転生したけどこの世界って自己管理能力ってスキル取得できる?

乙浜 涙

プロローグ

第1話 宣言

2022年10月半ば


胸が激しく鳴っている。

 

口が上手く回らない。


身長が低い男は、一回り程年上の男に、話しかけた。



「社長……、ちょっとお話があるんですけど、」


「何?」


「あの……、ちょっと、えっと…、この会社やめようと思ってるんですけど、」


「うん」


「来月末にやめようと思ってるんですけど、えーと…、1ヶ月分の有給が残っているんで、あの……、有給消化してからやめようと思ってて」


「あ、そうなんや。来月末ってことは11月末ってことか。ええよ〜」


「あ、ありがとうございます!有給消化はちょうど1ヶ月なので今月末まで、あと1週間ですけどそこまでここで働きます。」


「わかった。よろしく〜」


 

3年半前に知り合いに紹介してもらい入社した会社を、やっとの思いで辞めるのだ。

俺は社長に話す前とは違う胸の高鳴りを感じていた。




 

男は小さい頃から猫を被り、親や友達、先生にいい顔をし、いい人ぶってきた。

身長も153cmと小さく童顔なため、大人に好かれやすく可愛がられたように思う。

勉強も人並みにでき、高校受験も推薦で難なく合格した。

商業高校の情報処理科であったが、国家資格を取るなどして順風満帆であった。


だが、大学受験で躓いた。単純に落ちたのだ。

塾にも行かしてもらい、知り合いにタダで英語の家庭教師もしてもらった。

そこまでしてもらっていたが、全くと言っていいほど勉強をしていなかったのだ。

 

大学受験に落ちた後のことを、全く考えていなかったため、最終受験の受付ギリギリの専門学校を受験した。

国家試験を取っただけあり、そこの試験は簡単であり合格した。



男はここで気づくべきであった。

気づいていたのかもしれない。

知らぬふりをしていた。

いや、なんとかなるだろうと思っていたのだろう。


無事、専門学校に入学した。

京都府の専門学校だが、生まれが兵庫県のため京都府に一人暮らしし、コンビニのバイトもすることになった。

 

ここで初めて、働いて給金を得る経験をした。

初めて給料が口座に振り込まれた時の喜びは忘れられない。


1週間した頃には半分も残っていなかった。

男はアイドルヲタクであった。

京都から大阪まで通っていたのだ。


併せてコンビニバイトの勤務時間は夜。つまり夜勤である。

男の生活リズムが崩れるのも難しくなかった。


――結果、2年生になる前には完全に学校に行かなくなったのだ。

だが、バイトとアイドル現場には通っていた。



2019年1月


男が20歳の頃である。



川上龍生かわかみたつきです。」

 

「入場代1000円とドリンク代500円の併せて1500円になります。どのグループを見に来ましたか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る