第18話
空を見ていた。
どこまでも澄み渡る真っ青な空を
いつもの公園で彼女と僕の二人で座る。
今日二人が出会ってから会話はまだ一度もない。
その静寂を最初に破ったのは僕だった。
「やっぱり、僕には無理だったよ。」
「え、何の話?」
意外にも明るい声で答える彼女に対して僕の声は暗いままだ。
「文化祭の代表。クラスメイトの子が、トリックアートの絵に足を引っ掛かってしまって…先生が入ってきたとき、うまく説明できなかった。僕がリーダーなのに。」
「でもそれはさ君のせいじゃないよ。」
そんなこと僕も分かってる、分かってるけど、
「僕がしっかりしないといけないのに。」
「まだ次があるよ。」
「次なんかないよ。」
「なんでそんなこと言うの。」
彼女の声色が変わった。
「なんでって言われても。」
「次がないのは私だよっ!」
僕は彼女と接する上で言ってはいけないことを言ってしまった。気がついてももう遅い。
僕より彼女の方が次がないことなんて、
僕もよく分かっていた。
それでも僕は弱虫だ。気がつかないふりをする。
「どうしたの突然。」
「私は文化祭も出られないし、そんな失敗をすることも出来ない。死ぬのを待つだけなんだよ!?」
うん。知ってる。知っているよ。
僕は最低だ。
でも、彼女の本音が聞けた気がした。
_死にたくない
そんな本音が。
「やっぱり死にたくないんでしょ。」
僕は問いかける。
「私の何がわかるの。」
お互いいつもとは違う空気を纏うけれども、もう引き下がれないところまで来てしまっていた。
彼女に対する違和感をぶち撒ける。
口が止まらない。
こんなことは初めてだ。
「結局っ!君がいつも僕に言っていた言葉は君が君自身に言い聞かせていただけでしょ!」
「そんなことない!」
「僕に言ってる訳じゃない。君が君を変えようと無理やり言ってるだけなんだ!」
再び静寂がやってくる。あの、嫌な空気だ。
僕は最低だから、ここから先どうすればいいかなんて考えていない。
ただ彼女すら気付いていないであろう彼女の本心を伝えたかった。
「今日はもういろいろありすぎて頭回ってないからもう帰るね。」
その日は初めて彼女より僕が先に帰った日。
君の涙を初めて見た日。
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