ある屋敷の伝説

“領主ヴェルゴーズの城”

 その城は、古くから“神隠し”の屋敷といわれていた。特に女子供がいなくなることがおおかった。城のみならず、それを囲む林そのものが陰鬱な気配をもち、城付近の湖の影響か、霧がかかることが多かった。怪奇と事件の両方から調べられる事が多かったが、しかしその詳細は分からずじまいだった。


 それでも地元の人間によってその屋敷が愛されていたのは、古くはそこが国の端、隣国の好戦的国家“クナール”との間にあり、幾度もその進行を退けてきたからだった。まあ、最も近代、古代の悪魔たちの復活からは人々は国家同士の戦闘を避けるようになり、人間同士が争っている余裕などなくなったのだが。


 いま、その城の礎のあとに小さな屋敷がたち、その子孫が管理し

““領主ヴェルゴーズの屋敷”

 と呼ばれ、変わらず恐れられていた。そこで最近起きたいくつかの不可解な事件によって、エクソシストが呼ばれたのだった。

 それは、“神隠し”ではなく、霧がかかる頃に現れる“風”が怪異を巻き起こすという事だった。

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