4話 白木荘管理人 七草 虹 編
「蒼、さっき事務所の黒石社長から電話あったの。堀超学院の専用アパートの『白木荘』で暮らしなさいって。寮費だけでなくて学費も免除の特待生扱いだって言われたの」
「あ、そうだった。今日、そんな話があったんだった」
「蒼にも直接話があったのね、寮生活よりママと一緒がいいなら無理してそこに行かなくてもいいんだよ」
これはママの優しさだ。我が家の経済事情が逼迫しているのは知っている。本当は学費も寮費も免除ならその方が僕たち家族にとっては楽になるに決まっている。
「行くよ。その方が学校にも近いし、お金も浮くしね」
「お金は気にしなくていいから。蒼がしたい方を選んで」
「大丈夫。行ってくるよ。最近、僕も稼げるようになってきたし、白木荘って言えばこの世界では有名だしね。もっと稼げるようになってママを楽にしてあげるよ」
「蒼......ありがとね、ほんとうに優しい子」
さっそく次の日から白木荘での寮生活が始まった。
▽▼▽
(うわ、ボロい。昭和感満載の外観だ)
白木荘は木造アパート2階建てだ。
共同玄関、共同風呂、共同トイレだ。
ガラガラガラ
玄関の扉を開けるとそこはホールになっていた。女性が2人、座って話し込んでいた真っ最中だった。
「あ、いらっしゃーい。真珠さんが言ってた入居者の子かな?佐伯 蒼くん?」
声を掛けてきたのは22,23才くらいのエプロンをつけた背の高い綺麗な女性だ。セミロングの髪の毛が虹色に輝いて見える。
「はい、佐伯です。今日からお世話になる者です」
「佐伯くん、同じクラスの白木 緋です。よろしくお願いします」
なんともう1人の女性は生徒会長の白木 緋さんだった。
(なんでおばあちゃんはこんなパッとしない男の子をここに入れたんだろう。どうせなら昨日の王子様がよかったのに)
「え?生徒会長がなんでここに?」
「うん、わたしもこの白木荘の住人だからね。
佐伯くんはわたしの隣の部屋。よろしくね。
こちらは七草 虹(ななくさ にじ)さん、ここの管理人さんです」
(ええ!?生徒会長と同じ屋根の下でそれも隣の部屋!?紫尊くんにバレたらヤバイ!この前、緋さんと同居なんて絶対してないって啖呵を切ってしまったのに)
「佐伯くん、虹で〜す。よろしくね。わからないことあったらなんでも聞いてね。イケメン君が来たらドキドキしちゃって仕事にならないな〜なんて緋ちゃんに言ってたの。でも緋ちゃんの言ってた通りの人物でよかったわ。いや、よくないのかそれは?」
(この管理人はさらっと僕のことディスってるよね。白木さんもディスってたってことだよね。まあ、でもこの管理人さんはなんとなく悪そうな人では無さそうな気がする)
「はい、僕はイケメン君じゃないので放置でお願いします。その方が僕も助かります」
「あら、自虐的ね。でも自分のことを理解してる素直な子は好きよ。じゃあ、白木荘の使い方を紹介しながらお部屋を案内するね」
七草さんは立ち上がりながら綺麗な色の髪の毛をポニーテールに結び直した。
明るい健康的な大人の女性って感じだ。
僕の部屋は202号室だった。白木荘は全部で10部屋だ。全て6畳一間。なぜか説明を受けている間も白木 緋さんが付いてくる。
「緋ちゃん、説明は私がしておくから部屋に戻っていいよ?」
「....... でもここで一緒に住む男の人なのでよく見ておきたくて。この白木荘って女の子ばかりですし」
白木 緋さんは佐伯 蒼のことが気になって仕方なかった。清廉潔白、大の男嫌いの緋にとっては同居する男の属性が気になるのだ。
(え?女しかいないの。最悪だ。女は苦手だ。まあ、男もだけど)
「じゃあ、説明は終わりね、何かあったら日中はお姉さんを頼ってね。私のいない時は緋ちゃんに相談してね。ほんの少ししか話してないけど佐伯くんは絶対にここの女の子に手を出さなそうだし、女の子も好きにならなそうだから安心しました」
(おいおい、この人はさらっと酷いこと言うよな。まあ、そう思われてるならそれに越したことないけど)
「私も安心しました。彼ならここでの共同生活で変なことは起こらなそうなので」
(僕としてのキャラ設定は完璧ってことだ。ディスられているのは演技のおかげにしておこう)
「はい、ぜひ関わらないで生活しましょう」
僕にとっての都合のいい状況に少しニヤけてしまう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あとがき
次は 白木 桃ちゃんが登場します。
そしてそのあとは恋愛ブルドーザー七瀬 翠ちゃんです。
お楽しみに♪
どなたかお優しい方、
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