おんしつ



 パパがいなくなって三日泣き叫び、そして泣きすぎで三日寝込んだ。


 パパが向かった先は隣の隣の国。王様が世代交代をしたため、その式典とやらに参加するため。パパが皇帝になったときは逆に向こうが来てくれたみたいなので、参加しないわけにはいかなかったらしい。理由を知っても立ち直れない。悲しいは続く。

 マドにーにが毎日様子を見に部屋に来てくれたが、泣いて寝込んでと、全く話せていない。


 ディリアが心配そうに私のお世話をしていて、罪悪感でいっぱいになる。


「リシア、気分はどう?」


 今日も来てくれたマドにーには、眉をへの字に曲げてそっとベッドで横になる私の頭を撫でた。徐々に熱も下がってきて、今日久しぶりにマドにーにの目をキチンと見た気がする。


「マドにーに」

「! リシア、大丈夫?」

「いたいいたい」


 目をぎゅってして痛いと溢す私に、マドにーには困ったように、でもどこか安心したように笑った。

 心配をかけていたんだとすぐに分かった。布団の中で、ばれないように両手を握りしめる。


「ごめん、ちゃい」

「ううん、僕の方こそ父上から無理やり引き離してごめんね」


 ふるふる首を振って、大丈夫と伝える。完全に私が悪い。前世の理性なんてなんの役にも立たなかった。


「動けるようになったら、僕の学校が終わった後温室に散歩に行こう?」


 マドにーにはこの城がある帝都の学校へ通っている。10歳で入学し、卒業は18歳だ。マドにーには今年10歳になり入学したばかり。発育が良くて12歳くらいだと思っていたので年齢聞いてびっくりした。

 住んでいる帝都に学校はあるものの、馬車で移動しないといけないくらい遠い。

 そもそもにーには皇族だから馬車での通学が当たり前だが。

 貴族や平民関係なく、能力が高ければ入学できる。貴族、特に皇族は身分上午前だけ午後だけの授業でも許可されており、それは高い身分になればなるほど公務が忙しいからだ。成績を維持していれば特に何か言われることはないようだ。

 マドにーには午前だけ学校に通い、午後は皇国騎士団に剣を教わっている。魔法は訓練していない。魔力がないと意味ないらしく、マドにーにはそれほど魔力量が多くないため剣の訓練しかしていない。


 魔力の量や属性は5歳になったら調べることができるようで、楽しみですねとディリアが話していたが、魔法とか魔力とか今一よくわからないので、その時になって考えようと思っている。


「おんしつ?」

「可愛いお花が沢山あって、小さいけど噴水もあるよ。そこに行かない?」

「いくっ! あした、いく!」

「ま、待って、熱がちゃんと下がってからだよ」

「もうない!」

「あはは、じゃあ明日お熱測ってなかったら行こうか?」

「うん!」


 元気に答えた私にマドにーには嬉しそうに笑った。マドにーにって天使みたいに優しい。どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。特に何かしてあげたわけじゃないのに。

 でも優しいマドにーにが好きだ。家族愛ってこんなに温かい気持ちになれる。


「たのちみ!」

「僕もだよ。明日は急いで帰ってくるから、熱なかったらお昼ごはんも一緒に温室で食べようか?」

「うん!」


 近くでディリアがホッとしたように私を見ていた。心配かけて本当に申し訳ないことしちゃった。温室に行ったらディリアにお花を摘んであげようかな。


 私は熱が上がらないように、マドにーにが部屋を出て行ったらすぐに目を瞑った。早く明日になあれ。

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