エピソード2:混ざりあうスパイス

それから数日後、アリサは「カフェ・リョウ」の常連客となった。彼女はリョウの料理のファンとなり、日々のレビューを書くたびに彼の料理を語り尽くす。それが、リョウとアリサの日常となった。


ある日、リョウはアリサに新たな料理を提供した。それは彼が最近試作中の「野菜と海老のハーブ炒め」だった。鮮やかな野菜とぷりぷりの海老が、ハーブの香りと共に口の中で広がる一品。


アリサがその料理を一口食べると、彼女の瞳が輝きを増した。「リョウさん、これは素晴らしい!ハーブが食材の味を引き立てていて、一口食べるたびに新しい発見があるんです。」


彼女の言葉に、リョウはにっこりと笑った。「アリサさん、そう言ってもらえると本当にうれしいです。もっともっと美味しい料理を作って、アリサさんに喜んでもらいたいです。」


アリサはリョウの言葉に顔を赤らめながらも、優しい微笑みを浮かべた。「私もリョウさんの料理を食べるのが楽しみです。」


リョウとアリサの間には、それまでとは違う新たな空気が流れ始めていた。お互いに相手の存在が心地良いものとなり、レストランでは二人だけの特別な時間が作られていた。


その日から、リョウとアリサはより一層深く結びつき、互いに影響を与えあうようになった。アリサはリョウの料理の影響を受け、自分のレビューに新たな視点を持ち込むようになった。一方、リョウはアリサのレビューを通じて、自身の料理に新たな風味を加え、自身の技術を更に磨くようになった。


しかし、彼らはまだ自分たちの間に芽生え始めた感情に気づいていなかった。それはまだ微妙なスパイスのようなものだった。しかし、そのスパイスはすでに彼らの心に混ざり合い、次第に色をつけていく。そのスパイスが生み出す味わいは、甘いものなのか、それとも辛いものなのか、それはまだ誰も知らない。彼らの物語はまだ始まったばかりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る