LV-24:地下への扉

「今回もビトルノの時と同じように、この部屋でドロップアイテムが貰えるようだ。……あ、あれだな!」


 ツインスネイクスが息絶えた場所に、二つの宝箱が出現していた。


「一つは……氷塊の杖。これはサーシャ用ですね。敵全体に氷の刃を放てるようです。これは大きな助けとなりますね」


 サーシャは早速、宝箱から取り出して、嬉しそうに装備設定をしていた。MPを使わず全体攻撃を行えるのは、かなりの戦力アップになると思う。


「もう一つが……魔法使い用の……エクサブリザードの書か!! 氷系の最上位魔法だな! ほれっ、インディ」


 そう言うと、ティシリィは魔法の書を俺に放り投げてきた。頭に『エクサ』が付くものが、この世界の最上位魔法だ。ナイリのエクササンドスと、このエクサブリザード。これで、二つが揃った。


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◆インディ(魔法使い)LV-70

右手・希望の剣

左手・魔法の盾

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・守りの指輪/守りのバングル

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◆ティシリィ(戦士)LV-74

右手・魔法の盾

左手・光りの剣

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・幸運のブレスレット/守りのバングル

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◆ナイリ(賢者)LV-69

右手・炎の剣

左手・魔法の盾

防具・魔法の鎧

アクセ・聖なるアームレット/雨の恵

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◆サーシャ(僧侶)LV-58

右手・氷塊の杖

左手・魔法の盾

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・祝福の指輪/聖なるアームレット/雨の恵

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 その宝箱の向こう側には、入り口とは別の扉があった。


 もしかして、ここにアスドレクが居るのかもしれない。念のためMPも含めた回復作業を終えると、恐る恐るその扉を開けた。だが、現れたのは階下へと続く長い階段だった。


「どうやら、アスドレクが居るのは地下だったようだな。まあ、これで2階も制覇したと思っていいだろう。順序としては、これで正解だったんじゃないか」


「ええ、私もそう思います。順調ですよ、私たち」


 俺たちは扉を開け、その長い階段を下りていった。


「もうかなり下りてるよね……? 直接地下に向かってるのかな、この階段?」


「そのようですね、サーシャ……もともと1階は破壊されていたので、地下まで直通なのでしょう」


 そして、3度目の踊り場を過ぎると、階段突き当たりに小さな扉が現れた。


「……よし、あれだな。サーシャ、今度はインディを後ろに付かせてやる。心配しなくていいぞ」


 ティシリィはそう言って、ドアの前まで駆け足で降りていった。


「一番でドアを開けたいんだろうね。ハハハ、まるで子供だ」


 ナイリとサーシャも笑っていた。


 だが、その扉をくぐった俺たちは呆気にとられた。


 扉を抜けた先は、城内の通路だったからだ。しかも、扉の反対面は壁となっており、閉めてしまったが最後、二度と戻ることが出来なかった。


 その時、通路の先から声が聞こえてきた。モンスター……!? いや、人の話し声のようだ。


「ティ、ティシリィかじゃないか……もう、地下まで降りてきたのか」


 どうやら、ヴァントスさんたちのパーティーと遭遇したようだ。声を掛けてきたのはロクサスだった。


「ああ……やっぱり、ここは地下なんだな……」


「何を言ってるんだ……自分たちで降りてきたんだろう? とりあえず俺たちは出直しだ。お前たちもせいぜい気合い入れな」


「アスドレクと戦ったのか?」


「ああ……見事に全滅だ」


 そう言って、俺たちパーティーの横を通り過ぎ、地上へ戻るであろう方向へ去って行った。エクラウスさんは、すれ違いざまナイリに声を掛けていたようだ。


「ナイリ、エクラウスさんは何て?」


「キミたちなら勝てる。頑張れって」


「そうか……」


 俺はそれ以上、何も言えなかった。



「みなさん、ここまで来てこんな事を言うのも何ですが、本当にこのままアスドレク戦に突入して大丈夫ですか? ここで全滅すると、ゴールドだけで全員を蘇生させるのは難しいと思います。私たちのレベルも大きく上がっていますからね。……不安だったらしばらくの間、どこかでレベルやゴールドを稼ぐという方法もあります。——どうですか? 皆さん」


「今更何を言ってる、ナイリ。もちろん行くよアタシは。皆はどうだ?」


「攻略方を知っているはずのヴァントスさんたちが全滅したってのは、引っかかるところだよね……何かミスでもしたんだろうか。ヴァントスさんたちが負けたと知って、俺は正直迷ってる……」


「そう言えば、私がヴァントスさんのパーティーにいたとき、こんな台詞を何度か聞いたの。『これは聞いてなかったぞ』とか、『大事なところが抜けてるんじゃないか?』なんて……今回も、その大事な話を聞かされてなかった可能性もあると思うわ」


「なるほど……ヴァントスさんに情報を送っているのが誰かは分かりませんが、その方も情報を漏らす事は面白くないのかもしれません。上司やその上の方に、指示されているだけでしょうから……『RPG アイランド』の社長さんが、モンスターの特徴なんかまで把握しているとは思えませんし」


 『RPG アイランド』の社長インタビューを見たことがあるが、確かに一つのビジネスとしてしか捉えていないようだった。このゲームの世界観やストーリーなどには殆どタッチしていなかったように思う。


「どうする、皆? 多数決でいいよ、アタシは」


「私は行きますよ、ティシリィ」


「……私も」


「じゃ……決まったね。俺も腹をくくるよ」


 俺たちはヴァントスさんたちがやってきた方向へ進路を取った。アスドレク戦を終えた帰りのはずだからだ。2階と同じく、モンスターは頻繁に現れたが、一度は戦ったモンスターばかりだった。相手のモンスターにもよるが、サーシャが手に入れた『氷塊の杖』は絶大な効果を発揮していた。



 破壊されて進むことの出来ない通路を避けていく内、とうとうそれらしき扉が現れた。


「あ、あれだな……間違い無いな……」


 それは黒い光沢をたたえた、重厚な扉だった。


「アタシが開ける。インディ、サーシャを頼む」


「ティシリィ、私はもう大丈夫。インディもアスドレクに集中して」


「分かったよ、サーシャ。……皆、必ず勝とう」


「ええ……もちろんです」


 ティシリィが勢いよくドアを開けると、俺たちはアスドレクの部屋へと足を踏み入れた。

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