第7話 おひとりで編集

 なんと、星梨セイナおばさんはオレに編集作業をさせるという。


「とんでもねえ! オレにそんな重要な役割をやらせていいのかよ?」


「今後、必要になってくる技術よ。当たり前じゃない」


 どうも、オレに仕事のやり方を教えることも、同居の条件に含まれているらしい。働き口ができるのはいいことだが、いきなりヘビーすぎん?


「大丈夫よ。変なのは映っていないわ。あなたなりに『映え』そうな映像にすればいいのよ」


 今回は「サムネイル」、つまり表紙は星梨おばさんが作ってくれるという。扉絵の作り方は、夢希ムギに教えていくらしい。


「いいのか、夢希はそれで」


「興味深い。学校の勉強しかしてこなかったから、動画配信ってそうやるのか知れて、面白い」


 まったく、へこたれていない。


「そうだ星梨さん。快斗カイトの動画は、わたしが編集していいですか?」


 夢希は、オレの動画を編集すると言い出す。


「いいわよ。お互いの練習になるし。でもいいの? 仕事が増えるわよ」


「色々と、失敗しておきたいんです。覚えることが増えるし、今のうちに不安要素を潰しておきたいんで」


「いい心がけね。いいわよ」


 三人でリビングに集まり、編集作業を開始した。


 こうしていると、星梨おばさんに勉強を教わっているみたいに思えてくる。実際は、そんなことはこれまでの人生で一切なかったが。


 階段を昇っていく夢希を、星梨おばさんが追いかけているシーンだ。


「ローアングルとか、やめなー」


「ショートパンツだからいいのよ」


 とはいえ、気になるぞ。


 業者さんが映り込む場面とかも、極力カットする。オレたちの動画に関係ないからな。トラブルがあったら大変だ。


 とにかく夢希は、勉強道具を机にしまっていく。


 すごいテキパキさんだ。オレなんてブチ込んでるだけだぜ。


「つーか、こんな動画が映えるのか?」


「こういった動画のほうが、映えるわよ。人間性が出るから」


 ヘタに作り込んだ動画より、日常を覗いているような動画のほうが、見てもらえるという。本当だろうか? 


 かくいう星梨おばさんも、まだ手探りらしい。


「底辺かもしれんぞ」


「いいのよ、最初は底辺でも。編集の勉強がメインだし」


 色々できていったほうが、なにかと便利だという。

 パソコンにも、ある程度は詳しくなったほうがいいのかもな。


「地味だけど、夢希の動画ってなんかいいよな」


 手際がよく、見てみて惚れ惚れしてくる。


「性格が出てるわよね。見る相手のこともちゃんと考えているのよね。パパパってできるところも、あえてゆっくりと作業しているの。教えてもいないのに」


 夢希の丁寧さは、編集してわかった。どこをカットすればいいのか、迷う。


 結局、業者さんが映り込む場面だけ削って、夢希の手作業をひたすら映す。


「おばさん、ちょっといいか?」


「いいわよ。なんでも聞いてちょうだい」


「バストアップが多くね?」


 オレたちの動画は、顔出し配信ではない。しかし、その分だけ逆に胸が強調されている。


 よく見ると、夢希もパッツパツのTシャツを着ていた。オレンジ色なので透けてはいないが、ブラのラインがくっきり出てしまっている。


 それにしても、夢希はデカいな。口に出してはいけないが。


 編集をしながら、オレは何度もため息をつく。


「これいいのか?」


「いいのよ。減るもんじゃないし」


「ダメだろ」


 ヘタするとエロ動画認定されて、アカウント削除されるぞ。


「あくまでも机の上の整理をしているだけなんだから、ノーカウントよ」


「いいのか、そんなので」


「大丈夫よ。YouTubeくんはきまぐれだけど、肌色認定されない限りはセーフなの」


 どうだろうな。不安で仕方がないが。


「夢希は平気か? ムリをしてないか?」


「全然、余裕。見ている人は、快斗くらいだから」


「とはいっても、公開されたら全世界の人に見られるぞ。いいのか?」


「多分、わたしには興味ないよ」


 なんだか夢希は、自分に自信がないな。


「夢希のよさは、オレはわかっているからな。困ったら、アーカイブ消すから」


「……うんっ」


 突然、夢希が顔を赤らめる。手でホホを扇ぎだした。


「お風呂いただきます」


 編集を終わらせて、夢希はバスルームへ直行する。


「青春よねえ」


 そうなのか?

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