第1話 面倒で厄介な依頼
0話の前の話ですが、ここからが本篇になります。
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それでこの面倒くさい状況の発端は、いつも通りギルドに向かい提示されている依頼を受けようと依頼受付ボードの前に立った時、いつも受付を担当しているギルド職員の女性が私の元にやってきたことから始まる。
普段ならこのようなことはないんだけど、たまに緊急の依頼がある時にこういった対応をとってくる時がある。
それを見て、今回も緊急で何かが必要になったのかなぁ、と思ったんだけど、それ以上に厄介な内容だった。
私は普段からダンジョンに潜って素材を採取することを主に活動しているコレクターという職に就いている。ランクも上から2つ目のAランクと上位である。
私の歳でAランクになっている人は本当に少ないから、数少ない自慢できるところだ。言葉だけだと信じてくれない人も多いけど。
やっぱり見た目なのか? 見た目が悪いのか?
私の体型のせいなのか、背が低いからなのか未だに高校生どころか中学生に見間違えられることもあるんだよね。
こういうのって人によっては自慢にとられることもあるけど、毎度毎度同じように歳の確認をされる身になってほしい。本当に面倒なんだよ、あれ。周りからは変な目で見られるしさ。
おっと。話がそれた。
ともかく私のランクの関係で、それなりの頻度で特定の素材を採取してきて欲しいという依頼を受けることがあるんだけど、今回もそれかなぁと思っていたら完全に別系統の依頼だった。
「朱鳥さん」
「ああ、秋月さん。また、緊急の採取依頼です?」
「いえ、今回は別案件で」
「別案件?」
今までこういった形で受けた依頼はすべて採取系の依頼だったので、別案件と言われて首をかしげる。
「少々面倒な依頼がありまして、それを朱鳥さんに受けてほしいんです」
若干目をそらしながら言いにくそうにしている秋月さんの様子を見て、少々面倒で済まされなさそうな気配を感じた。
「そういうのはあまり受けたくはないんですけど」
秋月さんには昔からよくしてもらっているので断るのはなるべく避けたいけど、厄介ごとにはかかわりたくないのでやんわりと断りを入れる。
「できれば受けていただけると助かります。他に適当な方がいないんです」
「えぇ…いや、そう言われても」
まあ、こうやって直接話を持ってきている段階で他に頼める候補が少ないだろうことは理解できる。
だけど、それとこれとは話は別だ。
「お願いします。用意できる限りの報酬は用意いたしますので」
「それじゃあ、ダンジョン内での自由採取権を」
「それはできる限りの範囲を超えているので無理です。さすがに法律を無視するのはちょっと…」
「ですよねー」
完全に言い切られる前にあっさり断られた。
まあそうだよね。国にある組織の中でも最近特に力を持っているダンジョンギルドだとしても、法律を無視することはできないか。
実はコレクターってダンジョンの潜れる範囲に制限があるんだよね。
ダンジョンの奥に向かって進み戦い続けるシーカーとは違ってコレクターって戦闘力がなくても就ける職だから、ダンジョンの中に入れても潜れる範囲が限定されているのだ。
私もその例に漏れず、単身で50層以下、区分的には下層と呼ばれる場所から下に潜ることができない。一緒にシーカーの人と潜ったり条件を満たせばその制限はなくなるのだけど、他の人と一緒に潜るってことは自由に採取できないってことだからね。あまり好きじゃないんだよね。
それと条件に関しては私はどうあっても満たせないから存在しないようなものなんだよね。だから現状シーカーの人たちについて潜るしか下層へ降りていく方法はない。
だから単身で潜れる特例が欲しかったのだけど、即答されるくらいには無理だったね。
「内容だけでも聞いていただけると助かるのですが」
「それ、聞いたら受けないといけないやつですよね?」
「……いえ、そこまでではない……ですかね。あまりよくはないですけど、朱鳥さんは依頼内容を口外するような方ではないのはわかっているので」
まあ、緊急の依頼なんかは大体そうなんだけど、他人に受けている依頼の内容を話すのは普通にダメなんだけどね。ギルドで公開されている誰でも受けられるものは別としてね。
「本当に私しかいないんですか?」
「なかなか、条件を満たすような方はいなくて。ちょっと特殊な依頼内容なので」
ここまで粘るとなると、どう予想を立てても面倒な依頼なのは間違いない。
「ギルドからの直接依頼になるので報酬に関しては多く用意できるんですが、やっていただけませんか」
「…………内容を確認してから判断します」
結局のところ依頼の内容がわからない以上、やるやらないの判断は下せない。それに、やっぱりこの手の依頼はギルドからの印象がよくなるから、受けられるなら受けておいた方がいいんだよね。本当に面倒なものが多いけど。
「ありがとうございます。大丈夫だと思いますが、聞いた後に断るのであれば口外はしないようにお願いします」
「了解です」
それから他の人に話を聞かれないよう奥の部屋に通されて依頼の内容を聞くことになった。
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