22.勇者さん、寄り道する

 世の中にはまだまだ表に出ていないだけで強い人達がいるんだなぁ……


 ジサンさん……か……

 じさんさん……

 ……呼びづらっ……!


“さん”が二つ重なって呼びづらいなんて他人の立場に立つことが苦手であったジサンが命名時に考慮できるわけがなかった。


 ツキハは一人、帰途にて思う。


 流石に私とか”ミテイ&ミズカ”より強いってことはないと思うけど。


 ツキハは自分自身が知る最強クラスのプレイヤーの名前を想起する。


「なーんかもう少し、修行しよっかなー」


 ツキハは強いプレイヤーに出会い、もっと強くならねば……という単純な思考により、今日はもう少し経験値を積むことにする。


 東エリアから西エリアへの一本道の手前にはレベル40、下位の魔公爵程度の強モンスターであるブラック・シロクマがいる。


 さて、こいつをソロで……


 ツキハはブラック・シロクマの部屋に入る。


 ……そして、それを見ていた者達がいた。



 ◇



「ふぅ……」


 ちょっと手強かったけど、こいつくらいはソロでしっかり倒さないとね。


 そう思いながら、戦闘用の部屋を出る。


「っ……!?」


 目の前の光景に流石の勇者も焦燥する。


「ぐっどいぃいぶにんぐ!」


「勇者さーん、来たよぉおお」


「っ……!?」


 そこには、十数人規模の武装した男女が勇者の帰還を待ち伏せしていた。


「あんた達、何を……」


「何って、言ったでしょ? 覚えてろよ! って……何? もう忘れたの? もしかして脳筋かな?」


 そう言った男は確かに先ほどジサンを襲撃した男達の中にいたような気がした。


 筋肉質で、頭には派手なバンダナを巻いている。


「っ……」


「さーて、隠しクエストの始まりですよ。 そういうの好きでしょ? 勇者ちゃん」


 バンダナがニタリと口を歪めて言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る