第94話 ダンジョン39階
ユウが戦線から離脱したことで苦戦していたようだが、前線に戻れば3対3の戦いになりこちらが優勢になっていく。
さらに俺とガレフがデビルヘッジホッグのように後方射撃することでウッドゴーレムの態勢を崩し、戦闘を有利に進めていく――。
勝敗は決したようだ。
しかし、この戦闘でポーション3本消費してしまった。この短時間で金貨3枚の費用が発生したという事だ。赤字にはならないが、この戦闘での利益の半分以上を失ってしまった。
デビルヘッジホッグからは1本だけ色の違うトゲを採取して換金できる。1本銀貨7枚と絶妙な値段だ。ポーションを使いすぎると赤字になることもあるだろう。
次からはノーダメージで勝たなければならない。
戦闘が完全に終わったのでモモちゃんに刺さった針を抜いてあげる。こんなに針が刺さっているのに麻痺しない理由はなんだろうか?
「ご主人様ありがとうございます。なにかチクチクピリピリすると思っていたら、これだったんですね」
モモちゃんは針を興味深げに見ているが、俺はそんなモモちゃんを見て、なぜ麻痺しないか解ってしまった。
明らかに痩せている。
これは再生スキルの効果だったようだ。これでモモちゃんは毒に続いて麻痺も自己回復する事ができる、という事が解った。ポーション代が浮いて助かります。
「モモちゃんにポーションは必要なさそうだから代わりに、おやつをあげよう」
俺はダンジョン内でモモちゃんが痩せてしまった時の為に、開発しておいたハイカロリーポーション。
マヨポーションをモモちゃんに手渡した。
むろん中身はマヨネーズである。マヨネーズはなんて便利なのだろうか?
マヨネーズは異世界を救う。これは間違いない真実だろう。
「わぁー、ありがとうございます」
モモちゃんはマヨネーズをグビグビ飲んでご機嫌だ。これはロレッタに言って、また作っておいて貰わなくてはならない。
モモちゃんにはお手製マヨポーションでコストを抑える事ができるが、他のポーションは高すぎる。回復手段に関しては、なにか考えなければならない……。
さて激戦であったが、この後はどうするか?
ユウはゴーレムに殴られて吹っ飛ばされていたが、回復ポーションのおかげか今は無傷なようだ。陛下もダメージなし。モモちゃんも体型を元に戻し、お肌もツヤツヤだ。
問題ないようなので探索を続ける――。
ミニデビルヘッジホッグも最初から、その存在を知っていれば問題なかったように思う。こちらの前衛と近接する前に弓で倒しておくことができたからだ。デビルヘッジホッグから弓で倒していき、十分近づいてきてからミニを倒す。
こう言った情報は本来ならギルドの図書室のレポートに書いてあってもいいと思うのだが、どうもあそこのレポートは不親切だ。間違いや嘘は書いてないが、必要最低限の情報しか記載されていない。ミニもいるので要注意! くらいの書き込みがあっても良いと思うのだが…………。
ただ、探索者も商売でやっている者が大半だろうから、商売敵に余計な情報を与えたくない。という者がいても不思議ではないのだろう。
これからは事前の情報に頼りすぎる事なく、自分の目でしっかりと現状を確かめる事が重要であるという事が解った。
40階まで進んだので、今日はここまでにしてゲートから帰宅する事にする――。
今日もたっぷりと稼げたが、デビルヘッジホッグが邪魔で狩りの効率は前日と比べると落ちてしまったと思う。
それでも39階で緑竜の手袋を手にいれたのは幸運であった。
効果は『命中強化 中』と俺にピッタリな手袋なのでそのまま装備しておく。単体で装備するだけでも強いが、緑竜装備は早くコンプリートして、セット効果を確かめるのが楽しみだ。
ギルドに寄って換金。孤児院にもどったらロレッタに金貨を渡して、新しいベッドの手配や、門や窓の修繕を業者に依頼するように頼む。
最初はロレッタのような幼女に仕事を頼むのは気が引けていたが、今まで孤児院を切り盛りしていただけあって事務的な仕事はお手の物であった。この孤児院は今はまだロレッタが帳簿も付けているので、金勘定も今は任せるしかないだろう。
そういえばガレフの娘はどうなったのだろうか? 鉱山からそろそろこっちに移動してきているのでは? 一回、奴隷商に行ってみる必要がある。
しかし、明日は40階ボス戦となる予定だ。
温泉に入って、昨日よりも少し冷えたエールを飲み、夕飯を食べて、自分の部屋で落ち着いた所で、ボス戦前恒例のステータスチェックをおこなう。
みんなどれくらい成長しただろうか?
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