2.初めての練習
「ツルちゃん、走る順番どうする?」
「うーん、ウチは二番、三番どっちでもいいけどカワちゃんはー?」
放課後、クラスや応援団の練習、クラス旗の作成が行われる中、選抜リレー組が召集をかけられ、説明会を含めた練習が行われることになった。
選抜リレーは男女混合で行われるが、走者の順に決まりはない。しかしこのリレーでは、第一走者のバックストレートが過ぎた段階でレーンを内に寄せて良いこと、最終走者はゴールまでのホームストレートが長いという特徴がある。
そうなると、抜く為の外回りをしないように先頭を取る第一走者と、距離が長い最終走者は、単純な持ちタイムが速い人を選ぶことが多かった。
他のクラスを見ても、ここはセオリー通りのようだ。
「大森はスタートとアンカーどっちがいい?」
そう声をかけてきたのはクラスメイトの蒲田くん。なかなか馬が合うやつで、足の速さはボクと同じくらいだった。
「正直スタートは苦手なんだけど、とりあえずじゃんけんする?」
「じゃあ勝った方がスタートで、じゃんけんポン!」
ジャンケンの結果、順番は、蒲田くん、鶴見さん、川崎さん、ボクの順に決まった。
初の実戦形式の練習が三年生から順に始まり、次は二年生の番となった。
蒲田くんを含めた四人の第一走者がスタート位置につく。
「位置について、よーい」
パァンとスタートピストル音が響き、ボクたちにとっての選抜リレー初のスタートが切られた。
×××
「とりあえずバトンパスの練習しよっか」
「まずはそこからだよねー」
川崎さんの提案に特に異論はなく、メンバーが決まって初の実戦後、ボクたちは他のチームと同様に、バトンパスの練習を行うことにした。
「しかし、半周以上も差がつくとはなぁ」
蒲田くんの言うとおり初の実戦は、A組のワンツーフィッシュという結果で終わった。
「まあ、それ自体は想定通りとも言えるけど」
「でも結局三、四着だったしなぁ」
結果だけ見れば最悪だが、希望を持てる点がなかったわけではない。
第一チームの方は二着とそこまで差はなく、バトンパスなど練習次第では、順位を上げることも現実的だった。
「それじゃあ蒲田くんおねがーい」
「うーっす」
ほどなくして、第一走者の蒲田くんから順にバトンパスの練習が始まった。
バトンパスはリレーにおいて非常に重要な要素だ。いかに速度を落とさず、正確に受け渡しができるか。そのためにはスタートタイミングや受け渡しの方法など、工夫の余地は多い。
「さすがに今のはウチのスタート早すぎたかなー」
「まあ、あと二メートルくらいは待ってほしい感じだな」
「あ、そういえば横で見てて気付いんだけど、バトンの持ち手はどうするの?」
しかし、バトンパスを練習するのは他のチームも同じだ。無論本番で相手チームにパスミスが起きれば話は変わるが、それは自分たちでどうにかできることではない。
根本的な走力の差により、勝負に参加できていないという事実は、この競技だけでなく体育祭そのものに対してのモチベーション低下につながりかねない。
どちらにしても、チームとして戦っていくためには、何かを変えなければならないことは明らかだった。
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