第二十二話ー仲直りー

先輩と話してから、だんだん気が楽になっていった。いつの日か、自分を責める行為を減らしていった。本人も、海里たちも気づかなかった、微かな回復だった。


ある日、何人かが一斉に呼び出された。その中には、彼女が忌み嫌っているものこそいなかったが、犯人と思われる人物はいた。彼女や海里、心子は察した。


呼び出されたのは会議室。相談室よりも広く、椅子や机がたくさんある。そのうちの2個机を引っ付けて、扉を閉めた。先生が

「座ってください」

と促す。

みんな大体固まって座り、自然と話し合いが始まっていった。

「今日集まってもらったのは、もう決着つけようぜ、ってことです」

みんなが顔色を変えず聞く。おそらく察し、わかっていたことなのだろう。

「由菜さんは、この人たちのこと許せますか?」

「許せますね」

「え?」

「は?」

心子と海里が疑問符を浮かべる。しかし、由菜は構わず話を続ける。

「だって、怒ったって、もう帰ってこないんですよ。怒る必要がない。とても悲しいし、ほんとは戻ってきて欲しいんです。でも、帰ってこないならそれまでです。」

こう述べた。

海里は困惑していたが、芯が通っていることを痛感した。

(由菜が思うようにすればいい)

そう思うようにもなったのだ。彼女の成長を感じつつ、ある疑問も浮かんでいた。

みんなあっけらかんとしてるいる中、先生はこう口にした。

「由菜さんがこう言ってますけど、みなさんどうですか?」

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