ナルシストな国王は、王妃の顔を愛してる
茉莉花
第1話 王妃が倒れた
主要人らを集めた議会の最中、国王ジャレッドの元に一報が届けられた。
「陛下、王妃殿下がお倒れになりまして、今妃殿下の私室にお連れしました」
「王妃が倒れた?」
「はい。そして花瓶を巻き込む形でお倒れになりましたので、額に怪我を負われました」
「額に怪我だと!?」
「はい。現在医師を呼び治療中でございますって!陛下どちらへ!?」
話を聞き終える前にガタンと椅子を倒す勢いで立ち上がると、ジャレッドは議会を後にした。
「王妃の元へ行く!!」
◇◇◇
王妃であるカメリアは私室のベッドに腰掛け医師の治療を受けていた。
「妃殿下、傷の止血は終わりましたので、どうぞ横になられてください」
「ありがとう、ジャスマン。ですがこのままではシーツが汚れてしまいますわ。着替えてからにしたいと思いますの」
額からの出血は顔面から胸元まで滴り流れ落ちる程だった。
「それではゆったりとした衣装にお召し替えください。そして、こちらの怪我の原因はお倒れになられたからとのことですので、一度安静にしていただきたいのです。お顔回りを拭う程度ですぐにお休みください。そこそこ出血がありましたので倒れた原因は少しお休みになられた後に診察したいのですが…」
「わかりました」
そこにジャレッドが駆け込んできた。
「王妃!」
ジャレッドの目に飛び込んできたのは、額を覆うように頭に包帯を巻き、胸元を血で染めたカメリアの姿だった。
「ああぁぁ、なんてことだ…。おい、医師!傷は大丈夫なんだろうな!?傷はちゃんと残らず消えるんだろうな!?」
医師であるジャスマンの肩をガシッと掴むと、物凄い剣幕で訴えた。
「ただ今止血を終えたところです。細かい傷は消えますでしょうが、額の傷の長さや深さが思いの外大きいのです。その為出血量も多くございました。申し訳ございませんが今の時点では明言出来かねます」
それを聞いたジャレッドは膝から崩れ落ち嘆いている。
「なんてことだ…。王妃の美しい顔に傷だなんて…。王妃の顔がぁ」
ジャレッドはカメリアのことを入室した瞬間以来見ようとしていない。それどころか、気にしているのは額の傷のみで、倒れたカメリアの体調や倒れた原因、さらには倒れた場所も巻き込んだ花瓶や花にも興味はないようだった。そんなジャレッドの様子をカメリアをはじめとする使用人らは冷めた目で見つめていた。
「陛下、ご心配おかけして申し訳ございません。そんなに嘆かれるほど私のことを好いてくださっているのですか?」
「もちろんだとも!王妃のことは大好きだ!」
「私のどんなところがお好きなのです?」
「そんなの、君の美しい顔に決まってるじゃないか!王妃の顔は神が与えてくれた芸術品だ」
その回答に、その場に居合わせた者たちは凍り付いた。
「そうですか。では、もう1つ。私を癒すべく私の名前を呼んでくださいませんか?」
「名前かい?…それは……、えーっと、たしかフルリール王国の王女殿下だったから……、えーっと、その…」
その回答に、その場に居合わせた者たちは今度は青ざめた。
「ええ。それはあってますとも。ですがもう結構です。私は着替えて休むところでしたので、部屋からお出になってくださいませんか?」
カメリアは顔を逸らし退室を促した。
「あ、あの、王妃…」
ジャレッドは側近に引きずられるように部屋から出ていった。
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