コンピューターグラフィックスの属従
三谷
触発
ペイズリーの総柄シャツが畳敷きの部屋で燃えている、という絵画について二つの情報しか説明してはいけないとき、総柄と畳敷きの二つを選択して伝えるような逆張りの女が野外音楽堂のステージに登場。逆張りの女は継続することの大切さを身をもって伝えると宣言し、ステージ中央に設置してある巨大な金庫の側面を電動ドリルで削りはじめる。その金庫の中に入っている金塊は高卒の平均生涯賃金と同等の価値を持っていることがアナウンスで解説される。それから二時間半もの間、ステージの端に上から見ると十字架の形になるように床に置かれている飲料水も飲まずに女は金庫の壁を削りつづけてそこに人が出入りできるほどの大きさの穴を穿ち、その穴から金庫の中に入るとすぐに出てきて電動ドリルで自分の脳を貫いて死んだ。観客どもは女は金塊を持って出てくるのだとばかり思っていたのでこれを意外に思った。女が意識がなくなる直前まで考えていたことというのは、自分の死をきっかけにして少しでも海温を上昇させたいということだった。女の死を海外の動画サイトで目にした一人の少年はそれに感銘を受け、高校での三年間を勉強にのみ充てて国立大学の法学部に入り首席で卒業。その後政治家になり順調にキャリアを重ねていき、総理大臣になった瞬間に大量の冷凍ピザを一度に食って喉を詰めて自殺した。国民のだれもがなぜ総理になったその男が死んだのか一つも意味がわからなかったので困惑した。死ぬ瞬間、男は自分のアナーキーさに全身が痺れるような興奮を味わった。国民の過半数は反対したが男の国葬が強行され、いきものがかりの「ありがとう」などがBGMとして使われた。
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