第8話 面倒事がやってきた

けたたましく玄関扉を叩いていたのは名目上の夫だ。

いつから叩いているのかは知らないけど扉を破壊しようとしているが結界のお陰で扉は無傷だ。


「なんの御用でしょうか?」

仕方が無いので声をかけるが、

「いいからこの扉を開けろ!」

「お断りします。今扉を開けたら貴方に何をされるのか分かりませんから。」

扉を開けようとして魔法を打ったりしてたけど効果が無いのでイライラMAXな男に無防備に対面する気なんて無いわ。

「チッ、王家から晩餐会の招待状が届いた。」

「まぁ、それはとても名誉な事ですね。」

国王陛下はもう既に動き出したって事なのね……

「ふざけるな!何故招待状に愛人ではなく本人を必ず連れてくるようにとわざわざ書いてあるんだ!お前がなにかしたんだろう!」

なにもしてませーん!というより私を見張ってる隠密さん達の報告が原因ですよーとは言えないしねー


「ここに居てどうやって国王陛下に子爵家の娘が伝える事が出来るのか教えていただきたいくらいですわね。」

ここからは普通なら出れないし食料を届けてくれたりしているのは子供なのにどうやって誰かと連絡を取ったんだ!にはならないほど残念な思考回路をしてたのね。

それより、こんなクズ男に引っかかった私ってマヌケより酷いかも。


「なっ……」

そもそも伯爵家の一応当主である貴方ですら簡単に会えたり手紙を出せたりしない相手がどうやって伝えたんだ?って疑問の方が先ではないのかな。

「国王陛下がどうしてこの事を知られたのかは私には分かりかねますがバレているのであれば下手に隠さない方が良いとだけ言えますね。」

「クソっ!」

図星だとしてもどうなのかしらねーその態度は隠密さん達見てるんだろーな。

「ともかく私は貴方とは晩餐会には参加するつもりはありません。行くならば別行動でお願いしますわ。」

こんなブチ切れのヤバい男と同じ馬車とか乗りたくないし。

国王陛下からの招待状は余程の事が無ければ参加しない訳にはいかないけど断れるなら断りたい……

父親の爆弾発言聞いてなかったら諦めて行っていたかもだけど今回は行かなくても何とかなりそうだもんね。

「勝手にしろ!行かないと言ったのは貴様だから陛下にはそう伝えるからな!」

そう言い捨てて帰っていったけど……

一緒に行きたくないとは行ったけど行かないとは言ってないのにね。

隠密さんたちが細かく報告してるんだろうし虚偽の報告でワンチャン不敬罪とかならないかな。

そもそも晩餐会に着ていくドレス持ってないのにどうやって連れていくつもりだったんだろう。

仕方がないので今持っているドレスを晩餐会向けに少しアレンジするしかないかな。粗末な素材で笑われても名目上の夫のせいだしね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る