第46話 牡丹の花園

 俺は吸血鬼のチャールズを倒した後、戦いで負った傷により倒れた。次に目が覚めたときにはベッドで寝ていた。コーデリアと同じベッドで。


「わっ。これはやばい。浮気になってしまうかもしれない」

「あっ。友助。起きてたんだ。昨日はありがとう」

「げっ。起きてたのか」


 ベッドの中で重ねられる会話。傷は魔法で治してくれたのか癒えている。コーデリアの銀髪が俺の体に当たっている。お互い服は着ていたが、この状況は千尋や瑠璃に見られたら浮気だと思われてしまうだろう。


「起きてちゃ悪い?心配したんだから」

「悪い。でも何で同じベッドで寝てるんだ。俺は恋人がいるんだぞ」

「じゃあその恋人は誰か教えてくれる?未来の人?」

「......2人いるんだ。同級生と......妹と」

「2人もいるなら私も加えてもらってもいい?いいでしょ」

「はあ、俺はお前のことは嫌いじゃないけどよ。こういうことはもっとお互いを知ってからにしないか?」

「そんなことしてたら手遅れになるかもしれないじゃない。だから私は積極的に攻める」

「手遅れって......どういうこと?」

「魔法が解けて元の世界に戻っちゃうかもしれないのよ。この手の魔法には期限があるかもしれないのよ」

「俺はその時に戻れるかもしれないってこと......コーデリアはそうだったらどうするんだ。俺はお前が俺の血を吸うのは全然構わないけど」

「動物の血で我慢することにする。貴重な一日かもしれないんだから一緒にどこか行こう。思い出作りがしたいんだ」

「分かった。お前を彼女として今は受け入れるよ。先が短いかもしれないし」


 こうして俺等はベッドを抜け出して、俺が好かれた理由を考えたが、どうしてかと思った。


「なあ、なんでコーデリアは俺を好きになったんだ」

「吸血鬼であることを受け入れてくれたし、助けてもらったし、いろいろしてもらってるからかも。この気持ちの理由なんてわからないよ」


 恋というのは分からないものだ。俺も千尋を好きになった理由は分からないし、瑠璃とも恋愛感情は意識するようになってからは感じていたが、一緒にいた時間が長いからなのかもしれないし、そうでないかもしれない。俺はこれが浮気ではないことを自分に言い聞かせながらデートの準備を始めた。


「コーデリアはどこに行きたい?というかここの地理は一切分からないんだが」

「牡丹の花の花畑があるの。そこに行きましょ」


 季節は春。俺が前にいた場所での時系列は秋になりかけだったが、心地よい太陽の光が出かけるにはもってこいの日和だった。

 そうして、俺達は牡丹の花が咲く花畑で二人で過ごした。


「友助。これからもいれる日だけでもいいからそばにいてね」

「ああ、この時間を大事にするよ。君にとっては次に会えるとしたら500年後だからな」

「それなんだけど。これを預かってて」


 コーデリアから紫色のリボンを渡される。


「500年後に会ったら返してね」

「分かった。仮に魔法が解けて元の世界に戻ったら必ず返すよ」


 牡丹の花園で二人の約束は交わされる。鳥のさえずりと花の揺らめきが2人を祝福しているようだった。

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