第16話

.................ダメだ................思い出せない..............


どうして!?

彼と過ごした日々の記憶はこんなにも心を満たしてくれ、思い出に残っているのに

この記憶も消えて行ってしまうのかな...............?


どうしてなのぉ!?どうしてどうしてどうしてぇぇ。

誰か応えてよぉぉ...................................!



ガチャリ



「殿下、陛下が夕食を共にと.............殿下!?どうなされました!!??」


侍女のクレアが驚いた様子でこちらを見てくる。

気が付けば、私の周りは紙くずだらけで、最後に時間を見たときから、3時間も経っていた。


「大丈夫よ。それよりも、体調が優れないから、今日は遠慮しておくと陛下に伝えてくれる?」


「かしこまりました。夕食は、部屋でとられますか?」


「そうね。」


「持って参りますね。宮侍医をつれてんで参りますので、もうしばらくお待ちください。」


「そ、そこまでしんどいわけでは無いから大丈夫よ。本当に大丈夫だからっ!!」


「...........分かりました。体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。」


そう言って部屋から出て行った。



はぁ...............................................


彼のことを思い出せないのに加え、クレアのことも考えないといけないなんて..........

問題は山積みね。





小説の設定では、クレアは教会からのスパイ。クソドリック達にソフィアの情報を教えたのもこいつ。でも、うかつに手は出せないのよね。


今、帝国と教会は死ぬほど仲が悪い。うっかり、クレアが事故死なんてすれば、こちらの言い分聞くこと無く、何かしらの口実を立て、攻めてくるだろう。


また、原作を読んだから知っているけど、クレアは教会で力を持つ枢機卿の腹違いの妹。


クレアのことを許すつもりは無いけど、なんとも手の出しづらい状況ね..........



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