第27話[ありがとう、友よ]
「ガナッシュ!」
「お?オレオール?どうかしたのか?」
「いや、せっかく合流したわけだし、せっかくだから街の出入り口まで送ってこうかと思ってさ」
「ほーう?オレオールにしては気が効くな」
「俺にしてはってなんだよ…」
2人で街を歩く、見てみると、食材が元に戻ったおかげか街中は大騒ぎで、あちこちで神に祈ってる人が居る、さすが宗教の街、こう言う時にパーティとかをするでもなく、まず神様に感謝するのは俺たちみたいな人間からすると新鮮だ
「なぁーんかあれだよなー、解決したのは俺たちだってのに」
「まぁまぁ、恩を着せるために解決に動いたわけじゃないからさ、ガナッシュだって同じだろ?」
「まぁな、流石に見過ごせなかったってだけだ」
さすが剣聖、人の良さは人一倍だ、こいつのこう言うところを見習わないとな
「そういえば、オレオール知ってるか?最近やけにきな臭い噂が広まってるって」
「?噂?」
「なんでも、別の世界から人間を次々とこの世界にやってきているとか」
「はぁ?別の世界?何言ってんだお前」
「いやこれがガチなんだって!」
「ガチねぇ……」
「今回の俺の遠征任務も、そいつのサポートがメインだったし」
「え?別の世界から来た人間の?」
「おん」
……急に何を言い出してるんだこいつはと思ったが、この目はガチだ、ガナッシュは嘘をついていないだろう…つまり騙されているか本当に別の世界からやってきた人間なのか…いやいやそんな別世界とかおとぎ話じゃあるましい
「そいつがまた強くてさ、すげぇ魔法を使ったと思ったらバッタバッタと魔物を倒してんだよ」
「へ、へぇ……」
突拍子もない話に適当な返事になってしまう、だって仕方ないだろう、いきなり別世界がどうで人間がどうこうなんて言われても全然意味わからない
「まぁ実力は確かなんだが、なんか変なこと言ってたんだよな」
「変なこと?」
「ちーとがどうとか、[もっと良いスキルくれよクソ神!]とか」
「この街中でその発言してたらとんでもないことになってたな…」
この街ですクソ神なんて言おうもんなら本気で死にます、命が惜しい人は他人が信仰しているものを馬鹿にしたりしないようにな、そうじゃないとどこからともなくやべぇ奴らがやってきてでかい釜で煮られるぞ
「まぁこっから少し南に行った街付近の魔物討伐だったから全然平気だったけどさ」
「南……山の方か…」
「そ、街というか村?だったな」
村か……山の方だしさぞ空気が澄んでそうだ、そっちにも行きたいな
「……やっぱり、戻ってくるつもりはないのか?」
「?」
「ギルドにだよ、俺は、わざわざお前が出ていく必要もなかったんじゃねぇかと思ってる」
「ガナッシュ……」
「ギルマスだって、きっとお前なら喜んで迎え入れてくれると思うぞ」
そうか、ガナッシュはカヌレとモナに聞いて、俺が失踪した理由を知っているんだったか…なるほど、それで俺を連れ戻そうと…
「ありがとな、ガナッシュ……でも俺はあそこには戻れないよ」
「……メリナ・マーリスが居るからか?」
「……メリーに裏切られた時は、本当に目の前が真っ暗になったよ、なんで、どうしてとも思ったし、自分のせいだって塞ぎ込みもした、旅に出ると決めた時も心の奥底では、なんで裏切ったやつの幸せを願って俺が旅に出るんだなんて、矛盾したことを思っていたのかもしれない……でも、それだけじゃないんだ」
「……」
「今の俺には、ブレイブが、エクレが、旅を共にする大切な仲間がいるんだ、その仲間を置いていくことはできない……一緒にギルドに行けば、2人なら余裕で審査を通る気もするけど……でも今は、2人と一緒に旅をしていたいんだ、2人はそんなつもりは無いだろうけど、メリーへの想いを断ち切って、俺が前に進めるように背中を押してくれたのは、2人だから……向こうにメリナがいるからじゃない、ここにブレイブとエクレがいるから、俺のそばに2人がいてくれるから、俺は戻れない、戻りたくないんだ」
「……そうか」
納得したように笑うガナッシュ、こいつもこいつなりに俺のことを心配していてくれたんだろう、だから俺は示さなけらばならなかったのだ、「もう何も心配いらない」と言うことと、「オレオール・シュトラムルは元妻への想いを断ち切った」ことを
「だからさ、あんまりメリナのことを責めないでやってくれ」
「は?」
「確かにメリナのやったことは許されないことだけど、俺はもう気にしてないしさ、別になんだっていいと思ってるから、今更どうこうするのはアレかなと思ってさ」
「はっ、相変わらずあまちゃんなやつだな、お前は」
「そうか?……ま、それなら元妻への最後の情けってことで」
「わーったよ、本当は細切れにしてやろうかと思ったけど、拳1発……拳2発……やっぱ細切れで良いか?」
「お前今の流れで……」
でも、それだけ俺はガナッシュからよく思われてると言うことだ、7年の年月俺たちは別のチームとは言えギルドに戻れば本物の兄弟のように生活してきていた、だからある意味当然と言えば当然なのかもしれないがやはり嬉しいものは嬉しい
「でも、なんか意外だったよ、お前ってばメリナ・マーリスにべったりだったし、もっと落ち込んでるものかと思ったが、その真逆でむしろ興味すら出てないとはな」
「俺って案外、薄情な人間なのかもしれないな」
「はっ……でも実際、よくそんなキッパリと捨て去ったよな」
「そりゃいつまでも本人のそばにいたらアレだったかもだけどさ、こうして離れて冷静になれて、かつ一緒に旅してる仲間がいるからかもな」
「なんか、信頼関係強いよな…ずっと昔から一緒に旅してた奴らみたいだよ」
「ずっと……一緒に…?」
そう言われるとなんとも言えないな、俺がブレイブと出会ったのは数日前のことだし、まだ一ヶ月と経ってない……あれ、確かに、俺2人のこと信用しすぎ?もうちょっとは疑うことを知れって話になるよなぁ……
「……」
「オレオール?」
だけど、今のガナッシュの言葉が俺の胸にスッと入ってきた、ずっと昔から一緒に旅をしていた仲間、その言葉がどうにもハマりすぎて
「なぁ、ガナッシュ……」
「?」
「前世とかってあんのかな」
「……突然何言い出してんだお前」
引かれた、さっきまで別世界がどうこうとか言ってたやつに思いっきり引かれたよこんチキショウ
「なんだよ…ちょっと思っただけだっての」
「お前って時々変なこと言うよなー」
「変かぁ……」
割とガチ目の質問だったのは黙っておこう、このまま色々言うとガチで離れていってしまう
「おっ、アレは」
「?」
「俺のチームメンバー達だよ、ほら、お前と一緒に任務に当たった時」
「あぁ、あの人たちか……」
「どうする?挨拶していくか?」
「いややめておくよ、俺はもうギルドの人間じゃないしな」
「そんじゃ、ここでお別れだな」
「あぁ」
ガナッシュが差し出してきた手を俺は悩まずに取り握手する
「たまには帰ってこいよ、お前の後輩2人にも顔合わせてやれ、今頃ちゃんと良い先生してることじゃないか?」
「そうだな…近くを通ることがあったら顔を出すよ、そんときにはお前のとこにもいくから」
「あぁ、妻と一緒に待ってるぜ」
「酒は勘弁してくれよ、弱いから」
「わかってるって」
「そんじゃあな」
「あぁ、またな」
お互いに手を離し、俺たちはそれぞれの道を歩く、ガナッシュはギルドへ、俺は共に旅する仲間の元へ
(この旅に出たことは、運命だったのかもしれないな)
親友との約束を胸に、俺は三人の待つ家へ戻るのだった
その日、俺たちはマカロンの家に泊まることになった
ーカヌレside
「いやー、今日も頑張ったねー」
「後輩2人はぐんぐん成長していくな」
「ねー、こりゃ私も負けられないわ〜」
今日はダンジョンに潜り、実戦形式で経験を積ませていた、最初の方は2人で戦わせて、ピンチになったら私やモナが入って倒す、それを繰り返しているからか、シフォンちゃんもトリュー君もぐんぐん強くなってってる、私達ももっともっと強くならなくちゃね
「……」
「ん?どしたのモナ、そんなキョロキョロして」
「んー?別に何にもないんだがー……」
「?」
今日、やけに周りをチラチラ確認してたけど、何かあるのかな……
ゾクッ!!
「っ!!??」
なに、今の……体が一瞬硬直して、動かなくなった……一体何で……
「…!」
後ろから視線を感じる……その視線の方に振り向くと…1人の男がいた
「……」
ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくるあの男……いったい何が…
「モナくん!カヌレちゃんの目を塞いで!!!」
「えっ!?」
モナに目を塞がれる瞬間、あの男に一本の矢が飛んでいくのが見えた
ー
ライラックの花言葉[思い出][友情]
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