転移老夫婦の農業チート

紅 蓮也

第1話 異世界神からの頼みなのじゃ

 儂は佐々木武雄80歳じゃ。80歳と言うと驚かれるくらい若く見える容姿で周りからは50代くらいとよく言われる。


 築60年の一軒家でひとつ下の婆さんと二人で暮らしておる。


 婆さんと何とか二人で畑や田んぼをやって来たが、子供たちも孫たちも農家を継ぐ気がないので、流石に二人ではキツくなったから田んぼも畑も会社を辞め、農業がしたくて田舎に来たという隣に越してきた一家に貸した。


 儂らは、野菜作りは好きなので、庭で僅かばかりの家庭菜園をやりながら孫たちも成人していて田舎なんかに遊びに来ることもないので、孫が小さかった頃を思い出しながら小学生の隣夫婦の息子さんと娘さんの遊び相手をしたりしておる。


 隣夫婦の両親は、夫婦が若いうちに早くに亡くなっており、子供たちは祖父母を知らず、じいちゃんとばあちゃんができたみたいと嬉しいことを言ってくれるのじゃ。


 夕食を済ませ、風呂に入り、布団に入り寝た。


 明るくなったので、もう朝かと目を覚ますと隣で布団も掛けずに寝ている婆さんは居るが自分の家でなく、布団もなく浴衣のまま全てが真っ白な空間にいた。


「ここはどこじゃ?」


 とりあえず婆さんを起こすか。


「おい、婆さん。起きろ、ようわからんとこに来ちまったぞ。起きろってば」


「何ですか……じいさん。田んぼも畑も辞めて早起きする必要無くなったのですからもう少し寝かせてくださいよ。

朝食は8時くらいでいいでしょう。おやすみなさい」


「何言っているんじゃ。それどころじゃない。儂らよくわからんところに来ちまったんだよ。

真っ白な空間じゃし、儂らもしかして死んじまったんじゃないのか」


 明日も遊ぶ約束してたのに子供たちを悲しませちまうじゃろうな。


 それより儂らの遺体を発見するのが子供たちではなければ良いが……

 もし子供たちが発見しちまったらショック受けるじゃろうし、トラウマものじゃろうな……


「何言っているんですか?死んじまっているわけないでしょう。意識があるのですから……ここ何処です?あたしゃらの家ではないですね。真っ白な空間ですもんね。本当に死んじまったんでしょうか?」


 起きた婆さんがそう言った。


 だからさっきからそうじゃねえのかって言ったじゃないか。


「あなたたちは死んでなんていませんよ」


 婆さんと話していると目の前に光に包まれ人影が見えたかと思ったら死を否定する声が聞こえたかと思ったら光が消えて真っ白な装いの金髪の若いあんちゃんが立っていた。


「若い金髪のあんちゃん、おぬしは誰じゃ?ここは何処じゃ?」


「私はお二人が居た地球とは別の世界の神です。神ですのであなた方からしたら若く見えるでしょうが、あなた方よりかなり長く生きていますよ。

ここは神界、異世界の神の世界ってところです。

地球の神から100年前にも送ったがまたそちらに人間を送っていいか相談され、私としても他の世界から100年に1度の頻度でこちらの世界に来てもらうようにしています。

地球からの転移者は、私の世界に魔力だけでなく他のことでも良い影響与えてくれる者が多かったので地球の神にこちらに来てくれそうな人間が居ないか相談しようとしていたので、有り難い申し出でした」


「なるほどのぉ。それで儂と婆さんが地球の神が選んだ人間で、ここに連れて来られ儂らに神様の世界に来て欲しいってわけじゃな。

儂らは神様の世界で何をすればいいのじゃ?何か役目とかあるのかの?」


「その通りです。細かく説明していないのに理解が早くて助かります。

来ていただくことに了承し、私の世界に来てくれたらお二人のお好きなように私の世界で暮らしてくれるだけで構いません。

特に魔王倒して世界を平和にしてくれとか、そういった役目等はありません」


 まあ、そりゃそうじゃな。こんな年寄りの爺婆に魔王を倒せなんて言わんよな。

 それならもっと若い者が選ばれるはずじゃからな。

 なら何で儂らが行く必要があるのか気になるの?


「何で異世界の神様の世界に行く必要があるじゃ?」


「気になりますよね。まず地球のことから話すと地球は魔法が使えないのに人間や動植物などは魔力を持ち、大気も魔素が豊富にあるのです。

魔力は魔法を使うことで消費され、また自身の内包限界を超えた分の魔力は大気に自然と放出され、大気に魔力が満ちるのです。

地球では、魔法が使えないので魔力が消費されることなく、内包できる魔力の量が少ないので、どんどん放出されるばかりでこのままでは溢れかえっている大量の魔力で地球は消滅してしまいます」


 全く消費されず、どんどん大気に放出されるばかりじゃから地球が危険な状態なんじゃな。


「地球で起きておる温暖化などの異常気象、地震などの自然災害が頻発しておるのも放出され魔素が大気に溢れかえっておる所為なのかの?」


「その通りです。今すぐにってわけではないですがどんどん影響が出てきています。

そして私の世界に来て欲しい理由は、私の世界では内包量は種族だったり血統だったりで違ったりしますけど誰もが魔力を持ち魔法を使えます。

しかし、誰でも使えるので消費が多く、大気の魔素が少なくなってしまうのです。

なので地球とは逆の理由で世界の消滅の可能性があるのですよ」


 なるほどのぉ。そういう理由じゃったか。

 ある意味、儂らが行くことで異世界を救えるってことじゃな。

 そして儂は、確認の意味で婆さんを見た。


「お爺さん行きたいんですよね。私は構いませんよ。

異世界興味ありますし、異世界転生になるか異世界転移になるかわかりませんか夢が叶いますからね」ウッフフ


 婆さんは孫が読んでいた異世界ファンタジーモノのラノベを読んでからハマってしまったからな。

 自分が異世界に行く事になり嬉しくってたまらないようじゃ。


「婆さんも嬉しそうじゃし、行くのは構わないのじゃが儂らが選ばれたのか聞いてもいいの?」


「それはあなた方が、地球で最も魔力を持っているからです。

たくさんの魔力を持っている者は、老化も遅く、寿命も長くなるのです。

だからお二人は実年齢よりだいぶ若い容姿ですし、地球に居たとしたらに細胞寿命が100〜120歳くらいの地球に適した肉体であっても300歳くらいまで生きられたでしょうね。

言いにくいのですが他の地球の者の100倍くらいの魔力があり、地球に適した肉体なので内包できる量が少なかったので、近年の地球の異変はお2人の魔力の影響が多いのです」


 なんじゃと!!近年の異常気象が儂らの魔力の多さが原因なのか。


 地球で300歳まで生きられるようだし、儂らが生きている間は地球に悪影響を与え続け地球消滅を早めることに繋がりそうじゃな。


「地球への影響が大きいなら異世界に行くべきじゃな。

儂らの子供や孫、子孫は大丈夫なのじゃろうか?」


「二人は突然変異で膨大な魔力を持っています。

子孫に関しては隔世遺伝の可能性もあるのでわかりませんが、お子供さんやお孫さんにはそれほど遺伝されておらず一般的な地球人より若干多いくらいですので大きな問題ではないですので安心してください」


 異世界へ行くのは確定じゃな。

 儂らは突然変異じゃったのか。若干多いくらいなら影響ないなら問題ないってことじゃな。


 いきなり居なくなったら心配するかもしれんから伝言頼めるか聞いてみるかの。

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