配信中Sランク魔物をワンパンでバズりからの義妹アイドル生活!?~何でもワンパンする俺より金髪美少女義妹の可愛さに痺れろ!~

御峰。

第1話 配信中にワンパンしちゃった話

「はあはあ……お兄ちゃん…………な、何とか倒した!」


 俺をそう呼ぶのは、世界で一番可愛い――――妹、セシリアだ。


『セシリアちゃん~ナイスファイト~!』

『めちゃくちゃ頑張ったじゃん! ぐっじょぶ!』

『お兄ちゃん言われるのたまらん……』


 俺はいま最新のスマホで妹を撮影・・し続けている。

 世界にダンジョンが生まれてから特殊な素材が広まって、ここ二十年で随分と開発が進んだという。というのも俺が生まれた頃なのでよく分からない。

 スマホから上部に【リスナーからのコメントが下から上に流れるシステム】によって、俺の世界一可愛い妹へのコメントが流れる。

 妹は現在、ダンジョン配信者というお仕事を頑張っている。俺は彼女を撮影する係だ。


「セシリア~! よくやったぞ!」


 俺の声に満面の笑みを浮かべる可愛い妹。

 当然無数のコメントが流れるのは言うまでもない。

 妹が倒した魔物はFランク魔物なので最弱魔物だが、それでもいいのだ。大事なのは妹が頑張って一人で倒しただから。


『鬼さんも撮影おつかれ~』

『鬼さん、いつも画角ありがと~!』


 リスナーが言う【鬼さん】というのは、他でもない俺のことだ。

 うちの妹がダンジョン配信者で数字を伸ばしている理由は、可愛いももちろんあるが、何より受けがいいのは、リスナー達の目線に「お兄ちゃん~!」と呼んでくれる妹の良さだからだ。なんたって世界一可愛いからな。


「セシリア~また後ろから魔物が現れるぞ~」

「う~ん! 頑張る!」


 そう言いながら両手で刃渡り二十センチの短刀を持ち、真剣な表情で後ろを睨む。後ろ姿も可愛いすぎて鼻血が出そうだ。

 真剣な妹だが、妹には普通の人とは違う点がある。


 それは、光を受けて眩く光り輝く――――金色の長い髪だ。


 腰まで伸びたサラサラした髪は彼女が動く度に美しく波を打つ。しかも、この髪の色は何も染めたものではない。地毛だ。

 つまるところ、純潔の日本人の俺に対して、妹は純潔のイギリス人だ。さらにいうなら血縁関係ではない。

 俺の母は父を亡くして、妹の父は奥さんを亡くして、どうしてそうなったのかは分からないが、二人は出会って再婚した。

 その時にやってきたのは――――世界一可愛い妹のセシリアだ。

 セシリアと俺が家族になったのは、もう十五年も前のことなので、血が繋がっているいない関係なく、俺にとって最高の妹なのは変わらない。ちょっと髪色とか顔の堀りとかが違うだけだ。まあ、世間体的な言い方なら、義妹と呼ぶことになるな。


 セシリアの前にブラックホールのような空間が歪んで、中から五十センチの黒い毛の兎魔物が現れた。


『セシリアちゃん頑張れ~!』

『いっけえええ~!』


 相変わらず、うちのリスナー達は温かいな。他の配信者は怒声が飛んだりするらしいから。

 妹は持っていた短刀で兎魔物と戦い始めた。

 斬りつけて、すぐに後ろに大きく飛んで離脱。魔物の攻撃に細心の注意を払いながら、ヒット&アウェイで戦っている。

 十回にも及ぶ攻撃の応酬が続いて、激戦を制した妹はこちらに向かって笑顔を見せる。

 ああ……うちの妹まじ天使……最高すぎる…………。


「よくやった~! セシリア!」

「やった~!」

『ナイスファイト~!』

『頑張るセシリアたんを見てると、俺も明日から本気出せるかも!』


 いや、そこは今すぐ本気を出せ。明日からじゃなくてよ。


 その時、ダンジョンの中の空気・・の流れが変わった。

 ダンジョンの中は別世界で色んな所があるが、今日やってきたFランクダンジョンは広大な洞窟の中だ。

 くすんだ空気がよりどんよりしたものに変わっていく。

 俺は急いで妹の元に駆け付けた。


「お兄ちゃん!? ま、待って、いま汗掻いて……」


 至近距離になって妹が恥ずかしがる。


「セシリア。ダンジョンの様子が変だ。一旦外に出よう」

「えっ? で、でも……配信中だし……」

「この感じ、強い魔物が現れる感じなんだ」

「それって……イレギュラーが起きるってこと?」

「イレギュラー? それはよくわからんが、間違いなく普通よりも強いやつがくる」


 ダンジョンで魔物が現れる時、ブラックホールみたいな現象から現れるが、たまに普段以上に強いやつが現れる場合がある。

 今の空気はまさにそんな感じだ。


『セシリアたん! 鬼さんの言う事はちゃんと聞きましょう!』

「うぅ……鬼ちゃん・・・・達まで……」

「セシリア。行くぞ」

「う、うん……」


 俺は妹の手を引いてダンジョンを後にするために出口を目指した。

 だが、それが悪い結果になってしまった。

 出口には一層では絶対に見かけない巨大な悪魔が立ちはだかっていたからだ。


「お兄ちゃん!? あれってアークデモンだよ! に、逃げよう!」

「アークデモン? それは強いのか?」

「凄く強いんだよ! Sランクパーティーでも全滅したってニュースで見たの!」

『鬼さん! すぐにセシリアちゃんを連れて逃げてええええ!』

『アークデモンがイレギュラーとかヤバいって!』

『通報ボタン押したから何とか生き延びて!』


 ん…………みんなどうしてそこまで驚くんだ?

 空気が変わったから強い魔物でも現れたのかも思ったら、ただの木偶の棒・・・・じゃん?


「セシリア。ちょっと待ってな」

「えっ? お兄……ちゃん?」


 俺はスマホを妹に渡して身軽にしてから木偶の棒に向かって、それなり・・・・の速さで走った。


「この木偶の棒の分際で! うちの妹に怖い思いをさせるんじゃねぇええええ!」


 俺は怒りのパンチを木偶の棒の胸に叩き込んだ。

 胸に大きな穴が開いて、木偶の棒がその場から消え去った。


『えっ……? アークデモンが……ワンパン?』

『は?』

『鬼さん……?』


 妹が持っていたスマホからコメントが流れるが、みんな誤解している。あの魔物はそう強い魔物ではないのだ。


 次の瞬間――――


「お兄ちゃぁぁぁぁん~!」


 一目散に俺の胸に飛び込んできた妹。妹特有の甘い香りがふんわりと広がる。


「お兄ちゃんがケガしたらどうしようって凄く心配で……あんな危ない魔物に……」

「あはは、気のせいだぞ? セシリア。あれはそんな強い魔物じゃないさ。ほら、一撃で倒れたじゃないか。心配させてごめんな?」


 世界一可愛い妹が俺の胸に顔を埋めて甘え始めた。

 妹を怖がらせた木偶の棒め…………いいとこあるじゃねぇか。

 最近ダンジョン配信者になったからと、一向に甘えてこなくなった妹を久しぶりに堪能した。


『俺達……いま……セシリアちゃんに抱きしめられている?』

『昇天しそう』

『俺……今日から本気出す……鬼ちゃんとして……』

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