第23話 逆襲の気配
「ってな感じ、かなぁ」
「……恐ろしい」
珍しい。
阿久津が普通に引いていた。
雅のヤバさはお互いに分かりきっているはずだが、改めて聞くとやっぱりヤバい。
だって、直接スマホ覗くとか誰が考えんだよ……。
もう電車とかで寝れねぇ。
……まぁ、それが何よりの信頼に繋がったりはしているのだが……。
「それからは佐々木の指示に従ってぇ、今日にいたる感じ?」
「そういや佐々木、ちょっと前に変なアカウントを舘坂に作らせてたな。何で言ってくれなかったんだ? 俺も拡散に協力できたのに……」
残念そうに顔をしかめる太一。
……参加したかったのか、コイツ。
「別にお前にわざわざ説明しなくても、情報は勝手に流れてくるだろ?」
コイツに説明するだけ、時間の無駄。
1聞いて10を理解するみたいなやつだから、大方自分で集めた情報で俺が何をするか理解していたんじゃないだろうか。
「となると、あの変なアカウントもそうか………」
「そうそう」
「そうだねぇ」
阿久津以外の3人で深くうなずく。
重ねて言おう。阿久津以外の3人で。
「だから、お前らで話を完結させるなっつーの。ここに俺という馬鹿が一匹いるんだから、それなりの説明をしろよ!!!!」
……コイツ、何でそんなに偉そうなんだ?
阿久津が馬鹿なのは今に限った話じゃないが……。
いい加減イライラしてきた。
「だから、あの変なアカウント! 『○○高校あるあるbot』だっけ!? あれなんだよ」
「俺が雅に作らせた」
「佐々木に作らされた」
ピースをしながら答える雅。
「ただの適当なアカウントで拡散させてもよかったんだ。でも、周囲に爆発的に影響を与えるためには、ね」
「阿久津。全く知らない奴が有名になるのと、知っている奴が有名になるの、どっちが興味わく?」
さすが太一。いい例え。
「そりゃ、知っている奴だろ。『あいつが!!?』ってなる」
「佐々木がやったのはそういうことだ」
「ほぅ…………つまり?」
「いいよ、太一。猿の相手は疲れるだろ? あとは俺が説明する」
目の前の猿は両手で中指を立てているが、人は猿よりも賢い。
したがって、猿の行動が理解できないのは仕方がないことなのである!
まぁ、適当に説明してやるか……。
「……ネットの海は広大だ。いろんな情報が腐るほどある。そんなところで3人の情報を暴露してもあまり意味がない。世間はそんなことに関心がない。他におもしろそうな話題はたくさんあるからな?」
「うん、まぁ、そうか」
「そこで俺は、雅に『○○高校あるあるbot』というアカウントを作ってもらった」
「そこまでは大丈夫、理解できる」
「そのアカウントをフォローするのはどんな奴だ?」
「……そりゃ、○○高校の奴だろ? 多分」
「その通り。そんなわけ分からんちょっと面白そうな垢をフォローするのは、絶対○○高校の奴なんだよ」
「これ見ろよ、阿久津」
太一がスマホの画面を見せる。
そこには『○○高校あるあるbot』のプロフィール画面が映っていた。
「フォロワーは?」
「……1500人!?」
元々はたった50人程だった。
しかし、昼間の爆弾投稿からリツイートに次ぐリツイートで、めちゃめちゃ各方面にあの投稿が広がっている。
このフォロワーの異常な上昇もその恩恵によるものだろう。
恩恵、なのかどうかは分からないが。
「この垢をフォローしているのは当然○○高校の奴だ。俺のクラスにも何人かいた。そいつらに向けて爆弾を投下した」
「原田、真壁、道枝。この垢のフォロワーの中に、こいつらを知っている連中は絶対にいるからな」
「その人たちがさらに周りに広げていくわけ。その結果、○○高校だけでも、めちゃくちゃな騒ぎになっちゃうのぉ。お分かり? おサルさん」
3人で畳みかけてみた。
これで阿久津は理解したのか?
「………よく分からん」
ズコ――――――――――!!!!!
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