乙姫セリカ牙を剥く。

僕は浮かれていた。死地を切り抜けて、やっと僕にも光が見えたかも。


勇者として認められるのは照れ臭いけど、それでも戦うものはいずれ勇者になりたいと思うし。


ただ、乙姫さんに無理矢理勇者にさせられたけど、バチカンはともかく、日本では僕を勇者と認める動きになってる。


このまま勇者になれば、僕を援助してくれるスポンサーもできそうだし。


スキルのない僕でも、武器の力を使ってなんとか強い冒険者として生きて行けるかも。


そんな甘い願望を僕は持っていたんだ。



ただ、突然やばいことになっちゃったんだ。


その訪れは僕が勇者になって、学校に凱旋してそのまま平和な日常を過ごしていた午後の終わり、放課後にやって来たんだ。


いきなり黒い車のリンカーンが放課後帰ろうとする僕の前に止まって、赤毛の20歳ぐらいのきれいな黒の白のツートンのレディースーツと藍色のネクタイを締めた女の人が僕に笑いかけてきた。


彼女は名刺を僕に渡してから、僕に言った。


「ヘイ。ユー。アメリカの兵器を使ったでショウ。30億円要求しマスよ。勝手な兵器の借用ができるなんて世界に思ってもらっては困るデス。見せしめデスねー♪」


アメリカ大使館の人だった。僕に請求書を突き付けてきた。


そう。僕は前の戦いで、バーズグォリを倒すために、アメリカ国防省の衛星兵器であるパトリオットレンジを使ってしまった。それは勝つためにはどうしょうもない手だったけど、いち早くそれを把握したアメリカは、僕に制裁を与えたんだ。


ひぇえええええええええ


思わず本が出た。僕はピンチになると本が体から飛び出すんだ。


ポン


https://kakuyomu.jp/works/16817330647990142992


「まあ、ユーも勇者になったのだカラ、稼ぐのをがんばるデスヨー」


僕が呆然と家で30億の借用書を持って立ち去ると、そこに今度は黒のリムジンが止まって、乙姫セリカがきれいな微笑みを讃えながら降りてきた。


「お困りのようですね?」




そして、僕は縛られて、今、乙姫セリカに監禁されている。


場所は六本木のタワーマンション。雛沖地区にある芸能人と、IT企業家と、ダンジョン経営者が多く住む閑静な住宅街だ。


そこの最上階のセリカのプライベートルームに僕はいる。


僕の複は上半身は脱がされて、そこに乙姫セリカの指が這わされている。


「きれいな体ですね。傷跡があるけど、美しい体です・・・」


「ううっ、なんでいきなり監禁なんてするの?」


「あなたをゆっくりゆっくり私のものにするためです。私だけのものに。身も心も」


「ひっ、やめてぇぇ」


「きれいな声。その声も私のものです。大好きですよ。伊藤くん」


「だ、だめだったら、触らないでよ!!」




「ふふふ。伊藤くんは30億の私への借金があるんですよ?」


「ねえ。伊藤くん。あなたには30億を返す当てなんてないでしょう。私なら財産の半分を出せばあなたの借金を肩代わりできます。交渉なんて私たちには必要ないと思いませんか? あなたが今、私のものになったら、すべてがうまく行くんです。あなたが私のペットになればいいんです。痛いことはしません。どうします?」


「ふふふ。私と気持ちいいことしません? とろとろにしてあげますよ」


えっ?


ど、ど、ど、どうしよう。



乙姫セリカのファンの人が泣きながらビルの外で絶叫している声が聞こえた。


「うおおおおおおおおおお。伊藤ぉおおおおおお。お前やったなあああああああ。これで乙姫ちゃんとの仲は絶対的に進むぞおおおおおおおおお!」

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