第19話 もし、カウントダウンが始まったら

 でも一つ懸念がある。


「ただそんな大それた事、足がつくかも知れないんだよな」


『もちろんそこは注意をしなきゃならんだろうさ。そうだな例えば、まずは捨てアドを作って……』


 それから俺達すっかり話し込んでしまった。

 だがこれなら間違いなく、今までの恨みを晴らすことができる。


『――という感じだ。わかったか?』


「ああ、完璧だ。これで確実に連中は破滅だ。いやぁ、お前が味方で良かった。もし敵だったら俺は何もできずにボコボコにされていただろうな」


『俺の有能さが今更分かったのか? でも安心しろ、そんなことは起きないさ。俺はあの野郎が嫌いだし、何よりダチを傷つけた連中を放っておくのもきまりが悪い。お前と一緒にスカッとしたかったんだ。俺が味方で良かっただろう?』


「まったく、その通りだよ。これからもよろしく頼むぜ」


『ああ、任せておけよ』


 こうして俺達の復讐劇はとうとう幕を開ける。

 決行日は明日だ。



 ……スープが冷めちまった、電話の後に作るんだったな。


 ◇◇◇


 翌日。


 朝早くから家を出た俺は、木山の住むマンションの前を張り込んでいた。

 日が出てるって言ったってまだサラリーマンの一人も見かけないような時間帯だ。

 少し早かったかもしれない。


 実際、奴らがそこから出てきたのは張り込んでから一時間経った後だ。

 張り切りすぎたか? でもいつ出てくるかわかんない以上、念を入れてダメなことなんてないはずだ。


 奴らが出てくる瞬間を写真に収める。こんな朝っぱらから男と女がマンションから出てきたんだ。これで単なる知り合いなんて通じるはずがない。

 証拠は多く集めて困ることなんてない。実際に使うかは分からないが、それは必要税だ。


 連中がこちらに向かって歩いてくるのを確認しながら、写真を撮っていく。

 奴らは俺の存在に気づいていないようだ。隠し撮りなんだから当たり前なんだけど。

 片方の腕でボイスレコーダーを起動し、気づかれないように物陰を移動しながら録音していく。

 芽亜里が木山の腕に自分の腕を絡ませながら、馬鹿みたいな声で話しかけている。


「ねーえ、そー君? 昨日はとっても楽しかったね! やっと私達も恋人同士になれたんだって実感したよ!」


「僕もだよ。まさかこんな関係になれるとは思わなかったけど、本当に幸せだ。やっぱり君は最高の彼女だ。僕の運命の人さ」


「もう! もっと言ってよぉ~」


 うわぁ……こりゃひでぇ。

 さっきから二人の会話をずっと録ってるが、全部が全部、聞くに耐えないものばかりだ。

 だが、今はそれが好都合だ。そう思って我慢せねば。


 この会話だけでも逃げられない証拠にはなるだろう、少なくとも二人をカップルだと思わない人間はいない。例え木山が否定しても不可能だ。


 二人の馬鹿みたいな会話の録音を切り上げると、遠回りで学校へと向かう。

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