ゲームの《裏技》マスター、裏技をフル暗記したゲームの世界に転生したので裏技使って無双する

鬼来 菊

《裏技》マスター、転生する

裏技マスター

「ふぅー」


 VRを外して一息吐き、パソコンの電源を付けてカタカタとキーボードをいじる。


 そして匿名掲示板を開き、ゲームを始める前に立てておいたスレを探す。


『インフィニア・ワールド バグ紹介スレ』


「あった」


 このスレをクリックし、半日前に出した裏技バグの反応を見てみる。


「結構反響あるな……」


 パソコンの画面を見ながら、背もたれに寄りかかる。


 インフィニア・ワールド


 通称インワド。


 とんでもなく広大なフィールドに、超高性能なAI。


 さらには完全オリジナル職業ジョブなんかも作れたりする自由度が超高めのVRMMORPGだ。


 このゲームに、俺は今ドハマリしている。


「うし……」


 両腕を伸ばし、高速で文字を打ち込む。


 俺が今何をしているのかというと、スレタイにもある通りインワドの裏技バグの紹介だ。


 まあ、その紹介している裏技の殆どが俺が見つけたやつだが。


 こんな事をしていたらいつの間にか、『裏技バグマスター』なんていう風に呼ばれる様になってしまった……。


 めちゃ恥ずかしい。


 文字を打ち終わり、ちょっと確認してからエンターキーを押し込む。


「さてさて反応はぁーっと」


 左上のリフレッシュボタンを連打して反応を見る。


 因みに、今書いた裏技はどんなアイテムもダイヤモンドにする事が出来るようになる裏技だ。


『おい、裏技マスターがまた裏技を見つけて来たぞ!』


 おっ、早速反応アリだ。


 リフレッシュボタンをさらに押す。


『ヤバすんぎ』


『前回紹介された裏技っていつだっけ?』


『確か半日前』


『早すぎだろ』


『マジで何で裏技マスター凍結されないんだ?』


 意外と来るなー。


『それじゃ、俺はまた行ってくる』


 そう打ち込み、再度VRを付けて寝転がる。


『ピロン! メールが届いています!』


「……はぁ?」


 メール? 俺に?


 どういう事だ?


 先程掲示板にて、何故俺のアカウントが凍結されないのか。という質問があったが、それは俺が裏技で俺自身のアカウントのIDデータを変更し続けているからだ。


 そう、つまり、この俺にメールを届ける事は


「一体どうやって……取りえず見てみるか」


 視界の端で揺れるメールマークをポチッと押す。


『おめでとうございます! 貴方はインニィニア・ワールドの最新バージョンのテストプレイヤーに選ばれました! 最新のバージョンをプレイしますか?』


 そう書かれたメールが表示されると、下の方に【はい】と【いいえ】という二つの選択肢が出て来た。


「……何だこれ」


 こんなの聞いた事が無い。


 はぁ。どうせ悪質なイタズラだろう。


 届いた理由も、適当にこのメールを送るアカウントのIDを入れていたらたまたま俺に来てしまったって感じだろう。


「ふっ、今時こんな事をやる奴もいるんだなぁ」


 それもインワドで。


「まあ、【はい】を押してやるかぁ」


 俺が【はい】を押したのにはちゃんと理由がある。


 仮にこのメールにウイルスが入っていてデータが壊れたとしても、別のVRにバックアップを取ってあるのだ。


 しかもちゃんと裏技でログアウトする瞬間までを別のVRにバックアップさせる様にした。


 なのでこのVRのデータが消えても、痛くもかゆくもないのである。


「うん……? 何か……眠く……」


 俺はVR内でバタッと倒れる。


「う……クソが……一体……何が……」


 まぶたの重みが鉛の様になりながらもなんとか俺は目を開け続けていたが……流石に耐えられず、目を瞑ってしまった。





 因みにだが、先程のメールには下の方に小さくこう書かれていた。


『最新バージョンの内容


・新ステージの追加


・新NPCの追加


・既存のステージの一部変更


・インフィニア・ワールドの、


 注意:最新のバージョンを心から楽しんで頂きたいので、このメールの記憶は消去させて頂きます。ご了承下さい』

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