駄鳥転生
ぉぉぉぉぉぉゃ
第1話
「(貴様は姑息でずる賢く、軽犯罪を繰り返すような生涯だった。だが、何故か第334世界の神はそんな魂を求めているらしい)」
ん、ここって天国ってやつ?目を瞑ってもないのに真っ暗で何も見えねえ。俺って死んだのか?身体動かねぇし。
「(今、第334世界はその世界の神が自ら創り出した邪神という分身体によって、世界が破滅しそうになっている)」
どんな最期だったかなぁ。覗きして、逃げてる最中に自転車に轢かれたんだったか?いや、すんでで避けて、落ちてた小石ぶつけてやったんだ。
「(貴様はその世界に転生し、邪神を討伐する勇者となるのだ)」
そうだ、近くに落ちた雷を見てショック死したんだ。クッソ、こんな死に方するんなら、もっと親孝行でもすれば良かった。最後にしたのはブランドバッグの模造品のプレゼントか。
「(貴様とは話すのも疲れた!さっさと送ってやろう!)」
声の主がいきなり声を荒げると、俺の身体が引っ張られる。これって転生ってやつ?それとも記憶消されんのかな。
意識が薄くなっていく。あぁ~、眠い。ところで、こいつ最初っから最後まで何言ってんのか分かんなかったな。
神はギリシャ語だった。
「ふわ~あ、ここは?身体がある。さっきのは夢か?」
「夢じゃないよ。おはよう」
目の前には男とも女とも見分けられないような見た目の、高校生くらいの年の人間が雲の上に立っていた。ってか、ここ雲の上か!
「神に性別は無いよ。試してみるかい?」
「お願いします」
自称神がベルトを外し、チャックを下ろし、ジーンズを脱ぐと、そこには凹も凸も見当たらなかった。
「パンツくらい穿けよ」
「普段見せないんだから良いの」
「で、俺は何をすれば良いんだ?ここでお前の話し相手か?神ってのは寿命が無いんだろ?何百年、何千年もそんなことしたくないんだが」
「君は下半身丸出しにしといて反応無しかい」
「下半身丸出しにしといて恥じらいが無い奴に言われたくないな」
「イヤン、エッチー」
恥ずかしがるからこそ苛めがいがあるんだ。ところで本当にただの話し相手なのか?
「向こうの神から説明が有ったと思うけど、君には所謂異世界転生というのをしてもらうよ。この世界に・・・・・・・・・って感じだよ。」
有ったか無かったかで言ったら有ったのか?あれはそもそも地球の言語なのか?
てか、異世界転生かー。本当に有るんだな。
「君は欲しい能力はあるかい?」
「そうだなー、まずは目だな。生まれつき目が悪かったから目が良くなりたい。眼鏡もコンタクトもデメリットがあるし」
「他には?」
「足の速さと体力だな。これは前世で役に立ったから引き継ぎたい」
「はい、じゃんじゃん」
「魔法は一人一属性だったか。それも選べるのか?」
「もちろんっ。火水風土闇光この中からね」
火は使い所が限られそうだし、土や水は後が残りそうだ。闇や光は単純な攻撃性能が低そうだな。
「風で」
「はい、どんどん」
冷静に考えたら、日本じゃないんだ。無事に産まれなきゃ意味がない。新生児死亡率が低いとは限らないことも考慮しないといけないのか。
「自然回復力と免疫力。まあ、自然回復力と言っても常識の範囲内で。どっかの緑の人くらい再生速いとグロいし」
「これで終わり?あんまりチートしてないけど?数だけ盛っても、こんな人普通に居るよねって感じだけど」
「そんなこと言われてもな」
「戦闘スタイルは?剣士なら、聖剣どっかの大地に突き刺して後でその場所に導いたり、一度見ただけで流派を真似できるようにしたり出来るよ」
厨二時代、想像してきた戦闘スタイルの数々が頭をよぎる。型を自由に選べるMMORPGではタンクヒーラーや回避爆弾魔などで遊んでいたが、自分がやるとなるとイロモノが過ぎる気がする。自分がなるならシンプルに行きたい。
「ナイフ…いやっ、格闘家だな」
「その理由は?」
「好きだったんだよ、スト◯ァイ」
「純粋なパンチ力、キック力の強化だね。…地味だね」
うるせぇな。こんな雲しか無い場所にずっといる奴なんかに、オタクの国·日本からやって来た男のロマンなんて分からねえよ。
「後は…、そうだな、産まれる環境の設定って出来るか?」
「多少はね」
「約二年間、何も出来ずにはいはいしか出来ないのもなんだし、生まれたてでもある程度行動できる能力と、少し赤ん坊っぽくないことをしても怪しまれないバカな親や家族が良いな」
「結構保険かけるんだね。やーい、びびり~。ざあこざあこ」
「そりゃあ、初めての異世界転生だしな。てか、何回もしたことある奴はいるのか?」
「はははっ、僕の世界にはいないかな。君が僕の世界への初めての転生さ」
「要求通りの万能人間になれるんだな。まだ実感湧かねぇわ。で、言った通りの器は出来そうか?」
自称神は「あぁ~、うん。行けそう」と、パソコンに数時間連続でにらめっこしているクリエイターみたいなテンションで返された。
「眠い。やっぱりこの脱力感は慣れないな」
目を完全に閉じると、不出来な指パッチンの音が聞こえた。
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