四話目 姫様はいつでもアウトロー
姫「さて、今日も城を脱走するかの」
影長「イエス、ボス!今日はどちらに向かわれるので?」
姫「秋葉屋でかき氷じゃな、今日は茶氷に白玉だったはずじゃ」
影長「良いですね、暑い日には俺は小豆氷なんぞ食したい」
姫「さて、影集達にもなんか奢ってやるとするかの。出陣!」
爺「そうは問屋が卸しませんぞ、姫様」
姫「煩い爺やが来たのぅ、黙って寝ておれ。まだ、包帯が取れておらぬのじゃからの」
影長「大丈夫です、姫様。問屋が卸さなくとも、問屋の元締めも兼ねる越後屋に卸させましょう」
姫「SO RE DA!」
爺「これ、余計な事を吹き込むではない」
影長「俺も影集達も、冷たく美味しい氷を早く食べたいからな」
爺「モノ共、であえであえぃ!!」
ぞろぞろと城から通勤ラッシュの様に、家来がぞろぞろと出てくる。
姫「まずいぞ、どうするのじゃ」
影長「お任せ下さい、そのかわり後で俺の氷にフルーツのせて下さい」
姫「大丈夫かの、影長…」
影長「胡椒&マキビシ!」
姫を抱えて素早く風上に移動すると大量の胡椒とマキビシをまき始める影長。
草鞋で、マキビシを踏んで思う様に進めない家来衆に思わずガッツポーズ。
爺「己、卑怯な!」
姫「わらわは武士ではない、ならば勝てばよかろうなのだ!」
??「流石、わらわの娘じゃ!」
影長「姫、緊急事態です」
珍しく、焦った声をあげる影長。
姫「わかっておる、母上じゃ」
爺「おぉ、奥方様。姫が、また脱走を企てておりま…」
母「判っておるわ、問題はそこな事ではないぞえ」
かつんと、薙刀を地面についた。
母「何故、この母もつれてゆかぬ。寂しいではないか、どうせ氷菓子であろ?わらわもそろそろ南蛮ふるーつの氷菓子が愛おしくなってきたとこじゃ」
爺「もうやだ、この母娘(おやこ)」
姫「むぅ、こっそり行くのが楽しいのに母上め。」
影長「かといって、強行突破は難しゅうございますぞ姫様」
姫「判っておる、母上を相手にするなら影集を率いて将軍家に殴り込んだ方がマシじゃ」
爺「不穏な事、言わないで頂きたいのでござるが!?」
母「まぁ、確かにあの世継ぎも作らんと怪しい行動しか取らぬ男色放蕩将軍めを打倒すというのならばこの母も力を貸してやらん事もないがの」
爺「何、氷菓子の店にいく気軽さで倒幕しましょうかみたいな話してるんじゃ?!」
姫「にしても、影長…。母上にはマキビシは利かんぞ、ハイヒールならぬハイ下駄(高下駄)をいつも愛用しておるしの」
影長「あんな下駄はいて、俺達より強いなんて何のための兵隊と警護なんだって話ですよね」
母「何をゆーておるか、お主ら。兵隊も警護もダイエットの為に百錬組手をする為の人員に決まっておろうが、最近は粘れるものもなく五百錬に増やしておるが」
爺「奥方様、そんなに体力をつけすぎるから殿が最近カッピカピになって朝を迎えるのですぞ」
母「当家には男子がおらぬからのぅ、殿にはもうちっと頑張ってもらわねば」
爺「殿、お痛わしや…」
姫「よし、影長あれを使おう」
母「ほう…、何か妙手でも思いついたかえ?」
すっと、眼を細め様子をうかがう。
影長「あれは、まだ調整中だと越後屋がいっておりましたぞ」
姫「今使わず、いつ使うというんじゃ?」
影長「そうですね、姫どの道じり貧ですしやりましょうか」
姫「はい、ぽちっとな」
灯篭の中央にあったボタンを押すと、池が二つに割れてサイドに広がり池の水が滝の様に落ちて行って何かがせり上がってくる。
母「ほー、そんなものも作っておったのか」
母親が感心し、池からせり上がってきたのは巨大な茶を運ぶカラクリ。
姫「影衆のりこむのじゃ、わらわもゆく!」
影衆「御意!」
中を見ると、ペダルと椅子が一杯並んで固定されていた。
影長「姫、舵をお願いします」
姫「皆のモノ、こいでこいでこぎまくれ!」
影衆「御意!」
影達が、一心不乱にペダルをこぎ出すとからくり人形の両目に火が灯る。
影長&影衆「えっほ、えっほ。えっほ、えっほ。」
掛け声と共に、ペダルを揃えてこぎ。カラクリが前進し、母をひこうと突き進む。
母「ふむ、中々面妖であるな。もうちっと、カラクリの顔は可愛く作った方がよい」
そのまま前に倒れる事で高下駄で坂道を登る様に、力を斜めにかけカラクリがたった一人に止められていた。
母「中々、馬力もある。これは治水工事などに使えそうじゃな、わらわの娘はなかなかじゃの」
姫「母上、覚悟しませい!」
爺「もうやだ、この母娘(おやこ)」
カラクリと、母親の間で潰れたパンの様な形の爺やが今日も絶望の声をあげていた。
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