第6話 三女の提案
「こ、子供って……!?」
「はい! 私達の子供です!」
「い、意味がわかっていってるのか? いや、俺が言うのも変な話だけど……!」
さんざん、多くの女性に子作りを迫ってきたリオンであったが……サフィナから同じことを求められたことで、混乱の極みに陥っていた。
サフィナはまだ子供だ。子作りをするような年齢ではない。
アルフィナやフェリエラに求めるのとはわけが違う。
「むう……失礼ですよ、リオンお兄様! 私はもう子供を作れる年齢ですっ!」
サフィナが腰に手を当てて、憮然とした様子で唇を尖らせる。
「ちゃんと成人の年齢に達してます! 身体が小さいのはたまたまですっ!」
「あ、ああ……そうなのか?」
「そうですよっ! ほら、ちゃんと大人でしょう!」
「うわっ!?」
サフィナがリオンの手を掴んで、自分の胸に向かって引き寄せた。
ポヨンと柔らかい感触。
実際に触ってみると、確かにしっかりとした膨らみがある。
フェリエラなどに比べると小さ目ではあるが、小柄な体格を考慮すると十分すぎるサイズがあった。
「ちゃんと月の物だって来ていますし、元気な子供を産んで見せますっ! だから、私と子作りをしましょう!」
「それ、は……」
渡りに船……なのだろう。
自分から積極的に子供を産んでくれるというのだから、非常に助かる。
だが、サフィナはこれまで関係を持ってきた女性の中で、圧倒的に小柄で子供っぽい外見をしていた。
いかに成人しているとはいえ、妙に罪悪感がある。
「えーと……」
「大丈夫、天井のシミを数えているうちに終わりますからねっ!」
「それは男が言うセリフじゃなかったかな?」
「さあ、行きましょうっ! 今すぐにベッドへ!」
サフィナがグイグイとリオンを連れて、応接間から連れ出そうとする。
姉のマリアステラは「あらあら」と頬に手を当てて首を傾げており、妹の暴走を止める様子はない。
乱暴に振り払うわけにもいかず、されるがままに部屋から連れていかれる。
「「「あ」」」
しかし、ちょうど応接間を出たところで足を止めることになった。
スノーウィンド公爵家が三姉妹の次女……アルフィラ・スノーウィンドがそこに立っていたのである。
「サフィナ……それにリオンも。二人とも、何をしているのだろうか?」
「えっと……アルフィラ姉様、これは……」
「……いや、いい。何となくわかった」
アルフィラはリオンの手を握りしめている妹の姿に全てを察したらしい。
「サフィナ……貴女がリオンのことを慕っているのは聞いた。しかし、あまり強引に迫るのは良くないだろう」
「だ、だけど……サフィナ姉様……」
「別に迫るなとは言っていない。リオンの使命からして、子を産む女性は一人でも多い方が良いからな」
アルフィラは深々と溜息を吐き、リオンの方に向き直る。
「リオン、妹が迷惑をかけてすまなかった」
「ああ……それは良いんだけど……」
「妹が失礼を働いたのを承知の上でお願いする。私だけではなく、サフィラも孕ませてもらっても構わないだろうか?」
「は……?」
今、何といっただろう。
姉が妹を孕ませろと言ったのか。
「いや……何だろう、それはおかしい気がするんだが……?」
おかしいというのなら、そもそも誰彼構わずに子作りを迫っているリオンの方もおかしいのだが。
「感覚がマヒして、何が正しいのかわからなくなってきたな……」
「奇遇だな。実は私もわりとその辺りがわからなくなっている」
「私は何でもいいよー? リオンお兄様と子作りができたらねっ!」
「あらあら、素敵ねえ」
アルフィラが首を傾げ、サフィラが元気良く手を挙げて、マリアステラが微笑ましそうにしている。
三人とも顔立ちは似ているが、色々と性格の異なる三姉妹だった。
「とりあえず……お話は晩御飯の後にしたら如何かしら?」
マリアステラが両手を合わせて、ニコニコ顔で言う。
「お父様はこのまま外に立たせておくとして……夜は長いのです。焦らずに参りましょう?」
「そう、だな……」
マリアステラの提案に乗って、誰と子作りをするのか話の続きは夕食後になった。
いつの間にかリオンが公爵家に泊まることが、そして、当主であるはずの男が夜通し締め出されることが決まっていたのである。
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