カードホルダー〜異世界転移した俺はいつかあの人を〜

あに

第1話 異世界転移


 カードホルダーにデッキをセットして腰のベルトにつける。カッコよくて買った革製のカードホルダーだ。

 さて、今日も勝利をもぎ取ってやろう。


「優勝は久保 悠人くん、優勝のカードを贈呈します」

「やったぁ!ってこれなに?異世界召喚?」


 ここはどこだ?さっきまで店内で優勝カードを貰ったとこだけど。


「ここどこよ?見渡す限り草原なんだが?」


 あのカードには異世界召喚って書いてあったよな?まさか本当に異世界?まさかぁ…でも本当に何処だここ?


 よし、ここが本当に異世界なら、

「す、ステータス」

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 久保 悠人  21歳

 レベル1

 力 F

 体 F

 速 F

 知 F

 魔 F

 スキル カード化・召喚・合成

 ユニーク カードホルダーLv1

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「で、でたぁ!まじかよ?てかカードホルダーってなに?」

 あ、カードホルダー!大事なカード!

「あったぁー。よかっ…デッキがないじゃんか!」

 俺のデッキが無くなった。

 もうダメだ、死のう。

「あぁー!やってられるか!」

“ガサッ”

「ん?ホーンラビット?」

 こっちを威嚇しているツノの生えたウサギが今にも飛び掛かろうとしている。

「いや。俺丸腰だからさ!いやぁー」

 何とか突進を避ける。

「話せばわからないかな?ね?」

「キュッ」

 また突進をかまして来るので避けて蹴りをくれてやる。

「キュー」

「鳴き声は可愛いがそのツノが物騒なんだよ!」

 また突進してきたので今度は本気で蹴る。

「ギュッ」

「だから言ったのに!何でかかって来るかな?」

 動かなくなったホーンラビットに近寄ると『カード化しますか?』と出る。

「とりまYES!」

 カードになって俺のホルダーに入る。

 ホルダーの中から出してみるとホーンラビットレベル1 が中に入っていた。

 へぇ、これで、カードを増やしていけって?馬鹿にしてんのか!

「こんなんじゃ強いカード手に入んないじゃん」

 “ガサッ”

「キュッ」

「またかよ!カード召喚!来いホーンラビット!」

「キュッ」

 ホーンラビットが召喚される。

「キュッ」

「キュッ」

 あー、キュッキュッキュッキュッ煩い!

「突進だ!」

「キュッ」

「ギュ」

 突進を交わしきれずにホーンラビットは倒れた。

「よし!ホーンラビットでも大丈夫かな?よし、お前は今日から兎丸だ」

「キュッ」

 誇らしげなホーンラビットは愛嬌があるな。

「しかし、ホーンラビットの死体はどうするか?カード化?」

 ホーンラビットのツノと肉と毛皮になってカード化された。

 ほう、これは便利だな。

「よし兎丸!仲間を呼ぶで、倒していけ!」

「キュー」


「十二体分のラビット肉とツノか、売れば幾らかにはなるだろ」

 それより街は何処だ?

「兎丸?街の在処はわかるか?」

「キュッ!」

「え?着いてこいって?」

 兎丸の後について行くと街道に出た!

「兎丸お前は賢いなぁ!」

 兎丸のモフモフを撫でくりまわす。

「キュッキュー」

 よし、城門が見えるあれが街か。

「よし、兎丸。近くまで行ったらカードに戻ってくれよな」

「キュッ」

 話してることがわかってるらしく近くなったらカードに戻って俺の手元に戻る。

「兎丸サンキューな!」


「身分証が無いだと?」

 門兵にとまられて事情聴取を受けている。

「はい、気づいたら草原にいたので」

「追い剥ぎにでもあったにしちゃ身綺麗だし、お前金は?」

「金もないです。でもホーンラビットの肉は何個か有ります」

「よし、ならこれに触って」

 水晶に触ると青く光る。

「よし、ここの入街税は銅貨三枚だ。この木札を銅貨三枚持って返しに来い。そして冒険者ギルドで登録してこい、身分証になるからな」

「は、はい」

 なんだかんだで優しいおっちゃんだな。


 聞いた通り、冒険者ギルドに来た。

 中に入ると昼間だからかガラんとしている。真ん中の受付に行くと、

「はい、何かご用でしょうか?」

「登録をお願いします」

「冒険者登録ですね。この紙に必要事項を書いて下さい」

 名前、年齢、出身地?どうしよう?

「あ、出身地は書かなくてもいいですよ」

「はい、書き終わりました」

「では銀貨一枚になります」

「え!金いるの?先に売りたい物があるんですが?」

「はい、魔物の素材でしたら、右手にあるドアの向こうです」

 すぐ戻りますと、走ってそこに行く。

「なんだい?こんな昼間に?」

「おばちゃん売りたいんだけど」

「身体かい?いくらだい?」

「ち、ちげぇって、ホーンラビットの肉」

 おばちゃんおっかねぇ!

「ならそういいな、何処にあるんだい?」

「カード召喚!」

 どさっと十二体分の肉とツノと毛皮になった。

「へぇ、ユニークかい?まぁいいさ、これだけあれば」

 おばちゃんが数えて算盤をパチパチすると、

「銀貨十二枚と銅貨六十枚だね」

「それでお願いします」

「よし、これを受付に持っていきな」

 紙を貰いすぐに受付に持っていき換金して銀貨一枚を渡す。

「はい、受け取りましたのでここに指を置いて下さい」

 人差し指を置くとチクッとした。

「これで登録完了しました。あとは冊子をよく読んで下さいね」

 ドッグタグと冊子を渡される。

「こら!楽してんじゃないよ!」

 さっきのおばちゃんがやってくる。

「あ!わかりましたよ。でもこの子字読めますよ?」

「それでもちゃんと仕事しな!」

「はーい!冒険者にはFからSまでのランクがあって、ユート君はFランクね。で、Fランクは一週間依頼を受けないと冒険者資格失効になるから気をつけてね」

「めっちゃ大事なことじゃないっすか!」

「えへ、ランクが上がればそれも無くなるからそこまで大事じゃないよ。大事なのは死なないことね」

 指差して笑うお姉さんは可愛いが、そんな気分じゃない。

「んじゃ、ホーンラビットの依頼はありますか?」

「ホーンラビットは常設依頼だからいつでもOKよ。常設依頼は他にも薬草採取、ゴブリン討伐くらいはあるからそこの張り紙を見てね」

「はぁ」

「あとはFランクはEランクまでの依頼しか受けれないから間違えない様にね」

「はい」

「以上!」

 決まった!とばかりにポーズをとる受付のお姉さん。

「よし!ユートまだ日は高いんだ、ホーンラビットをまた持ってきな!」

 おばちゃんが笑いながら言って来るので俺も笑いながら、

「行ってきます」

 と返す。


「門兵さん、有難うございました」

 木札と銅貨三枚を渡すと、

「俺はゴズだ。よろしくな坊主!」

「ユートです」

「おぉ。悪いなユート」

「今からまたホーンラビット狩りに行ってきます!」

「おう!気をつけてな!」

 門兵に別れを告げてホーンラビットを狩りに出る。


 カードを取り出して召喚する。

「兎丸!よろしくな!」

「キュッ」

 冒険者資格のドッグタグが揺れていた。

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