比べれば上等すぎるよな。


しかも、一振りの剣と服や靴も2組支給。


割とホワイトだな。


それで出て行こうとしたら…


「私は元の姿は気にしません! 良かったら結婚を前提に是非…これ連絡先です」


「えっ…はい」


「あのですね…困ったら何時でもいらして下さい…これ私の連絡先です」


顔を赤くしてモジモジしてメモの様な紙を渡してくる。


「ちょっと、なにしているの?どうせ、メイドなんて貧乏だからやめた方が良いわ!その点私は衛兵ですから、収入が違いますよ! これ私の連絡先です」


まるで逆ナンパするかの様に片端から連絡先の書いた紙を渡してくる。


「???」


この容姿のせいか。


銀髪でブルーアイ、自分で言うのもなんだけど大樹すら超える美少年の容姿だ、女の子が優しくなるのも解る。


だが、これは俺の本来の姿じゃない事を彼女達は知っている筈なんだけど。


前の世界だって「整形美人」を気にしない人も多く居た。


この人達も同じような人達なのかも知れない。


気がつくと、貰った連絡先の紙は30を超えた。


確かに自分でも見惚れる位の良い男にしか見えないから、こう言う事もあるのか。


これからは1人で生きて行かなくてはならない、そんな時に頼れる相手がいると言う事は、案外幸せな事なのかも知れない。


しかし、外見が違うだけで、こんなに待遇が違うのか。


驚きだな。


これで、この城ともクラスメイト達ともお別れだな。


「ちょっといいかしら?」


なんでマリン王女が門の近くにいるんだ?


「別に構いませんが、何かあるのですか?」


「そう構えないでくれると嬉しいわ!立場的に貴方を追い出さないといけないけど…個人的には居て欲しいのよ!だけど、異世界人の育成指導の責任者だから、そう言う訳にはいかないのよ…ほら!」


マリン王女もメモの様な紙を渡してきた。


「これ、何ですか?」


「この手紙を門で出せば、私に取り次いでくれるから」


ああっ連絡先って、取り次いで貰う為の紙なのか。


良く考えてみれば、この世界にスマホは無い。


連絡先をくれても『どう使って良いか』解らなかった。


「ありがとうございます! もしかして他の方から貰った連絡先って、連絡先が書いてある他に、取り次いで貰うのに使うのですか」


「へぇ~貰ったのね…まぁそうよ、住所以外に此処はお城だから『私の知り合いなので取り次いでくださいね』そういう意味も兼ねるわね」


成程、住んでいる所はお城って解っているから住所を知っても意味は無いもんな。


「成程」


「ちょっと…それ貸しなさい!」


「なんで?」


「良いから!」


王女だからか結構な迫力がある。


「はい…」


渋々、俺は貰った連絡先をマリン王女に渡した。


ビリビリビリッ


マリン王女はいきなり全部の連絡先を破って濠に投げ捨てた。


「何をするんですか!」


「王女の私が、取次書を渡して相談に乗るって言っているんですから、他は必要ないわ…それじゃ、困ったら絶対に城に来るのよ?いいわね!」


「解りました」


俺は心の支えの連絡先を失い、今度こそ本当にお城を後にした。



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