第50話『学園都市計画スタート』

 計画の第一歩は、埋め立て予定地の対岸側に運搬用の道を造る所からスタートした。道は、鉱山や山林といった原料の調達箇所からほぼ最短に結ばれ、ジュマの魔法によってあれよあれよと完成した。

 しっかり層を作りアスファルトを敷設するような地球での工事ではなく、ただ運搬に支障のないように固めるだけという、大雑把な工事であれば魔法による施工は驚異的な早さを見せる。

全ての道を一週間で造ってしまったといえばそのスピードがいかに早いかが分かる。


 次に、島の対岸側に窯を作り、炭を焼いた。

再び窯を造り、運び込まれた石灰石と粘土を混合し魔法を併用して焼成し、セメントを作っていく。こういうことは何故かパルパが得意としている。

 加工関係は聞いていたが、付き合いのある業者からそういう知恵を聞かされていたらしい。但し、割合による強度等が分からず、パターン分けして、探っていく。


 その間、エミルは原料調達に加わり、驚異的な攻撃力を用いて伐採や掘削に携わった。

 原料は、縮小されて四輪バギーが牽引する連結型の荷台に積まれ運ばれるのだ。


 ジュマは、交通を阻害している山等を王から聞き、その山の土を丸ごと縮小して運び、埋め立てを行っていった。


 セメントが完成すると、氾濫の多い川に氾濫対策を行いつつ川砂を得て運び、要所に掘られた埋め立て地に支柱を作っていく。

最後に、周囲を順に障壁で海水を廃し、一気に掘って埋めて流して固めていく。


 こうして、半年後埋め立て作業は完成したのだ。防波堤の高さは海面より約20メートル、排水設備も設けられる予定で、災害にも備える事が出来る。


 次に、島の入り口から中心部、および線路敷設ルートが整備された。

パルパの主導によって造られたレールも敷設され、運搬用の列車が運行を開始する。


 各施設の建設は急ピッチで進められたが、工期は予定よりも遅れを出さずにはいられなかった。

 人材も育ち、理不尽の面々は素材の供給にほぼ時間を割けるようになっても、それでも尚、遅れはじわじわと増えていくのだ。


 理不尽の面々がこの世界に来てから8年目を前に完工の予定であった工事は、もう9年目に入ろうとしていた。

 この日、世界各国から要人が集まり、第1期生となる学生や教職員、研究者たちも集まる中、完工式は行われた。


 着工から実に6年が経過していた。


 6年は長い。この間、新たな島の発見があり、エルフ族やドワーフ族との交流ができた。

 これには前段階もあり、小さな島に巣くい海を荒らしていた水竜を、都市計画の資源探しに出ていたボンテがおやつ代わりに補食したことで、ルートが開拓されたのだ。


 身近なところでは、パルパがメイドのルビアと結婚。後に弟子3名とも結婚し計7人の子供が出来た。

 ジュマもまた、ジェムという名前を混同しそうな娘と結ばれ、2人の子供ができた。

 驚くべくはエミルであり、まさかの魔王と婚約。結婚式に招待されてそれを知ったパキラ、ラキアの両王子は、失恋に涙していたのだ。

 やけ酒に付き合わされたパルパとジュマが、両王子がまさかのエミル狙いだったことを知って驚愕したのも良い思い出である。

 尚、魔王には、例の賢者と魔女時代から伝わる対の指輪があり、結婚指輪として命尽きるまで互いに一つずつ持つという。この指輪は、2度と大切な人を失わないようにと、命に危険が迫ったとき、対となる指輪をはめた者のところへ、例えどんな遠くにいても転移する効果がある。

エミルはジュマとパルパに見せながら嬉しそうにまるで女の子のように語ったという。


 ちなみにボンテはヨドと相変わらずの仲良しで、よく夫婦ごっこをしている。



 完成した学園都市はラキシアの東海岸に造られており、理不尽の面々が目を離している期間に、巨大な理不尽の面々の像が建てられていた。北の防波堤を背負ってエミル、東の防波堤を背負ってパルパ、南の防波堤を背負ってジュマ、中央の噴水にはボンテがおり、数々の功績を讃えていた。

 これは、王たちからの感謝を伝えるサプライズだったらしいが

「私の足はもっと細い!」

とエミルからのクレームが入り、後に少し削られたという。


 また、エミル像の胸の谷間でパルパが昼寝をしていたところをエミルに見つかり、蹴り落とされた事から

「胸から落とされる」

という慣用句が生まれた。

意味は、わざわざ要らんことをして痛い報いを受ける事である。


 こうして、学園都市計画は完遂され、早速動き始めたのであった。








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