第2話 風よ吹け
インヴィズィブル・ファング参
風よ吹け
永遠に生きるつもりで夢を抱け。
今日死ぬつもりで生きろ。
ジェームズ・ディーン
第二牙【風よ吹け】
人間界へと来たシャルルとヴェアル。
「な、なあシャルル。戻らね?やっぱり不味いんじゃないかな―、って思うんだよね。そりゃあ、前は人間と共存を目指してて、人間界で生活してみよー、みたいなさ、そんな感じだったじゃん?けど今回みたいに興味本意でむやみに人間界に行くのは、やっぱり良くないよ」
「・・・・・・」
都賀崎侑馬となったシャルルは、面影も全くないほどに笑わない。
というよりも、一度来たことがあるというのに、まるで初めて来た時のようにキョロキョロとしていた。
「なあしゃ・・・都賀崎、もうこれ以上は止めよう。大人しく帰って・・・」
ふと、顔をあげると、そこには見たことのある顔がいた。
「・・・・・・」
あれ?と思いながらじーっと見ていたヴェアルこと光は、その人が誰かを思い出し、思わずあわわわわ、と口に手を当てた。
隣にいる侑馬の方を見るが、特にこれといった変化は見られない。
「おい!都賀崎!」
「・・・・・・」
「あれ、友也だよな?まずいぞ!いや、まずくはないけど!」
ヒソヒソと話していると、その友也は二人を見て眉間にシワを寄せた。
シャルルやヴェアルなどに関する記憶は、以前全て消し去ったため、こちらを見たからといって思い出すことは出来ない。
だが、なんとなく気まずい。
光は友也の方をなるべく見ないようにしながら、すれ違おうと試みる。
緊張していたのは光だけで、友也も侑馬も、特にこれといったリアクションはなかった。
「・・・?」
「はぁ・・・」
その頃、一人鏡の中にいるシャルルは、退屈なのとイライラしているのとあり、誰に聞かせるわけではないが、大きなため息を吐いていた。
「しかし、本当に何も無い場所だ」
昼寝をして身体を起こし、あたりを見渡すと、右を見ても左を見ても、前も後ろも全て同じ景色だ。
何処から来て、何処へ向かって行けば良いのかなど全く分からない。
適当に時間を潰して、適当に腰を下ろし、寝たり起きたり大声を出してみたり。
そんな寂しいことをしていたシャルルだが、歩き続けた結果、深い霧の向こう側に、何かが見え始めた。
「?なんだ?」
目を細めながらそれに近づいて行くと、それは大きな月桂樹だった。
「月桂樹か」
どこかの神話の中に出てきた樹だ。
シャルルはその樹に凭れかかって休もうと、月桂樹に近づいて行くと、そっと触れてみた。
「立派なものだな」
そう呟くと、何かが聞こえた。
―ありがとう。
「・・・?誰だ?」
ここにはシャルルのほかには月桂樹しかなく、まさか樹が喋るはずあないと、シャルルは少しでもそんな考えを持ってしまった自分に対して笑った。
―私だ。
だが、それは確かに月桂樹から聞こえてきて、シャルルは思わず顔を顰めた。
「おかしなものだな。この世界では樹が喋るのか」
―そなたに、彼女の苦しみが分かるか?
「何を言っている。俺はここに閉じ込められたんだ。しかも、俺の身体を使って何かしてると思うと、それだけで虫唾が走る」
―彼女は、“無”から産まれた。
「?」
シャルルは樹に寄りかかることを止め、樹と向かい合う様にして佇んだまま、月桂樹の話に耳を傾けた。
―彼女、シャトーは無から産まれ、孤独に生きた。こちらから見える景色は、シャトーにとってさぞかし羨ましく、妬ましく、輝かしいものだった。鏡の外の世界には、ここにはないものが沢山あるからな。
それは太陽であったり、月であったり。
空であり雲であり、雨であり風であり、大地であり人であり、家であり服であり金であり、有のもの全て。
シャトーが無の状態からどうやって産まれてきたか、それは誰にもわからない。
確かなことは、シャトーは産まれてからずっとこの場所で独りで生きていたということ。
「なぜ俺なんだ。俺以外にもヴェアルなりミシェルなりいただろう。よりによって俺をここに閉じ込めるとはな」
―そなたが選ばれたのは、たまたまだ。理由などないだろう。
「理不尽極まりない」
―何でも持っているそなたが羨ましかったのかもしれない。
「後付けか。・・・まあいい。理由はどうであれ、俺の身体をあいつが今操作しているのに変わりない。俺が言いたいのはそこだ。俺の身体は俺のものであって、他の誰のものでもない。したがって、孤独だから、寂しいから、有だから、などといった言い訳は俺には通用しない。お前もあいつを見てきた立場なら、どうして止めなかった」
とにかく、シャルルは自分の身体が奪われたことに腹を立てているようだ。
腕組みをして、目の前の月桂樹に対して睨みを効かせている。
―赦してやってくれとは言わない。だが、せめて少しだけ、外の世界を生きさせてやってほしい。
「・・・いい加減にしろ。産まれ持った環境を恨んでも仕方ないだろう。それに巻き込まれた俺はとんだ被害者だ。所詮、鏡の中と外では生きて行く環境が違うんだ。あいつが適合出来るはずがない。俺の大切なジキルとハイドに何かしたら、俺はあいつのことを殺すかもしれない。それでもそんな悠長なことを言っていられるのか」
シャルルの言葉に、月桂樹は黙ってしまった。
しばらくしても返事がないため、シャルルはとりあえず月桂樹に背を向けて寄りかかると、そのまま地面に尻をついた。
久しぶりに感じる緑の空気に、シャルルは自然と目を瞑っていた。
「おい」
「(ひいいいいいいいい!!!バレた!?)な、なんですか?」
すれ違って安心したところで、ふと、友也が声をかけてきた。
全身をびくりと震わせた光に、友也は徐に近づいてきて、さらに光の心拍はドクドクと上昇していく。
じーと光の顔を見ていたかと思うと、次に侑馬の方を観察するが、侑馬はどこを見ているのか、遠くの空の方を見ていて、目は合わなかった。
「あんたら、どっかで会った?」
記憶はないはずの友也に言われ、光はブンブンと首を大きく横に振る。
「そそそそそんなわけないでしょう!!俺も君も、初めて会ったよね?初めましてー。俺は大柴光っていいますー。こっちは都賀崎侑馬。俺達この辺に引っ越してきたばっかりで、ちょっと散歩っていうか。街を散策してるだけなんだよねー。じゃあ、そういうことでさらばっ!!!」
「あ・・・」
バレる前に逃げようと、光は侑馬の腕を強く引っ張って、友也の前から姿を消す。
腕を伸ばした友也だが、それが届く前に二人がぴゅーっと走って去って行ったため、行き場のなくなった腕を静かに下ろした。
ぜえぜえと息を切らせて、二人は何処かの公園に着いていた。
「あー、びっくりしたー。まじでどうなるかと思った・・・。てか、あいつってこの辺に住んでたんだっけ。忘れてた」
「・・・・・・」
一人で何か言いながら、友也が追って来ていないかを確認している光だが、侑馬はまだどこかを見ていた。
その視線の先にあったのは、タイ焼きやだった。
「ああ、お腹空いてんの?」
侑馬が空腹なのだと思った光は、タイ焼きやへと向かってタイ焼きを二つ買った。
できたてのタイ焼きはほかほかで、中からはアンコが飛び出していて、光は躊躇なく口へと頬張った。
それを横でじーっと見ていた侑馬は、光が食べたのを見て、それからタイ焼きへと視線を向けてようやく口に含んだ。
「うまっ」
「・・・・・・」
そこでのんびりしていると、徐々に空は暗くなっていき、真っ赤に燃える夕陽が沈み始めた。
「おー、綺麗だな」
「・・・・・・」
「あっちじゃあ、なかなか見られないもんなぁ」
「・・・・・・」
何も言わなかった侑馬だが、その横顔からは物憂げな印象を受けた。
それと同時に、光は疑惑を持っていた。
まさかとは思うけれども、このシャルルは本物ではないのでは、と。
夜になっても帰ろうとしない侑馬を強引に城へと連れて帰った。
帰るとすぐに椅子に座り、何も言わなくなってしまったシャルルに対し、ヴェアルは冗談交じりに聞いてみる。
「それにしても、なんだかシャルルじゃないみたいだな!!お前、もしかして偽物なんじゃないのか?」
ハハハ、と笑いながらそう言うと、シャルルはゆっくりと顔をヴェアルに向けてきた。
「シャルル?」
「・・・・・・」
急に、シャルルの目が赤くぼうっと光ったかと思うと、次の瞬間にはシャルルが目の前まで迫ってきていた。
シャルルが俊敏なことを知っていたはずのヴェアルだが、全く反応出来なかった。
「シャルルッ・・!」
鋭い爪がヴェアルの顔を掠めると、ヴェアルも思わず腕のみを狼男化し、シャルルの腹へ一撃を入れる。
こんなに手応えのある攻撃をシャルルに出来たことはなく、ヴェアルは確信した。
「お前、誰だ?シャルルは何処にいる?」
「・・・・・・」
「おいっ!!」
「・・・欲しい」
「は?」
腹を押さえながら、シャルルが呟いた一言に気を逸らしていると、シャルルは爪でぎぎぎ、とテーブルをひっかいた。
そして椅子を片手で持ち、ヴェアルに向かって投げてきた。
ヴェアルはそれを手でバッと払うと、すぐそこにシャルルの足があり、顔面から蹴飛ばされてしまった。
壁に激突し、起き上がろうとしたヴェアルだが、シャルルによって顔面を鷲掴みされてしまい、逃げられなくなってしまった。
「がっ・・・!!はあっ!!」
「・・・・・・欲しい」
「?」
さっきから何を言っているのか分からないヴェアルは、ただただシャルルの腕を解こうと、必死にもがく。
「欲しい。この身体も。この身体で得られるもの全て。邪魔するなら殺す」
「あのなあっ・・・!!それはシャルルの身体だぞ!シャルル以外に、扱えると思うなよっ!!」
「・・・・・・」
すうっと細められた赤い目は、ヴェアルの顔をより強く握りつぶそうとする。
「・・・!!!ぐっ」
このままでは、本当に頭を潰される、そう思っていたヴェアル。
そんなヴェアルに救世主が現れた。
ばさばさっ、と大きな羽根をばたつかせて、シャルルの目元を邪魔する影。
「ストラシス!危ないからさがってろ!!」
だが、ストラシスは一向にシャルルから放れようとせず、それどころか、一度放れて勢いをつけると、シャルルに一直線に向かう。
さほど大きな力ではないにしろ、鬱陶しく思ったシャルルは、思わずヴェアルを捕まえていた腕の力を弱めてしまう。
その一瞬を見逃さず、ヴェアルはシャルルの腕を自分の顔から引き離した。
「ああ、ありがとな、ストラシス」
ヴェアルが解放されたのを確認すると、ストラシスは階段の方へと逃げた。
「・・・・・・」
「シャルルが本気出せば、俺なんか人捻りだ。それが出来ないってことは、やっぱりお前は偽物だ」
へへ、と笑って見せると、それが気に障ったのか、まだ体勢も息も整えられていないヴェアルに近づき、シャルルはヴェアルの髪の毛を掴んだ。
そして、膝でヴェアルの顔面を数回にわたって蹴り続けた。
ストラシスが助けようとしたが、シャルルに睨まれ、牽制されてしまった。
「・・・!!はあッ・・・!!」
意識があるだけでもまだ良いのだろうか。
鼻からも口からも血が出ているが、そんなヴェアルを見ても、シャルルは蹴るのを止めない。
蹴り続けて飽きたのか、少しするとヴェアルの髪を掴んだまま、思い切り床に顔面から叩きつけた。
うつ伏せになってしまったヴェアルの腹にも、下から何回か蹴りを入れる。
「ぐはっ・・・」
「・・・・・・」
しばらくして、ヴェアルが意識を手放したことが分かったのか、シャルルはヴェアルの髪を掴んだままどこかへと向かった。
がしゃん、何処かの扉を閉める音だけが、ヴェアルの耳に残った。
一方で、残されたストラシスたちは、シャルルから距離を取り、近づこうとしない。
「んー。結構寝ちゃった」
シャルルの城で勝手に部屋を借り、勝手に二階で寝ていたミシェルは、翌日になってようやく起きてきた。
寝過ぎたせいか、身体が重くて仕方ない。
そんなことをシャルルの前で言えば、きっと「それはお前自身が重いんだ」とか何とか言われそうだが。
お腹もすいてきて、ミシェルはヴェアルに何か作ってもらおうと下へ降りた。
だが、ヴェアルがいない。
「あれ?ヴェアルー?」
階段を下りた先にいたのは、いつも通りのシャルルと、シャルルから放れた場所にいるストラシスを始め、ジキルとハイドにハンヌにモルダンたち。
キッチンかとも思い、ミシェルはキッチンへと足を運ぶが、そこにもヴェアルはいなかった。
「ねえシャルル、ヴェアルどこ?」
「・・・・・・」
「ストラシスを置いてどこかに行くなんてことないだろうし・・・。んー、ねえストラシス、知らない?」
シャルルが何も言わないため、ミシェルはストラシスに尋ねてみた。
すると、ストラシスはばさばさと飛び出し、ある場所に留まった。
「え?そこって」
シャルルの城はとても広く、全てを把握しているわけではないが、確かそこは地下室へと繋がる階段がある場所だ。
シャルルにもったいないから使えば、と言ったことがあるが、シャルルに言わせると、地下室に何を入れろというのか、ということだった。
「そこにヴェアルがいるの?」
ミシェルは、恐る恐るそこにある木の板を取り外そうとした。
「え?」
だが、その手はシャルルによって握られてしまった。
「ちょっとシャルル、みんな見てるよ」
何を勘違いしているのかは知らないが、ミシェルは顔を赤くしている。
そんなミシェルの腕を引っ張り、近づかないようにと牽制するためなのか、シャルルはミシェルをシッシッ、と追い払った。
「なによ!」
しかし、それでもヴェアルがいないことが気になり、ストラシスがそこにいるというなら、きっといるのだろう。
そう思ったミシェルは、シャルルにバレないようにそーっと木の板を外しにかかる。
ぎい、静かにやった心算だが、やはり古いからなのか、音が響いてしまった。
シャルルがこちらの行動に気付き、ミシェルはいつものように適当に謝ろうとしたのだが、今日のシャルルは違った。
「え?」
いきなり、ミシェルを叩き、その衝撃でミシェルは床に倒れてしまった。
叩かれたことへの驚きよりも、シャルルがこんなことをするなんて、初めてだ。
虫の居所でも悪いのかと、ミシェルは立ち上がってシャルルにヴェアルを見つけたいだけだと伝えると、シャルルの表情が変わる。
「しゃ、シャルル?」
びゅん、とシャルルがすぐそこにきていて、ミシェルは思わず杖を出して呪文を唱えていた。
シャルルに絡みつく蔓は、城の天井から伸びてきており、シャルルは身体を捩って少しずつ解いて行く。
その間に板を外そうとしたミシェルだが、こういうとき、不器用な自分を恨みたくなるもので、なかなか外せない。
そうこうしている間に、シャルルは蔓から脱出していて、ミシェルはまた杖を向ける。
「こ、こないで!!」
「・・・・・・」
ミシェルの声も虚しく、シャルルは一歩一歩近づいてきたため、ミシェルは恐怖のあまり、巨大な雪だるまを出した。
なぜ雪だるまなのかと言われると、謎だ。
巨大な雪だるまは、シャルルに向かって、まるで銃弾のように鋭い玉を発射する。
ひょいひょいと避けていたシャルルだが、先程身体に巻きついていた蔓がまた動きだし、身体を巻き取られてしまった。
「・・・・・・」
なんとか逃げないと。
本能がそう叫び、ミシェルは必死になって城から逃げようとした。
だが、シャルルは蔓を筋力だけでブチブチっと引き千切ると、雪だるまの方に飛んで行き、それをミシェルに向かって蹴った。
「ええええええええええ!?」
自分に突っ込んできた雪だるまを回避出来ず、ミシェルはシャルルに捕まってしまった。
そして、自分が開けようとしていた板を簡単に開けられ、その中に投げ飛ばされた。
「いたた・・・。なんなのよ!もう!シャルルってばいつからあんな冷酷非道な奴になったのよ!最初からか!」
ノリ突っ込みをしたところで、地下室はとても暗くて最初は何も見えなかったが、徐々に慣れてきて、ある程度見えるようになってきた。
シャルルの言っていたとおり、やはり特にこれといったものは何も置いていなく、案外殺風景だった。
「なによ。・・・ん?」
ぐぐーっと目を凝らしてみると、ミシェルの視線の先には、見覚えのある影があった。
「ヴェアル?ちょっと!ヴェアルでしょ!?どうしたの?起きてよ!!!」
床に倒れていたヴェアルを起こしてみるが、ヴェアルの身体はなぜかボロボロで、顔からも血が出ていた。
何かあったことは一目瞭然で、しかもきっとそれをやったのはシャルルであることも分かっていた。
「んん・・・」
「ヴェアル!ヴェアル!」
何回か身体を揺すってみると、ヴェアルが目を覚ました。
それに安堵したミシェルは、思わずヴェアルに抱きつくが、ヴェアルに痛いから離れるようにと言われてしまった。
大人しく身体を放しながら、色々な感情が入り混じって泣いてしまい、そんなミシェルの背中をヴェアルは撫でてくれた。
「うっうっ・・・シャルルってば、本当になんなのよぉッ!!!」
「いやミシェル。あれはシャルルじゃない」
「え!?そうなの!?」
自分よりも鈍い人がいたとは驚きのヴェアルだが、ミシェルに事のいきさつを話した。
まだ身体の節々が痛いが、これからどうするかを考える方が先だ。
「ちょっと待って」
「なんだ?」
急に、ミシェルが真面目な顔をしたものだから、ヴェアルも何事かと身構える。
「シャルルが偽物ってことは、もしかして」
「うん?」
「私、偽物のシャルルにちょっとときめいて、ちょっとキュンとして、プレゼントまで作ったの!?純情な乙女心どうしてくれるのよ!弄ばれたわよ!!!」
「・・・・・・」
きーっ、と今度は怒りだし、情緒不安定なミシェルを宥めながら、ヴェアルは折れたかもしれない腕を動かす。
その間も、ミシェルはわーわーと喚き続ける。
「あーーーー!!!だからモルダンもあのシャルルには近づかなかったのね!!なんてこった!いつもは嫉妬しちゃうくらいシャルルにばっかり甘えるくせに!ようやくシャルルの性格の悪さに気付いたのかと思ってたけど、違ったのね!!なんたる不覚!はっ!ジキルとハイドだって、あんなにシャルルと距離を取ってたっていうのに、どうして気付かなかったんだろう!!!私の馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!偽物とはいえ、あんな男にちょっとでも胸ときめかせた私は大馬鹿者よーー!!」
「・・・ミシェル、少し黙ろうか」
何度かここから脱出しようと試みたが、上に何か乗っているのか、なかなか開かない。
ミシェルに開けられるか聞いてみるが、シャルルと戦ったときに相当体力を使ったようで、しばらく使えないと言われてしまった。
シャルルのことでまだふつふつと沸き上がる何かがあるようで、ミシェルは床に頭をガンガンぶつけながら、シャルルの悪口を言っている。
「そうよね、そうよね、シャルルがあんな風に私のこと助けてくれるはずないもんね。そうよね。もしも私が階段から落ちても、ベッドから落ちても、モルダンに無視されても、大事な杖を失くしても、最悪敵に囲まれたって、あいつは完全スルーするような奴よ」
ずうん、と沈んでしまっているミシェルには、ヴェアルももはや何も言わない。
「ていうか、昔私が知らない男と結婚させられそうになったときだって、シャルル、ちっとも止めなかったし!」
「止めてほしかったのか?」
「当たり前でしょ!魔法界の知ってる人ならまだ、まあいいかなーってなったかもしれないけど、全然知らない人だったのよ!?しかも超年上!何歳差があったと思ってんのよ!」
「最近じゃぁ歳の差婚は珍しくないからな」
「そういう問題じゃないのよ!そこはいいとして、どうしてシャルルが止めなかったかってことよ!こんなにいたいけな可愛い少女が、そこらへんの知らないおっさんと結婚しても良かったっていうの!?」
「止める理由はないだろ」
ヴェアルの言葉に、ミシェルは闇のように病んだ目を向けてきて、首をコキコキとぎこちなく傾けながらヴェアルに近づく。
そのホラーのようなミシェルの顔と行動に、ヴェアルは悲鳴が出そうになる。
「え?何?私知ってんのよ?シャルルもヴェアルも、私の結婚の話が出てるの知ってて黙ってたでしょ?そうなんでしょ?その時に断ってくれればよかったんじゃないの?」
「い、いや、それはミシェルの問題だし、別に俺達が拒否する理由はなかったし、それに・・」
「それに、何?」
「・・・しゃ、シャルルが、あんなじゃじゃ馬さっさと嫁にでもいった方が、俺の為になる、とかなんとか・・・」
へへ、と最後に誤魔化すように笑って見せたヴェアルだが、ミシェルの顔はどんどん暗くなっていき、しまいには泣き出してしまった。
「何なのよー!!!シャルルもヴェアルも、私のこと可愛いと思ってないんだーー!!妹のように可愛く育ててきたなら、そんなこと言わないはずだもん!なんて酷い男たちなの!繊細なハートはズタボロよ!ブロークンハートよ!!!」
「(妹・・・?可愛い・・・?)まあ、ミシェル落ち着いて。とにかく今はそんなことより、ここから出る方法を考えよう」
「そんなことじゃないもん!!私にとっては大問題だもん!!それに、出たいならヴェアルが一発喰らわればいいことでしょ!」
すっかり拗ねてしまったのか、ミシェルはとぼとぼと歩いて壁の方に向かうと、ヴェアルに背を向けて横にコテン、と寝てしまった。
何回か名前を呼んでも返事をせず、そのうちにミシェルは寝息をたてて眠っていた。
「ふう・・・」
ヴェアルも、ひとまず胡坐をかいて座った。
何がどうなっているのか分からないが、外にいるシャルルが何かしないかと、不安になるヴェアルだった。
「何もなければいいけど」
その頃、シャルルは再び人間界に行こうとしていた。
都賀崎侑馬へのなりかたをヴェアルに教わったシャルルは、人間の姿に変わると、城を出て霧の中を歩いて行った。
「なーんかどっかで見たことあるような気がするんだよなー」
授業をさぼって公園のベンチに横になり、ぼーっと空を眺めていた友也。
どこかで見たような、でも自分の中ではっきりとしたことは覚えていない。
何しろ、あんな風に人を見下すような目で見られることはそうそうないためか、頭の片隅にひっかかるものがある。
「やっぱ気のせいかな?」
うーん、と考えていると、友也の顔の前に黒い影が重なった。
「?」
顔を少し動かすと、そこには先日見掛けた男がいた。
「あ」
上半身を起こし、ベンチに腰掛けるように座ると、友也はその男を見て首を傾げる。
男、侑馬は友也を見て小さく笑うと、まるで友也を誘うかのように、来た道を戻り始める。
着いてきているかを確認するため、ちら、ちら、と友也の方を見てきたので、友也はなんとなく後を着いて行く。
「あのさあ、あんた、本当に俺と会ったの初めて?」
「・・・・・・」
「なあ、聞いてる?」
「・・・・・・」
確実に聞こえる距離にいるというのに、侑馬は何も答えない。
友也は怪しく思いながらも、侑馬の後を着いて行くだけ。
そのうち、見知らぬ道を歩いていて、細い場所を通りぬけると、霧の深い場所に着いた。
「?ここは?」
ぞくっとするほどの寒気を覚え、友也は一度振り返ってみるが、そこには自分が歩いてきたはずの道が存在していなかった。
「は?どういうこと?」
数歩歩いたところで、侑馬の方に顔を向けると、ある程度距離があったはずの侑馬がすぐそこに来ており、思わずびくっと身体をこわばらせる。
侑馬は何も言わず、ただ友也のことを見る。
「な、なんだよ?」
「?何の唄だ?」
何十年か、何百年か、何千年か前のことかもしれない。
一人の少年が森の中を歩いていると、どこからか歌声が聴こえてきた。
その唄は風のように流れ、しかし強くしなやかに旋律を奏で、美しくもあり、逞しくもあり、それでいて優しかった。
少年が声のする方へと足を進めると、そこには一人のセイレーンがいた。
海と繋がっている小さな湖で、長く金色に輝く髪を洗いながら、彼女は唄う。
海の魔物と言われ、その声を聴いた船乗りたちには不吉なことが起こるとされているが、聴いている限り、そんな感じはしない。
セイレーンが唄い終えるまで、近くの岩に腰を下ろして聴いていた。
数分経った頃、唄い終えたセイレーンがふと顔をあげると、そこに一人の少年を見つけ、慌てて逃げようとする。
「なぜ逃げる」
「!」
声をかけられ、セイレーンは鼻から上だけを水面から出して少年の様子を窺う。
「私はセイレーンよ。近づかないで」
「ふん。随分と偉そうな奴だな。セイレーンだから何だ」
「・・・あなたは誰?何者?」
キッときつく少年の睨みつけるセイレーンに、少年は鼻で笑う。
「貴様に答える必要はない」
「生意気な!!!」
そう言って、セイレーンが少年に襲いかかろうとすると、湖の水もセイレーンの意思を理解しているかのようにして、セイレーンの身体に纏わりつく。
そして少年に向かって、セイレーンは大きく口を開き、その中から二本の巨大な牙をむき出しにする。
だが、少年の眼前でぴたりと止まる。
一方の少年は、目を背けることも、閉じることもなく、ただ余裕そうに座っている。
「なぜ逃げない」
「逃げる必要がどこにある?事実、貴様は俺を襲う事ができなかった」
「・・・あなた、なんの一族?」
人間は勿論だが、闇の存在たちとっても、セイレーンは厄介な存在であった。
厄介なものは沢山いるが、海という場所において、セイレーンたちは常にトップを誇るほど恐れられているものだ。
美しさだけに留まらず、スピードも残虐性も、そして群れをなして襲いくるその姿は、海の狩人とも言える。
「貴様、なぜ単独で行動している?」
「ちょっと、こっちの質問には答えない心算?別にいいじゃない。私の勝手でしょ」
「群れでなければ強さを発揮できない種族というのは、実に哀れなものだな。単独で行動していれば、あの愚かで弱く、脆い人間にさえ捕まってしまうだろう」
「なにを!!」
少年に馬鹿にされ、セイレーンは顔を醜くゆがめる。
だが、グッと堪えて口を開く。
「確かに、私達は群れで生活を成してきたわ。けど、数も減ってきて、近頃は近海に住む奴らに捕まり、そのまま食べられてしまう。人間だって・・!!私達の肉を食べれば不老不死になれるだなんて、そんな御伽噺を信じて、あちこちに罠を仕掛けてるの!もう生き残れるわけないじゃない!!!」
「・・・・・・」
古の頃、闇の存在たちが世界を支配していたのだが、子孫を産むに従い、その血が薄れてきたのもまた事実。
海では最強とも言われていたセイレーンたちでさえも、こうして日々、滅びるかもしれないという恐怖概念に囚われているのだ。
「人間が悪いのよ!あいつらさえこの世に産まれてこなければ・・!!私達はもっと幸せになれたはずなのに!!」
人間という種族が存在してからというもの、環境ががらっと一変してしまった。
土くれから出来ただけの人間は、徐々に環境に適応していき、果物や木の実を食べる生活から、肉や魚を食べるようになった。
もちろん、闇の存在たちも、何かを犠牲にしてその命を喰らい、生き延びてきた。
だが、彼らはそれとは違った。
最初は必要な分だけの狩猟が、徐々に贅沢を覚え始め、必要以上に命を奪う様になってきた。
陸の生物、空の生物、そして海の生物。
時には、欲を満たす為だけの殺戮もあったという。
「赦さない!!絶対に赦さない!!」
謙虚に、命あるもの全てと共存をしていたはずの人間だが、徐々に力や知能をつけはじめると、自分たちこそが最も賢く、また頂点にいるべき存在なのだと言い始めた。
武力、権力、金、欲にまみれた人間たちは、弱きものを踏み台にし、上へ行くことだけを考えるようになった。
「確かに、人間とは愚かな生き物だ」
「・・・え?」
少年はどこか一点を見つめて話す。
「弱く脆く、それでいて儚い。故に力を欲した。金を欲した。あんなに広かった地球でさえ、こうも狭く感じるほど、人間で溢れかえってしまった。奴らは時に、残酷なまでに命を弄ぶ。だが半面、生まれてきた命を尊いと思えることもある」
「だからなに・・・?だから、人間を赦せっていうの!?自然の脅威に恐れおののき、全員、一人残らず滅んでしまえばいいのよ!」
怒りも悲しみもおさまらないセイレーンに、少年はため息を吐く。
「生憎、俺は人間といがみ合うほど暇ではない。憎むなら勝手にしてくれ」
「あんた・・・!!さっきから、どっちの味方なのよ!!」
「どっちの味方?おかしな言い方をするな。俺はどちらの味方でもない。強いて言うならば、一応こちらで産まれたのだから、こちら側なのかもしれないが、だからといって人間を襲ったところで、犠牲になるのはこちらも同じ。それに、賢い人間ほど、直接手は出さない。よって、そういう奴ほど生き残る。それで解決できると思うか?甚だ疑問だ。俺は解決できるとは思わない。なぜなら、数が減っているこちらに比べ、数だけで言えば人間の方が遥かに上だ。もしも世界中にいる人間が一斉にここを襲おうものなら、俺達はひとたまりもないかもしれない。いや、俺はそう簡単にはやられないが。しかし、あっさりと人間に捕まってしまう一族もいるかもしれん。貴様等は最悪、海の底へと逃げれば良いかもしれないが、泳げない者はどうなる?陸でしか生きられない者はどうなる?そこまで考えた上で、貴様は人間を恨み、それでもなお人間を滅ぼすために戦いたい、みんなを巻き込んで戦いを挑みたいというなら仕方ない。何があっても逃げないという条件の元、考えてやっても良い。しかし、貴様は所詮海でしか動き回れない。となると、標的にされやすいのは明らかに陸に住まう生物たちだ。それを貴様は命をはって守るのか?守れるのか?そもそもセイレーンという種族は肺呼吸なのかエラ呼吸なのか、実際に見たことはないから分からないが、どちらも出来るとしたら、貴様等は呼吸が出来ない、という苦しみ自体を知らないことになる。人間を海の中に引きずり込み、その苦しみを分からず殺してしまうというのは、あまりに身勝手に思う。していることは人間と同じだ。俺達が何もしなくとも、人間たちにはいずれ制裁が下される。それは大切な人を失くすことであったり、生活に苦しむことであったり、自然災害という脅威にさらされることであったり。人間に罰を下すのは俺たちじゃない。俺達にはそんな権限はないんだ。わかったか」
「結局、あんたも怖いのね」
長々と持論を繰り広げた少年に、セイレーンは苛立ちを覚える。
「巻き込んだりしないわ。私は一人でも人間を殺しに行く!!」
そう言って、セイレーンは湖の中へと姿を消してしまった。
少年は岩から下りて、またどこかへと歩いて行く。
それから数週間が経った頃のこと。
人間たちに近づき、その歌声で不幸をもたらそうとしたセイレーンは、息のないまま発見されたそうだ。
身体には槍や網が絡まっており、何があったかは推測でも充分だった。
一昔前の人間であれば、セイレーンの歌声を聴けば、すぐに逃げ出したのかもしれないが、今は違うのだ。
セイレーンを捕まえてその肉を食べる。
歌声が聴こえてきた途端、人間たちは辺りを見回して網を仕掛ける。
その網に絡まってしまったセイレーンは、それでも必死に逃げようと身体を捩り、暴れるも、止めと言わんばかりに槍が降ってきた。
まだ意識があったのか、セイレーンは引き上げられ、網が解けたのを見計らい、海へと逃げ出した。
息も絶え絶えに、なんとか仲間のいる場所まで泳いできたそうだ。
「なんて馬鹿なことを・・!」
「放っておけば、人間なんてすぐに死ぬというのに!!」
そのセイレーンの身体は、石の棺に入れられ、海のもっと奥深く、決して人間が手出し出来ない場所まで沈んだ。
それをただ、少年は遠巻きから見ていた。
「どうかしたのか」
「いえ、なんでもありません」
「可哀そうに。しかし、これでみな分かっただろう。考えもなしに人間には敵わないと」
「ええ、そうですね」
少年は、父親と思わしきその人影と共に、じめじめした森の中を去って行った。
「・・・嫌な夢を見たな」
目をぱっちりと開けると、シャルルは身体を起こして欠伸をする。
―なにやら、うなされていたぞ。
「ああ、俺に面倒をかける奴らがあまりに多くてな。困ったものだ」
真っ白な部屋の中、シャルルと月桂樹は二人だけの空間で、特に何もすることがない。
鏡の外でも、こうしてのんびりと過ごしていたが、それとはわけが違う。
何も無いどころの話ではなく、ここから一生出られないかもしれないとなると、シャルルも考えるところがあった。
「お前はどうしてここにいる?あの女が埋めたのか?」
―私は、シャトーが生まれたのと同時に、この場所に生命を与えられたのです。
「特別主従関係があるわけでもなさそうだな。いつもあいつは何をしているんだ?何もないこんな場所で、毎日暇しているだろう」
そんなシャルルの言葉を聞いて、月桂樹はクスクスと笑った。
―友人、のようなものです。
「友人か。こんな場所でそんなに立派に育っても、それを見ているのがただ一人の友人だけとなると、寂しいものだな」
―寂しくはありません。
シャトーが無から産まれたとき、月桂樹も共に生命の息吹がかけられた。
同じように成長してきて、シャトーも月桂樹も互いだけが信用出来る相手になっている。
実年齢は分からないが、これほど立派な樹に育つくらいなのだから、きっとシャトーは相当な歳だろう。
暑い日もなく、寒い日もないが、シャトーは毎日を月桂樹と過ごしてきた。
しかし、月桂樹は知っていた。
シャトーは、なによりも鏡の外の世界に憧れを抱いていたことを。
「鏡の中にいることは、いつ知った?」
―確か、十年経った頃か。
シャトーはいつものように月桂樹のところにきて、おしゃべりをしていた。
そして昼寝をしたかと思うと、フラフラ何処かへ歩いて行ってしまったのだ。
しばらくしても戻って来ず、心配していた月桂樹だが、翌日になってシャトーが顔を見せたため、安心した。
どうしたのかと聞いてみると、変なものがあると言った。
シャトーから説明を受け、それは鏡であることを教えると、なぜ自分は映らないのか、なぜ向こうの人の世界には物が沢山あるのか、なぜ向こうの人は自分に気付かないのか、なぜ自分はこちらにいるのかと聞いてきた。
それからというもの、毎日のように鏡に向かい、向こう側にいる人の行動を観察した。
あれはなんだ、これはなんだと、知らないことだらけの世界について、色々と月桂樹に聞いてきた。
「なぜお前は知っていた?」
―私にも分からない。しかし、ここに命が置かれたときから、外の世界のことも、ここが鏡の中であることも知っていた。
ただただ、毎日退屈していたシャトーは、そのうち知ることになる。
自分の気持ちのコントロールによって、鏡の向こう側の人間をこちらに連れて来られることや、自分がその人の代わりに外へ出られることを。
だが、今まで成功したことは一度もない。
理由は分からないが、相手の魔力が弱かったからかもしれないし、ここでの環境に耐えられなくなったからかもしれない。
「ヤワな奴らがいたもんだ」
そんなシャルルの言葉に、また笑った。
―シャトーは、鏡の外と中とを繋ぐ架け橋。もしここから出たいと強く願うのであれば、まずは魔境を探すことだ。
「魔境か。・・・心当たりはある」
―心当たり?
シャルルの名を受け継ぐ際に、それも一緒に持っていくようにと言われたが、正直言って邪魔だからいらないと思っていた。
だが、いずれ役に立つかもしれないと言われ、渋々受け取ったのを覚えている。
幅もあって高さもあり、何処に置いてよいかも分からずにしばらく放置しておいたら、ヴェアルがやってきて「適当に飾っておけ」と言った記憶がある。
魔境だという確証はないが、可能性は高い。
何せ、シャルルの先祖たちは、本当にただのお飾りで物を買う、ということはほとんどなかったからだ。
無駄に大きいシャンデリアでさえ、何か意味があると聞いたことがある。
あまり真面目に聞いていなかったから、よく覚えてはいないが。
シャルル自身は、ソレを一度も磨いたことがないが、時々、やはりヴェアルが埃がついているのを気にして拭いていた。
―ならば、強く願うだけ。
「居心地は悪くないがな。さすがにもうあきた。俺にはこの世界は向いていないようだ」
すっと立ち上がり、シャルルは月桂樹に背を向けた。
―達者でな。
「・・・お前もな」
樹に感情などあるのか、それは知らないが、月桂樹の口にした言葉が、シャルルには別れを惜しむソレに聞こえた。
確か、適当に散歩をしているとき、見覚えのある部屋があったような気がする。
「向こうで何もなければいいが」
結構な時間、こちらにいただろう。
ヴェアルやミシェルの心配よりも、まず真っ先にシャルルが心配しているのは、ジキルとハイドのことだ。
「待っていろ。すぐに帰る」
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