1.理解さんが置いてけぼり

 んあっ、寝落ちしてた!


 あれ?

 ここどこ?

 めちゃくちゃ狭いんだけど。

 さっきまで自分の部屋でゲームしてたはずだよね?

 それがなんでこんな身体折り畳んでギリギリみたいな所にいるの?


 えーと、うーん?

 待って。

 落ち着け私。

 そうだ、とりあえず状況を整理しよう。


 まず私はさっきまで自分の部屋でゲームをしてた。

 明日休みだしオール余裕ですわーとか思ってたら頭痛が酷くなってきたんだ。


 そうそう。

 まあ無視してゲームしてたんだけど。

 そんでどうやら寝落ちして、今に至ると。


 うん。全然わからんね。


 何をどうすればゲームしてる状態から箱みたいなのに詰め込まれるの?


 誘拐?

 いやいや、普通のサラリーマンのちょっと普通じゃないコミュ障一人娘攫ってどうすんのって話だ。

 身代金?

 無駄無駄。

 うちの親じゃ100万もくれないでしょ。

 あの人たちは家族というより同じ家に住んでる他人みたいな感じだし。

 もしかしたら外聞が悪いからお金は払うかもしれないけど、まあ望み薄。

 こんな底辺女子高生になにかする異常性癖持ちがいるとは思えないし…女子高生って単語に反応するタイプ?

 ちょっとお断りしたい。


 さて冗談はこれくらいにして、そろそろ真面目に脱出を考えよう。

 この部屋?箱?のようなものは壁が緩やかに弧を描いている。

 まあそれは関係ないとして、こう狭いとドアがあるのか?なんて考えるだけ無駄。

 あるとしたらドアノブなり何なりがめり込んで痛いはず。

 そうなれば、答えは一つ。


 割るっきゃないね。


 別に破壊大好きってわけじゃないよー?

 ホントホントやむを得ずそうしなきゃないだけで。

 感触的にそこまで厚くないしイケるイケる。

 行けなかったら一生このままだね。


 …冗談抜きでそうなる可能性もあるよね。

 割れるかな?

 ちょっと不安になってきたぞ。

 石かなんか落ちてないかな?

 なわけないねー。


 よーし行くぞー!

 うがぁー!


 バッキーン!

 やったどー!

 思いっきり頭突きしたら結果簡単に割れた。


 うん?

 なんで頭突きかって?

 1番自由に動いたのがそこだったんだよ。


 あとは手で押すように穴を広げて外に出た。

 洞窟…だね。

 あたり一面灰色の壁に囲まれていた。

 あ、けど正面からは光が差してるし洞穴って言った方がいいかな?

 そんなに深くはないみたい。


 で、なんで私こんな所にいるの?

 箱詰め誘拐して洞穴に放置?

 何考えてるのかわからん。却下。


 …ん?

 あの、今足元の箱の残骸が目に入ったんだけどさ。

 これただの箱じゃなくない?

 ていうか卵っぽい。

 サイズは桁違いだけど。


 まあそりゃね。

 私が入ってたんだしね。

 大きいよね。

 でもなんで私が卵に入ってたんだ。


 待って。

 ちょっと待って。

 私、卵に入ってたんだよね?

 そんで、今感覚的に二足歩行してる気がしないのよ。

 どちらかと言うと四足。

 しかも特に不自由なく、そうするのが当たり前みたいな感覚。


 よーし、心の準備はいいか?私はできてる。

 そうだな、まずは手を確認しよう。

 私が人間なら、五本の指と先端に丸い爪があるはず。

 よし、来い!


 四本の指と、引っ掻くのに良さそうな尖った爪!

 しかも指が短くてとても歩きやすそう。

 これ間違いなく人の手じゃないわ。

 例えるならコモドドラゴン。

 あの鱗を白くしたらまさにこんな感じ。


 ああ私はコドモドラゴンってか?

 はっはっは!

 笑えねー。


 うん、何となくそんな気はしてた。

 だって意識ないうちに卵に詰められて洞穴の中で放置されるってまともな事じゃないしね。

 現実的じゃないとか現実的だとかそういうことは置いておいて、認めなければならない。


 私は、ドラゴンに転生したらしい。

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