女神様の代行人奮闘記。~ゲーム転生者が多すぎる世界の後始末~

kanzoh

第0-1話 プロローグ 1/3

いつから此処にいるのか。いつ気が付いたのかも分からない。

それでも、だんだん意識がはっきりして来るに付け、朧気ながら理解した。


自分がもう死んでいると云う事を。


呼吸をするのもままならない状態だったのに、何の苦痛もない。

あれ?俺は今呼吸をしているのか?身体の感覚は戻っていないのか。

白い、只白い空間。とにかく見渡す限り何も存在していない。果てが分からない。

誰もいない。音もしない。匂いもない。何かが動く気配もない。


暫くはぼんやりしていたが、だんだん退屈して来た。

身体を動かそうとしてみたが、思う様に動かないので、頭を使う事にした。

今の状況を考えても仕方ないので、何か……、大したことは浮かばないな。


過去を振り返ってはどうか。


走馬燈の様に勝手に過去が見えるんじゃないのか?自分で思い浮かべるのか……。

たいして面白い人生でも無かったな。両親は愛情たっぷり育ててくれたので大好きだったが、

相次いで亡くなってからは、高校を中退して働いてたしな。それもブラックの社畜だったし。

挙句の果てに、ウィルスが蔓延している所に行かされて、ものの見事に感染し、現在に至った訳だ。


尊敬する人とか、友達とか、恋人はいなかったのかって、うーん、どうだろう。

両親は尊敬していたけど、えっ、身内はダメ?

学校に先生ったって、小学校の時は女の先生で身贔屓が酷い上にヒステリーすごかったし。

中学校の時は苛められてたのを助けてくれるどころか、逆に参加してたし。

高校は半年で辞めたし。


仕事は……、中退の俺を拾ってくれた恩はあるけど、清々しいほどブラックだったし。

友達もこれと云って、いなかったなぁ。親友なんてとてもとても。


恋人ったって、好きになったことが無い。初恋?おそらく幼稚園の時だったか、その先生に。

顔も忘れたけど。


女優さんとか、アニメのヒロインとか?

TVも映画の見なかったし。ゲームはハマると仕事に影響すると思ってやらなかったし。

えっ、知ってるって?


趣味?

休憩時間にネット小説を読む程度だ。あと、音楽を聞き流すくらい。

この時、ちょっとお気に入りのネット小説の登場人物が頭に浮かんだが、気にしなかった。

後で死ぬほど後悔する事になる。死んでるが。


ああ、高校の時、同級生にバンドに誘われた。そしてベースをやったな。半年だけど。

そいつは高1なのに、動画サイトで結構人気なギタリストで、後で聞いたんだが、背が高く大人しめで、

あまり自己主張のしなそうなヤツを探していたとか。俺ばっちこい。楽器に腕はどうでもいいのかい!

で、誰もやりたがらなのでベース。失礼な!ベースはカッコいいんだ!全国のベーシストに謝れ!!今だから何とでも言える!!


そこのボーカル、先輩なのだが、音域と声量が物凄い上にきれいな声と云うとんでもない人だった。

天使に歌声からデスボイス迄、曲によって使い分けてた。声は楽器なんだと思ったよ。


あの顔にあの声は詐欺だ。んで、御多分に漏れず我が強いというか我儘というか、いつもバンドのメンバーと喧嘩してらしい。

今思うと、あれはメンバーが先輩と同等だと思っていたからだと思う。しょうがない。先輩は別格だった。


なので先輩のバックバンド的な存在が必要だったのだ。借り物の楽器でしかもヘタクソなんで、しょっちゅう怒られてたな。

怖いんだよとても。でも結構誤解されてたけど、悪い人では無かった。

鼻筋は通ってるし、形のいい眉にバッチリお目目。イケメンと言えなくも無いが、えも言われぬ迫力がある。

ステージ映えする顔と云うんだろうか。ガタイもでかいし。目立つ事、この上ない。


見た目に反して、面倒見の良い人だった。相談には乗ってくれるし、飯おごってくれるし。

学校止める時はホント、親身になってくれたよ。


存在全体でROCKしてる男。髪の毛は暴れてるし、第一顔の主張が激しい。眼力で人が殺せるよ、あれは。

そう、ちょうど目の前にいるあんたみたいに……、


いつの間にか目の前に霧崎先輩がいた。


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