美女がいると、日常が死ぬ

あの後、母親にスーツをアイロンしているとこをみられ、やんや やんやあったけど

そのあと、載せてあった住所の近くまで母に送ってもらった。


「ありがとう。母さん」

「うん、がんばって!緊張しすぎないようにね!肩の力抜いて!」

「それもう車の中で腐るほど聞いたよ」

「ふふ、...じゃあもう私は帰るよ、頑張って!あ、父さんも応援してたから!」

______ありがとう父さんも



「さてどこだったかな?」

グーグルマップで探りながら、目的地を探す


傷だらけの整備された痕跡さえもない店の看板

顔を上げれば5つは見える小さな廃墟

そこら中に散らばったボロボロの自転車

よどんだ空気

それにお似合いな、曇った空

まさに、という感じ、人気もない


「場所を間違えたかな?」


だとしたら絶望だ

あまりに人気がなくて不安になってしまう

まるで登校中、自分以外体育着を着た人がいない運動会の日の通学路のようだ


........一度確認しよう

そう思った矢先、スマホから不自然に流暢な声が聞こえる

「50メートル先、右方向ですお疲れ様です、もうすぐ目的地に着きます」

今となっては頼りに頼っていた声を久しぶりに疑った

しかし50mも離れていれば人気がないのも納得できる。

進んでみよう、グーグル先生の言葉を信じて


歩く、歩く、まだまだ歩く、たまに左右の建物を見てみたり





.......「目的地に着きました、お疲れ様でs」

苛立ちのあまり、しゃべってる途中でスマホを切る

もちろんこの苛立ちは「目的地」のはずなのにまったく人気ひとけがないからだ

さらには道中ずーっとこいつの声が鬱陶しかった

ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ中身もなければ意味もない事を喋ってるこいつが

ひっじょーに腹が立つ、いや、立っていた

それは突如おとずれた、


_____________人だ

廃れた街道を一人の男が迷ったように歩いている、それもこちらのほうに

彼も俺と同じなのだろうか?


「あ、あのー!」

くそ、いざ言うとなると恥ずかしいッ

「あ、あなたもの新社員ですか?」

男が言う

「あー!もしかして、あなたもですか!?」

よ、よかった通じた。

ここで「エニグマ?な、なに言ってるんですか」みたいな感じになったらめっちゃ

恥ずかしかった!


「すみません。僕、全然見つけられなくて、確かここらへんでしたよね?」


「確かここらへんだと思いますけど、すいません俺もよく知らないんです

 いま、探してる最中でして」

「ああ、あなたもそうだったんですか!」

少しだけ嬉しそうだった、もちろん俺もうれしい同じ状況の人に会えて安心した


それからこの人(浜田さんというらしい)と少し雑談しながらここらの廃墟の中を

探し回っていた


「んーなかなか見つかりませんねぇ」

「そうですねぇ。ところでさんはどこの部署に行きたいんですか?」


櫛田というのは俺の苗字、ちなみに名前は唯斗ゆいとまあ改名したんだけど


「部署?なんですかそれ、そもそもエニグマの仕事って何か知ってるんですか?

 サイトには書いていなかったですよね?」

「えっ!公式ホームページに大まかに書いてありましたよ!?」

「ああ、あの世界征服が何たらとか、世界を変える云々とかでしょう?

 それくらいで部署とか細かい仕事内容と書いてなかった気がしますけど」


少しだけ櫛田さんの顔が引きつる、ちょっとけんか腰だっただろうか?

いかんせん家族以外と話すのは2年ぶりなんだよ、.....ごめん


「その転職サイトからホームぺージに飛ぶんですよ、見なかったんですか?」

「いや、すいません。どうやら見落としていたみたいで、

 よければどういう仕事があるか教えてくれませんか?」

「まあ、いいですけど。

 よくそんな何も知らない会社に入ろうと思いましたね。」

「はは、後がなかったもので」

「......どうやら、7つの部署があるらしいんですよ。

 その内がご、ごっ、ごうよくのゼノン、だとか

 まあそういった名前の部署が7つくらい」


いやあ、よっぽど勇気を出したのだろう

さすがエニグマ厨二度が段違いだ、社名だけでは飽き足らず部署の名前までも!


「ってことは傲慢とか、色欲とか、そういった部署もあるんですかね?」

「ま、まあ、そんなかんじです」


浜田さん、顔真っ赤

かわいそー


「あ、あれ、中に人がいますよ!」


話をそらしてやろうと、俺が言う

いやまあしかし、やっっっとみつけた!

正直、クソほどうれしい


「あ、ああ!ほ、ほんとだ!あ、ありましたね!」


どうやら動揺しているようだ、それもまあ当然か浜田さんの心の中はぐちゃぐちゃだ

......とまあおふざけはこれくらい、早く中に入ろう。


ワッ!!

中に入ると大勢の人がいた、まるで小さなライブのような舞台が奥にあり

その周りを大勢の人が囲んでいる感じだ

ふと時計を見ると11:19を指していた「ギリギリでしたね」浜田さんと少し笑いあう


が、多すぎる人波に少し離れたところまで、お互い流されてしまう

まあ、後で会いに行けばいいか。

久しぶりの「友達」になってくれるかもしれない存在がいなくなったことに

早くも、不安を覚えてしまっていた。そわそわ


秒針がついに12を指し、それと同時に分針が4を指す、時刻でいえば11:20

ついに、来た、スーツに少しだけシワがついているがそんなものは達成感に殺された


瞬間、轟音、そして黒、真ん中奥に積乱雲のような黒が出現し、渦を巻く

その黒が晴れ中から現れるのは、ありえないほどの、_______美女

本物の金を見ているようなつややかな金髪

垂れ、まとまった前髪

ほかはすべて後ろに垂らしていて、いわゆる金髪ロング

髪の幅は肩ほどあり、長さは腰にも届くだろう

宝石のような瞳に、日本人ではないであろう綺麗な顔

それに、妖艶さをつけ足しているのは露出度が高く、肌にぴったりとくっついた衣装


_________すべてが、美しかった


その唇が動く、それさえも目を奪われ、心惹かれる


「それでは、皆さんようこそ!

 我らが秘密結社、エニグマへ!」


凛とした、芯のある、これまた美しい声と同時に

________視界が赤に包まれた

死の予感、本能で理解する

どうやら走馬灯は迷信だったらしい。


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