第3話 うそでしょ?
まあ、こんな感じで男たちの依頼とは別にギルドからの依頼も受けた状態でダンジョンの中に潜ってきたのだ。
先ほど男の一人が投げた誘引香に引き寄せられてきたモンスターの足音がより強く聞こえるようになってきた。これだとあと1分もたたないうちに私の目の前まで来そうだ。
しかし、誘引香を使っておいて男たちはどうやってモンスターから身を隠すんだろう?
ここは周囲が開けているフィールドタイプの階層とはいえ、すぐ後ろには階層間を移動するための出入り口があった大岩があるんだけど、隠れるには向いていないし。
気になって男たちの様子を見ようと後ろを振り向くと、あいつらは大岩を背中に障壁を張ってこちらを見てゲラゲラと笑っていた。
なるほど。障壁の中にいるとき気づかれ難くなる身隠し系のスキルを持っている奴がいるのか。背後はそう簡単には壊れない岩山になっているし、正面さえ気を付ければどうにかなるのか。最悪どうにもならなさそうなら後ろにある出入り口に逃げ込めばいいんだし。
というかよく見たら地面にもちょっと細工されているなこれ。
ここに来たときは普通に来れたけど、気づかずに走ろうとしたら足を挫くくらいにはデコボコになっている。この状態からして土魔法を使える奴もいるっぽいね。
本当に普通に探究者やっていればいいところまで行けそうなのにどうしてこんなことに手を出してしまうのか。ま、男たちの態度を見れば一目瞭然か。
盛大に男たちのことを呆れていると視界にモンスターの姿が現れた。そろそろ構えておいた方がいいかな。
なるべく男たちに気付かれないよう、私は普段から使っている少し大きめのナイフを構えた。
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私が次々に向かってくるモンスターをさばいているうちにギルド職員の人が到着したらしく、男たちが捕縛されていた。
この階層に出てくるモンスターなら普段相手をしてる相手より弱いし、特に手間取ることもなく倒せることはできるけど、数が多くなるとやっぱり面倒だし疲れるね。
それに素材的にもそこまで旨みがあるモンスターが居なかったから、徒労感が強い。旨みがあまりないと言っても多少お金になるので落ちている素材は回収していくけれど。
モンスターの方も完全に途切れたのを確認したからか、顔見知りのギルド職員の人が気まずそうな顔をして近づいてきたので、周りに散らばっている素材を拾い集めている手を止めて、近づいてきた職員さんに頭を下げる。
「お疲れ様です」
「あの、そのですね。ちょっと……」
変な表情をしているけど何かあったのかな。
とりあえず、証拠用の動画を撮影する必要はもうないので、撮影を止めるために撮影機材を
「どうかしました?」
「えっと、動画のことなんですが」
なぜに小声? もしかして証拠用の動画撮影、失敗していた? いやでも、こうやって捕まえに来ているから映像自体は取れていると思うのだけど。何か変なことでも起きていたのかな。
「もしかして撮影できていなかったとか」
「いえ、そういうわけではなくてですね。あの……」
「?」
ギルド職員の人は本当に言いにくそうな表情でさらに近づいてくると、他の人に聞かせられないのか口元を手で隠しながら言葉をつづけた。
「動画、全体公開になってます」
ぜんたいこうかい……? 全体こう……かい。…………全体公開?!
「えっ?」
ちょちょ、ちょっとまってどういうことなの?
あれ? 私限定公開の設定にした……よね? あれ、してない? いや、説明されたとおりにしたはず……、最後どうしたっけ。あれ。設定して、それで保存した?
限定公開の設定オンにしてそのまま画面閉じて……、あいつらと合流する前に撮影開始して……
……設定完了する前に画面閉じてた?
いやいやいやいや。
はぇ、嘘じゃん。でも設定の最後に完了ボタンを押した記憶がない。てことは初期設定のまま撮影開始して……おうわぁ!
ととととりあえず、撮影を止めないと。あああ、でも今見ている人がいるんだっけ!?
「えっと、見ている人いるかわからないけど、用事も終わったので配信切りますね」
いきなり切るのは見ている人に悪いと思って、ばいばいと言ってからギルド職員さんと話しているうちに戻ってきていた、撮影に協力してもらっていた子からカメラを受け取ってすぐに配信停止ボタンを押した。
これで大丈夫なはず……って、そんなわけないよね。
えぇ、嘘じゃん。これまで全部オープンになってたの? 多少引きの動画になっていたはずだけど、最後のところとかがっつり私映っているよね?
不特定多数に対して動画を配信する予定じゃなかったからそのまま撮影していたけど、何か映り込んじゃいけないのとか映っていないよね? ダメそうな物はあいつらに見えないよう最初から隠していたから多分大丈夫だと思うけど、モンスターと戦っているときあまり気にしていなかったからやばいかも。
それにギルド的にこの動画って公開しちゃっていい奴なのかもわからない。
これはまずいのでは?
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