第8話 ハーレムラブコメやるなら、もう1人位欲しいわよねぇ……。


 その後社長は新しく『Weed Soul』(ウィードソウル)と言う新事務所を立ち上げた。


 そこには俺や沙樹を含め、社長を慕って元大塚事務所のスタッフや声優達が集まった。


 俺もちょこちょこ名前のある役を貰えて、『新しい声』を試していた。


 『新しい声』は、周りからも評判が良く、『あの声』に代わる俺の代名詞になりそうな予感がする。


 まだ完全に自分のモノになるには時間がかかるが、相変わらず麻里と一緒に深夜のコンビニで練習を続けている。


 そして麻里が言っていた来年公開の映画『戦国戦隊武将ファイブ』のオーディションに備え作戦を練っていた。


 「やっぱりスーツアクターさんの動きを生で見て、イメージを作った方がいいと思うのよね」


 相変わらず機材やパソコンでイートインスペースを占領して、麻里は腕を組み人差し指を顎に当てそう言った。


 スーツアクターとは、ざっくり言うと、特撮ヒーローや悪役の『中の人』だ。

 着ぐるみを着込んでの演技やアクションをする大変な仕事だ。


 麻里はビール片手にパソコンをいじりながら俺を呼んだ。


 「ねぇバネ太、ここ行こ!」


 パソコンの画面を俺に見せて、

 「JASAC(ジャパンアクションスーツアクターズクラブ)の練習風景、社長に頼んで見に行こう!」


 「おっ、いいねぇ! 俺、昔憧れてたんだ、中の人に」


 俺は変身ポーズを決めて、


 「いくぞっ、『変身っ!』なんてねー!」

 「あぁっ、しゅきっ♡」←ワンセット



 二人でキャッキャしながらJASACの動画を見ていたら入り口のドアが開いた。


 「あーっ、二人イチャイチャしてっ! 麻里ちゃん『協定』っ! 忘れてないわよねー?」


 沙樹がプンスカしながらやって来た。

 ん、? その後ろには……、


 「あ〜っ、『亮太』せんぱ〜い♡ お久しぶりですぅ♪」


 滝野川 天(たきのがわ そら)


 『てんちゃん』の愛称で、抜群のルックスと歌唱力で若手人気ナンバーワンのアイドル声優だ。


 今年は全国ツアーや何とドラマにも出演して、今ノリにノっている。


 おまけに天使の様なロリ声で、数々の幼女役を演じている。


 そして何故か俺の事を唯一下の名前で呼ぶ可愛い後輩だ。


 「バネ太がここのコンビニで働いてるって言ったら、連れてけってうるさいのよ、もうっ!」


 沙樹がプリプリしながら言う隣で、ペロっと舌を出してウインクしてきた。←あざとい


 天は社長が小さい頃から目を掛けていた、いわば『秘蔵っ子』だったので、勿論新会社に所属している、俺にとっては妹の様な存在だ。


 「亮太せんぱいっ、『新しい声』聞きましたよっ! もぉ〜っ、何か優しくて、力強くて……『あぁ、亮太せんぱい』って感じがして、好きです♡」


 そう言って天は上目遣いで俺の腕に絡まり胸を押しつけてきた。


 「おっ、おいっそらっ、やめろって!」


 「ちょちょっ、ちょっとっ!! ピピーッ、協定違反〜っ!」


 麻里が真っ赤な顔で天を俺から引き剥がした。


 「なっ、? なに〜っ、この人? 私『協定』とか知らないんだけど〜?」


 麻里の凄い剣幕に天はビックリしていた。


 「今はバネ太が『天下』を取る為、スキャンダルは厳禁、ですっ! 滝野川さんも、私と沙樹さんと『協定』結んで下さいっ!」


 そう言って麻里は両方の人差し指を交差して『バツ』を作った。


 そしたら沙樹も、

 「バネ太は置いといて、今アナタに変な噂が立つのはマズいわ! さっ、天も『協定』結びなさいっ!」



 「もぉ〜っ、何なの『協定、協定』ってぇ〜?」


 二人に迫られ逃げ場を無くした天が、

 「亮太せんぱ〜い!」

 味方が居なくなり手を広げて俺に助けを求めてきた。


 すると麻里が俺の前に立ち塞がり、人差し指をピッと立てて、


 「バネ太が天下取るまでは、『抜けがけしない』協定よっ!」


 「もぉ、何それ〜っ!」


 「……じゃあ、二人の前ならいいわよね? 亮太せんぱ〜い♡」


 天は麻里を払い除けて俺に抱きついて来た。


 「そっ、そらっ! おいっっ!!」

 胸に顔を埋めてきた。


 「そっ、そうよね、ソレは『抜けがけ』じゃないわ、うんっ!」


 そう言って沙樹も後ろから抱きついて来た。

 前から後ろから抱きつかれて、身動きが出来ない。


 「もぉ〜っ、なによぉ〜っ! 私が抱きつくトコがない〜っっ!!」


 「三十秒で交代してよねっ!」

 

 麻里が時計を見ながら足をバタバタさせて言うと、天が、


 「私っ、『一分』千円出しますっ!」


 すかさず沙樹が、

 「じゃあ私は『三分』五千円よっ!」


 またまた天が、

 「それならオプションで『頭ナデナデ』『五分一万円』でっ!」


 そしたら沙樹が、

 「じゃ、じゃあ私はオプションで、きっ、キス……♡」


 「おっっ……、お前ら、いい加減にしろ〜っ!! 俺は誰のモノでもないからなぁ〜っ!」


 二人を強引に引き剥がしてレジに逃げ込んだ。


 「もぉ〜っ! せんぱ〜い♡」

 「ちょっとぉ、バネ太ぁ!」

 「あっっ、そっ、その声も、……しゅきっ♡」


 ……いつからハーレムラブコメになったんだ、コレ?



 第9話につ、づ、く♡



 ※※



 「……コレ、オマエが書きたかったから人数増やしただろ?」

 桜「だって、……読者好きでしょ? こーゆーありえないヤツ!」


 「うっっ……」


 桜「『イチャイチャ』したいんでしょ? どーせっ!」



 桜「……『イチャイチャ』しないの?」←『逃げ恥』でのガッキーさまのセリフ



 「ボヘェっ!!」

 「うわぁぁっっ……っっ!!」



 さて、皆様の熱いコメント、私にぶつけて来なさい! 受け止めてア・ゲ・ル♡←なんかあったのか?



 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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