ガール・ミーツ・ユニコーンガール
永久保セツナ
第1話 ユニコーン娘との出会い
「追え! 逃がすな!」
深夜の住宅街。蹄の音と男たちの怒号が聞こえる。
黒ずくめの服装の男たちが、一頭の馬の首に縄をかけた。真っ白な馬は興奮した様子で暴れている。
――いや、馬ではない。額にドリルのように真っ直ぐで細長い角が生えている。ユニコーンだ。
「やっと見つけた貴重な一頭だ。絶対に持ち帰らないと……」
黒ずくめの男の一人が、ユニコーンの首にかけた縄を引っ張り、無理やり馬専用の檻に引きずり込もうとしている。その檻に閉じ込めたらすぐに大型のトラックで連れ去る手はずになっていた。
しかし。
「あなたたち、何をしているの!」
突如、女の声が聞こえ、ぎょっとした男たちが振り向く。
パンツスーツに身を包み、リュックを背負った一人の女性が腰に手を当てて立っていた。どうやら仕事帰りの会社員らしい。
「なんだ、お前は……俺たちの邪魔をするな!」
男の一人が拳を振り上げ、女を殴ろうとする。
が、女はそれを素早く避けて、男の懐に潜り込む。
「ハァァッ!」
掛け声とともに、女の拳が男のみぞおちにめり込んだ。
「グボッ……!」
男の身体がくの字に曲がり、ドサッとアスファルトの上に倒れ込んだ。
「な、なんだコイツ!?」
男たちが動揺した隙をついて、ユニコーンが一層暴れ、男たちの手から縄が離れてしまった。
ユニコーンはそのまま女のほうに突っ込み、彼女に背に乗るように急かす。
女がユニコーンに乗ると、ユニコーンはブルルと一声いななき、女を乗せたまま走り去った。
「なっ!? しまった!」
「追いかけろ!」
男たちの声が、どんどん遠くへ置き去りにされていく。
女は振り落とされないよう、必死にユニコーンの首にしがみついた。
やがて、住宅街から離れた公園の中に駆け込み、池のほとりでユニコーンは止まった。
走り疲れたのか、池の水を飲むユニコーンの背から降り、女はユニコーンの胴体を優しく撫でる。
「ひどい目にあったわね。もう大丈夫よ」
「助けてくれてありがとう」
水を飲み終わったユニコーンがお礼を言うと、人間の女性の姿になったのであった。
「あら、あなた女の子だったのね」
「もし僕が男でも、背に乗ったのかい?」
「あの状況じゃ、乗るしかなかったでしょうね」
女はユニコーン娘に向かって、肩をすくめる。
「それにしても、ユニコーンがあんなところにいるなんてびっくりしちゃった。絶滅危惧種って聞いてたから」
「アイツらに捕まってたところを、なんとか暴れて檻から逃げ出したところさ。また捕まりそうになってたけどね」
ユニコーン娘は疲れきったようにため息をつく。
そこで、女はある提案をした。
「良かったら、私のマンションに来ない? 家事をしてくれるなら匿ってあげる」
「迷惑じゃないかな?」
「平気よ。見たでしょ、格闘技やってるから強いの、私」
シャドーボクシングの真似をする女に、ユニコーン娘はクスッと笑う。
「じゃあ、お世話になろうかな。君の名前は?」
「私は巴、
「僕はフローベル。よろしく、トモエ」
こうして、運命の出会いを果たし、固い握手を交わした二人はルームシェアを始めたのであった。
果たして巴とフローベルは、悪の組織から逃げおおせて、幸せな生活を手に入れることができるのだろうか……?
〈続く〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます