第37話 サボるのが正義?!

 喫茶店で集まった後、しず子さん、増子さんと魔法少女の活動を始めた。

 いつも通り増子さん、しず子さんが困っている人達を助けている。

 敵が出てこないので燐火りんかちゃんと僕の出番はない。

 でも、出番がないのはプレナも同じだ。

 今日も増子さんに丸投げしてサボっている。


「プレナはなんでサボっているの?」

「俺っちは出来るだけの事をしているさ」

「でも、何もしてないよね。そんなだから増子さんが魔法を使えないままなんだよ」

「魔法なら使えているじゃないか。変身のね」

「プレナが頑張れば、もっと出来るでしょ」

「俺っちは頑張っているさ。そんなに文句があるなら、テプが増子と契約するか?」


 僕が増子さんと契約か。

 燐火りんかちゃんがいるから契約の変更はしたくないんだけどな……


「契約は変更しなくていいから、一日入れ替わったらどうだ? 俺様もプレナのサボりは気に入らないからな」


 オハコが提案した。

 一日入れ替わりか……それは面白そうだな。


「面白そうだね。僕が一日増子さんと一緒に活動するから、オハコは燐火りんかちゃんと一緒に活動するって事で良いかな?」

「別にいいよ。俺っちは活動しないし~」

「真面目にやった方が良いよ」

「テプは分かっていないなぁ。サボるのが正義って時もあるのさ」


 オハコが了解したので、増子さんと燐火りんかちゃんにも話をした。

 二人も面白がって了解してくれたので、魔法少女の活動が終わった後に増子さんの家についていった。

 そして、増子さんが用意してくれた枕の上で眠った。

 明日が楽しみだなぁ……


「おはようテプちゃん!」


 急に体を揺さぶられて目が覚めた。

 う~ん、眠いなぁ。

 時計を見るとまだ5時だった。


「増子さん、おはようございます。こんな早朝にどうしたんですか?」

「走りに行くよ」

「走りに?」

「そうだよ。日課のジョギングだ!」


 日課のジョギング?

 増子さんは毎日5時に起きてジョギングしてるのか。

 そんなに朝早く走る必要ないのに……

 僕は増子さんに連れられて走りに行った。

 朝からひと汗かいたなぁ。

 増子さんの部屋に戻った後、休憩しようと思ったら……

 もう増子さんが家を出ようとしている!


「こんどは何処に行くんですか?」

「何処って? 部活だけど」

「増子さんって部活やっていたんですか?」

「やっているよ。非公認だけど」

「非公認? 何の部活をしているんですか?」

「魔法少女部だよ」

「魔法少女部! そんなのが認められるんですか?」

「認められないって。人数も足りないけど、人数集めても認めてくれないみたいなんだ。不思議だよね」

「僕も認められないと思いますよ」

「信じられない! 妖精が魔法少女部を否定した!」

「いや、魔法少女は存在するって分かっているけど、部活としては認められないと思うけど」

「解せぬ……魔法少女は世の中の為になるのにな! ボランティアは認められるのに、それが魔法少女になっただけで理解されないのは何でだろうな?」

「魔法少女は存在しないと思われているからだと思うよ。ところで魔法少女部として何をするの?」

「おっと、いけない! 話していたら遅刻するところだった。今日はバスケ部の練習のメンバーが集まらないから助っ人として参加予定だ! 行くぞテプちゃん!」


 僕は増子さんと一緒に

 そう、朝走ったばかりなのに何故かまた走っている。

 何でそんなに走る必要があるんだろう?

 僕は必死に増子さんの後を追いかけた。

 学校について直ぐ、増子さんは体育館でバスケ部の練習に参加した。

 僕はバスケをやらないので休憩する事にした。

 今の内に休んでおこう!

 バスケ部の練習が終わったので、帰ろうとしたがーー


「走れテプちゃん!」

「えっ、今度は何処へ行くの?」


 また増子さんに走らされた。

 今度は何処まで走るのだろう……

 もう理由を聞く気力はない。

 黙って走ると、増子さんが何かのお店の前の行列に並んだ。

 やっと止まった。

 これは何の行列だろう?

 順番を待っていると、増子さんが焼きそばパンを二つ購入した。

 あぁ、お昼ご飯を買いに来たのね。

 僕は増子さんと一緒に公園にまで走った。


「無事に買えて良かったよ。あの店人気なんだよね。さぁ、これはテプちゃんの分だ。テプちゃんは焼きそばパンを食べるって燐火りんかちゃんに聞いていたからな!」


 増子さんがビニールを引いた後、焼きそばパンを食べやすいようにおいてくれた。

 僕は黙って焼きそばパンを食べた。

 眠くて疲れたけど、焼きそばパンをくれたのは嬉しいな。


「テプちゃん、10分で食べ終わってくれ」

「10分! 何で?!」

「次は勉強会があるからさ」


 折角の焼きそばパンなのにぃ!

 僕は慌てて焼きそばパンを食べきった。

 どうしよう、お腹いっぱいだ。

 これでは走れない。


「さぁ、テプちゃん。次行こうか?」


 やっぱり僕は走らされた。

 キツイ、キツイよ……

 増子さんが同級生と集まって勉強会を始めた。

 今の内に体力を回復させないと、次に何かあったら倒れてしまう。

 2時間後……再び走っている。

 今度は海岸でゴミ拾いのボランティアに参加するのだ。

 海岸についた後、僕も必死にゴミ拾いを手伝った。

 もう駄目だ……力が出ない……

 ゴミ拾いのボランティアが終わった後、町中で困っている人を探す事になったが、殆ど意識が無かった。

 そこで僕は魔法力が出せない事に気付いた。

 増子さんの手伝いをしようと思ったのに、僕は全く役に立てていない。

 夏休み中なのに生活がハード過ぎて、サボらないと毎日は耐えられないと思う。

 怠け者のプレナを馬鹿にしていたけど、サボり癖がある彼だから増子さんと一緒にいられたんだろうね。

 体験するまで気づかなかったけど、増子さんとプレナの相性は良かったんだろうね。

 僕は一日でギブアップして、燐火りんかちゃんの元に帰る事にした。

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