第6話

「そうか...」


 ライラの堂々とした宣言にミハエルは頭を振り、可哀想なものを見るような目をライラに向けた。


「あ、あの~...」


 その時、今度はファリスが遠慮がちに手を挙げた。


「なんだ?」


「先程、普通の日常生活を送るようにっておっしゃってましたけど~ 今のこの状況が既に普通じゃない訳じゃないですか~? これから三ヶ月もの間~ 私達はなにをどうやって過ごせばいいんでしょう~?」


「あぁ、そう思うのも無理はない。安心してくれ。君達の時間を無為に過ごさせないための、幾つかのカリキュラムを用意している。まず一つ目、貴族令嬢としての嗜みとして習い事をしている者も居るだろう。そういった者達のためにバイオリンやピアノなど演奏関係の講師を用意してある。全て一流どころを揃えたから期待して欲しい。また、絵画や刺繍などを嗜む者も居るだろう。そちらの講師も充実させている。芸術面では不満は出ないはずだ。そして二つ目、これは希望者のみとするが、王家や王国の歴史を学ぶ機会も設けている。希望者のみと言ったが、これから王族の仲間入りを果たす君達は知っておいた方が良いだろう。それと一人を除いて君達には必要無いと思うが、王族としてのマナーを学ぶ機会も設けている」


 ミハエルはそこで一旦言葉を切り、ライラをジッと見詰めた。


「え~と...なんでそこで私を見るんでしょうか...」


「王族のマナーと言っても、一般貴族のそれと大差は無い。だから一人を除いて必要無いと言ったんだ。だがライラ嬢、君だけは必須としよう。貴族としての立ち居振舞いを学ぶ良い機会になることだろう」


「え~...」


 ライラは唇を尖らせた。


「え~ じゃない。異論は認めん」


 だがミハエルは鰾膠も無い。


「権力横暴! 独裁国家! 諸行無常! 焼肉定食!」


「なんだそりゃ...四文字熟語を並べりゃいいってもんじゃないんだぞ...」


 ミハエルは呆れ顔でそう言った。そして改めて全員を見渡して、


「他になにか質問はあるか?」


「あの、お茶会を開く順番って決まっているんですか?」


 次にレイチェルが手を挙げた。


「最後の一人を除いて決まっていない。これから決める。決まったらすぐ君達に知らせる。こちらとしては、お茶会を開く順番による不公平は無いように努めるから安心して待っていて欲しい」


「なるほど...分かりました」


「他になにかあるか?」


 全員が沈黙したのを見てミハエルは一つ頷いた後、


「ではこれより約三ヶ月間よろしく頼む。難しいとは思うがせいぜい仲良くやって行こう」


 そう言って場を締めた。


 

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