第49話 終局

 




 〜12月19日 19:01〜




「お前たち、何をしている!?」



 怒鳴り声と共に、数人の男たちが小屋の中に入り込んできた。

 ーーーーーー来たか。



 懐中電灯の光のせいで、視界が一瞬真っ白に染まった。

 定刻通り。

 太一に感謝だな。

 安堵のため息をついたのも束の間、小屋に入ってきた数人のうちの1人が、俺の手に持ったバットを叩き落とし、腕を後ろに締めあげた。


 痛い痛い痛い痛い。



「警察だ! 抵抗するな!!」



 そのまま締めあげられた腕に.....。

 カチャリと






 ***



 日本では逮捕するためには『逮捕状』というものが必要だ。

 犯罪を犯したと充分に疑われる者かいる時、『裁判所』から逮捕状が出され、『逮捕』という流れになる。

 つまりはどれだけ疑わしい者がいたとしても、裁判所がそれを認めなければ逮捕状は発行されない。


 今回の件、つまり陽菜達の犯罪の『揉み消し』はそこで行われていたのだと思う。

 そもそも陽菜の父親が黙認し、警察組織内部はおろか、裁判所にすら情報が行き届いていない可能性がある。

 警察の中に父親の揉み消しに協力している者も、中にはいるのかもしれないが.....。

 現段階では、分からない。




 そこで、俺の計画。




『俺達で別の事件を起こし、その捜査の過程で、陽菜の悪行を公にする』



 、という言い方の方が正しいか。





【俺のガバガバ計画】


 被害者:塚原陽菜+α

 現場:塚原陽菜の家

 ① 俺らの誰かが逮捕される。

 ② その捜査が始まる。

 ③ 捜査の過程で、七海の存在や陽菜の行いがバレる。

 ④ 疑いがそちらに向けられ.....。

 ⑤ 塚原陽菜オワオワリ!



 ファミレスの紙ナプキンにペンでサラサラと計画の全容を書く。

 さて、皆さんの反応は.........??


「いやちょっと待て。この計画だったら誰かが逮捕されることになるのか?」


 明らかに難色を示す太一。

 まぁ、そうなりますよね。


「うん、その予定」


「.........だったら、阿久津じゃね?」


「俺かよ! ふざけんな!! まだ前科はいらん!!!! 佐々木、俺じゃないよな!?」


「いや.........阿久津。キミに決めた」


「ポケ〇ン!?」


「.......冗談。阿久津には別にやってもらうことがあるから、俺が逮捕要員になるよ」


 さすがに他のみんなには、あくまでも手伝ってもらっているだけにすぎない。

 これは俺の復讐。

 いくら幼馴染と言えども、そこまでしてもらう訳にはいかない。


「おいおい、焦ったぜ.....」


 胸を撫で下ろす阿久津。

 まぁ、こいつでも別にいいんだけどね。

 何回も警察にはお世話になっているだろうし。


「でも、佐々木ぃ。逮捕されるって簡単に言うけどどうすんの??」


「おっ、舘坂。俺もそこ気になってた」


「.....? なんの事?」


「だってさ、さっきの佐々木の話だとさぁ、逮捕には『逮捕状』が必要なんでしょ?」


「うん」


「佐々木が確実に『逮捕』される保証はないんじゃないの?」


 まぁ、確かに雅の言うことも最も。

 俺らが犯罪行為をしても、裁判所が犯罪とみなしてくれなきゃ、逮捕状は出ない。

 逮捕状が出ないってことは逮捕されない。

 逮捕されないってことは、捜査は行われない。

 実況見分くらいは行われるかもしれないけど、陽菜たちの悪行を暴くに足るものになるかは分からない。



 つまりは.......。



 俺は『100%』の確率で、逮捕される必要がある。





「雅」


「??」


「日本にはもう1つ、に逮捕される条件があってだな.......」

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