第32話 昆虫バトル!!

 昨日のネクロマンサー死霊使いとの戦いは大変だったな……僕達は何もしてないけど。

 魔法少女として今日も町の平和守りたいけど……今日はお休みだ!

 今日は同級生達と昆虫採集する為に山に来ているのだ。

 いつもの健斗君と翔太君も一緒にいる。

 ゲーム好きで昆虫採集には興味がないのかと思っていたが、凄いやる気を出している。

 カブトムシとクワガタムシのどちらが強いかで白熱した議論を交わしているのだ。

 夜行性のカブトムシを捕まえる為に朝の5時に集まったのに、テンション高くて元気だなぁ。

 僕は昆虫を捕まえられないので、みんなが捕まえるのをながめていた。

 みんなが次々に『』以外の大きい昆虫を選んで捕まえている。

 やっぱりカブトムシやクワガタムシは大きい方が良いよね!


「モスッ! 何故無視するモスか?」


 に話しかけられた。

 あっ、無視してるのバレちゃった。

 僕は木に張り付いていた大きなの事を知っている。

 四天王の一人、猛毒のモスデスラだ。


「たぶん昆虫じゃなくて、のコスプレしたオッサンが木に張り付いていると思われているからですよ」

「どうしたらそういう発想になるモスか?! 人間はのコスプレなんてしないモスよ!!」


 僕は理由を言えなかった。

 ちょうのコスプレをしたような人物が町の中心にいて、みんなが見慣れているからだと言う事を……


「あれっ、モスデスラだ!」

「ホントだ! 擬態ぎたいしてたから分からなかったぜ!」

「いたなら声をかけて下さいよ。デスモスラさん。僕達知り合いじゃないですか」


 燐火りんかちゃん達もデスモスラの存在に気付いたようだ。

 同伴の大人たちは目を反らしていたのに、みんなは気付いていなかったんだね……


「来たな魔法少女! 私の軍門に下り、賢者の石を渡してくれたならーー」


 その話のくだり!

 世界の半分でも渡すと言うのか?


「ーーヘラクレスオオカブトを渡すモスよ」


 ヘラクレスオオカブトか~い!

 ヘラクレスオオカブトも凄いけどさ、賢者の石とは釣り合わないよね?

 カブトムシ派の健斗君はうらやましがっているが、燐火りんかちゃんは興味ないようだ。


「やだっ」

「それなら、力づくモス!!」


 モスデスラが羽を広げて切り株の前に降り立った。

 デデデデデ、デロデロ、デデデ~ン!

 背後に木々の間から演奏が聞こえたので振り返ったら、バルンシーが分身して演奏していた。

 バルンシー……君の存在価値は四天王戦の音楽を奏でる為だったんだね……

 おっと、いけない。

 健斗君と翔太君を戦に巻き込まない様にしないと。


「健斗君、翔太君! モスデスラと戦うから逃げて!」

「もう遅いモス逃がさないモスよ!」

「なんだか熱い展開だな! 燃えてきたぜ!」

「戦いですか? どうやって戦うのですか?」


 健斗君と翔太君は命の危機に気付いていない。

 相手は最弱のバルンシーより強いのだ。

 しかも猛毒の名が示す様に、猛毒の鱗粉りんぷんで攻撃してくるかもしれない。

 癒しの水が使えるしず子さん不在の状況で毒攻撃を受ける事は死を意味する。

 それだけは避けなければならない……そう思っていたら、モスデスラが切り株の上に何かを置いた。


「私はバトルフィールド切り株にオオクワガタを招聘しょうへいしたモス。我らの力を思い知るがいいモス!!」


 へっ、昆虫バトル?

 戦うってそういう事?

 しかも招聘しょうへいって何?

 四天王なんだから召喚とか、もっとカッコイイ言い方しようよ!


「いけっ、俺のヤマトカブトムシ!」


 健斗君がヤマトカブトムシをバトルフィールド切り株に置いた。

 激しく激突するオオクワガタとヤマトカブトムシ。

 最初は互角に見えたが、オオクワガタがハサミでヤマトカブトムシを弾き飛ばした。


「大丈夫か! 俺のヤマトカブトムシ!」

「次は誰モスか?」

「次は僕だ! 自宅から持ってきたスマトラオオヒラタクワガタだ! 最強のクワガタに勝てるかな?」


 翔太君がスマトラオオヒラタクワガタを解き放った。

 チートキャラ持ち込むなあああああっ!

 昆虫採集の意味が無くなるでしょ!

 がっちり組み合った二匹のクワガタであったが、やはり翔太君が持ち込んだスマトラオオヒラタクワガタの方が強かったようだ。

 モスデスラのオオクワガタをバトルフィールド切り株外にはじき出した。


「モモモ、モスッ! まだモスよ! 第二形態モスッ!!」


 モスデスラの羽根が黄金に輝き、羽根に目の様な模様が浮かび上がった。

 圧倒的な強さを感じさせる恐ろしい姿であったが、不思議な事に恐怖は感じなかった。

 だって、昆虫バトルなんだもん。

 ドドドド、デデデデ、デュデデュデ、ドゥドゥドー

 バルンシーが演奏している曲が突然変わった。

 第二形態用の曲も用意してたんだね。

 豪華な昆虫バトルだなぁ……


「ヘラクレスオオカブトを招聘しょうへいしたモス。私の最強カブトムシに勝てるモスかな?」


 モスデスラが次に呼び出したのはヘラクレスオオカブトだった。


「こっちだって、僕の最強のクワガタだ! 行けスマトラオオヒラタクワガタ!」


 翔太君の激励を受けてスマトラオオヒラタクワガタが突撃したが、ヘラクレスオオカブトはビクともしなかった。


「何故だ! 頑張れスマトラオオヒラタクワガタ!」

「無駄モスよ! 第一形態での戦闘で消耗してるモス。最強同士なら、万全な方勝つモスよ!」


 ヘラクレスオオカブトがスマトラオオヒラタクワガタを投げ飛ばした。


「立て! 僕のスマトラオオヒラタクワガタ!」

「無駄モス! 止めを刺すモス!!」

「そこまでだよ。行け! ジャイアントドラゴンフライ!」


 燐火りんかちゃんが虫かごからトンボを解き放った。


燐火りんかちゃーん! カッコよく言ってるけど、ただのオニヤンマだよね?」

「ふっ、テプちゃんはジャイアントドラゴンフライの恐ろしさを知らないんだね。時速70kmを越える飛行能力と強靭なあごを! スズメバチとだって戦えるんだよ!!」


 そうなんだ~。

 でも投げ飛ばせないから、ヘラクレスオオカブトとの対決では役に立たなそうだけど……

 動きが速いから時間稼ぎにはなるのかな?

 あつ、本当に時間稼ぎ出来た!

 最初にひっくり返された健斗君のヤマトカブトムシが起き上がっている!!


「よく立ちあがった! 後は俺に任せろ! フォーティーシックスキャノン!!」


 健斗君が両手を突き出すと同時に突撃したヤマトカブトムシの角が、ヘラクレスオオカブトの脇腹に当たってバトルフィールド切り株からはじき出した。


「俺達の勝利だ!」

「その様ですね」

「わたしのジャイアントドラゴンフライが最強だよ!」

「モモモスッ! フォーティーシックスキャノンか……戦艦ヤマトの主砲の様な威力だったモス。私の負けモス! 悔しいモスっ!!」


 モスデスラが泣きながら飛び立った。


「また遊ぼうなデスモスラ!」

「次は僕一人で勝利しますよ!」

「第二形態カッコ良かったよー! またね!」

「良く分からないけど、お元気で!」


 モスデスラが見えなくなった後、戦いを終えた昆虫達にバナナで作ったエサをあげた。

 そして持ち帰らずに山に返す事にした。

 家に持ち帰っても、他にもやりたいことが沢山あって、毎日遊んであげられないからね。

 今日は一緒に戦ってくれてありがとう!!

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