第75話 採取しつくす勢いで
冷鱗草は川辺に生えていることが多い水草だ。
サイズは20センチほどなので見つけ難いということはないのだけど、他の水草に紛れていることがあるので、良く確認していないと見逃すことがある。
しばらく水辺を歩いたところで、群生というほどではないもののまとまって生えている冷鱗草を見つけることが出来た。
さっそく冷鱗草の採取を始める。今回鞄の中から取り出したのは先ほど説明した革製の手袋と、採取用のハサミ。後は川の中に完全に沈めることが出来るサイズのバケツ。今回はそこまで大きな川ではなかったので、直径20センチほどの小さい物を使うことにした。
この冷鱗草。より良い状態で採取するためには、保管するまで水の中から出さずに採取作業を進めなければならない。
水上に出してしまうと徐々に劣化、傷み始めてしまうため採取後も水の中に保管し持ち帰る必要がある。
逆に言えば水の中に入ってさえいれば劣化はほとんどしない、管理が少し楽な素材ではある。
「冷鱗草は茎をふくめて採取してもいいのですが、茎は取らず葉のみを採取した方がさらに劣化し難くなるので、水中で葉のみを採取することをお勧めします。
と言っても自生した状態のまま葉だけを採取するのは難しいので、一度茎ごと採取し、そこから水中に葉を取っていくのが一番楽に採取できると思います」
冷鱗草は葉が茎についた状態のままにしておくと、葉に蓄えてある成分、ポーションを作る際に大事な部分が茎側に吸われてしまう。吸われてしまうなら茎ごと使えばいいと思うかもしれないが、茎はあまりポーション作りには向かない成分も含まれているため、そういう使い方はできない。
濡れないようにロングタイプの長靴を履き川の中に片足を入れ、水中で冷鱗草を採取しバケツに水ごと入れるとそのまま地上に上げる。水の中から取り出さなければ問題ないので、バケツの中で茎から葉を取っていく。
そして茎から取った葉をバケツの中でカバンから取り出した瓶の中に入れる。
今回は普通に川の中に足を入れて採取しているけど、そうすると川底の泥や小石を巻き上げて採取する素材によっては傷つけてしまう可能性があるから、あまりしない方がいいんだよね。
まあ、冷鱗草はそう簡単に傷つくようなものではないから、水の中に入って採取してもいいんだけどね。
「冷鱗草を採取するときの注意点はこのくらいですね」
そう言って冷鱗草の葉を詰めた瓶をカメラに向け、中に入れたものをしっかり確認できる程度映したところで鞄の中にしまう。
「おっと。こうやって採取中にモンスターが襲ってくる可能性があるので、このように水の中に入っていてすぐ動けない状態で採取する場合、すぐ対応できるように普段よりも警戒しておく必要はあります」
採取中に寄ってきていたモンスターを処理しながらそう注意をする。
川の中に足を入れているので通常よりもすぐに動くのは難しい。自覚していても動きにくいことには変わらないので、いつも以上に警戒してより早く動き出せるようにしておく必要がある。
まあ、この辺は基本的なことだからわかっているとは思うけど、一応注意をしておく。
最初の冷鱗草を採取するところを撮影したので、あとは淡々と近くに生えている冷鱗草を採取し始める。
いくらかまとまって生えて入るけど、冷鱗草はルバ草みたいに沢山いっぺんに採取できないので、川辺を移動しながら見つけた限り冷鱗草を採取していく。
見つけた冷鱗草をすべて採取し続けたところで撮影し始めてから4時間弱。タイムスケジュール的にもいい感じなので、そろそろ最後の素材を取りに別の場所に移動する。
最後に採取する素材はルメン草。
ポーションの素材のなかでも特殊な植物で、採取するときの注意点を知らないと一切採取できない、ダンジョン産の植物らしい変わった特性を持つ。
ルメン草は樹や岩の影に生えている淡く発光している植物で、その見た目から見つけるのは難しくないが、そのまま採取してしまうとすぐに枯れてしまう。
この植物をちゃんと採取するには光が当たった状態でなければならない。この時当たっている光は人工的な物では駄目で、ダンジョンの中にあふれている光、俗にいうダンジョン光が直接当たっていなければならない。
そのため、ルメン草が生えている場所に影を作っている物を取り除いてから採取する必要がある。
ルメン草を採取するために今までいた場所から樹や岩が転がっている場所へ移動する。
樹や岩がまばらに存在している中、岩が複数集まっている場所の影が濃い部分に薄っすら光るルメン草を見つけることが出来た。
この状態で採取してしまうと枯れてしまうため、一度見つけたルメン草に目印を付け、影を作っている岩を壊して採取できる環境を作っていく。
このルメン草。ダンジョン光が当たっていれば採取するのは容易なんだけど、その周辺にある障害物を破壊するのが結構大変なんだよね。
この障害物って今壊している岩もその一つなんだけど、こいつらどのダンジョンにもある有り触れた存在だから、採取したところで二束三文にすらならない。ぶっちゃけ言うとギルドの買い取り品目に存在していないので、採取するだけ無駄って言うね。
まあ、木材に関しては普通の使い道があるから買い取ってはくれるけど、この場所から持って帰るだけの価値になるかと言えばそんなわけもない。
それとルバ草みたいに土ごと採取すれば大丈夫だと思うかもしれないけど、その方法で採取しても枯れるんだよねこいつは。
さらにルメン草の周りには見た目がそっくりな植物が生えている。陰草って言うんだけどルメン草とは逆に影の中に生えている時は周囲の光を吸収する特性を持っていて、ルメン草が光っている時は見分けがつくんだけど、光が当たるようになると本当に見分けがつかない。
しかも、見分けがつく内に陰草だけ採取すると近くのルメン草が枯れるという、実に面倒な特性を持つ植物素材である。
私が最初岩を破壊する前にルメン草に目印を付けたのはこのためなんだよね。
影を作っていた岩を破壊し終え、ルメン草を採取しそれをカメラに映す。ルメン草は今回採取した他の植物とは異なり、採取後の管理は特に気にしなくていい。採取に成功さえすればそのまま鞄の中にしまってもほぼ劣化はしない、採取する側にとって非常にありがたい植物である。
「ルメン草を採取するにはこの方法が一般的です。ただ、実はもう一つ採取方法があって、ルメン草と対となっている陰草を同時に抜く方法です」
陰草を採取すると近くのルメン草が枯れるって聞いて、気づく人はいると思うけどこの2つ、対になっている植物なんだよね。
こっちの方法は岩とか樹を壊す必要がないから楽な分、ちょっと技術がいるのだ。基礎的な魔力操作の1つなんだけど、ほんの少し陰草側に魔力を当てると対応したルメン草が少しだけ強く光る。それを利用して対になっている物を見つけるのだ。
当たり前だけど、この魔力が強ければルメン草は枯れるし、弱すぎるとほとんど光が変化しなくて認識しにくいと、この加減が少し難しい。
練習すれば誰でもできるようになる範囲だけど、すぐに出来るようになるかは個人差があるからね。
だから、こういうのが苦手な人は今私がやったみたいに影を作っている物を壊してからの方が確実に採取ができる。それに一々対になっているルメン草を探す必要もないしね。
そんな感じで最初のルメン草は影になっている岩を壊してから採取し、その後は対となっている陰草と同時に採取する方法を使って、最初に決めた時間制限ギリギリまでルメン草を採取し続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます